従業員の不適切投稿から考察するSNSリスクと企業の備え
- 公開日:2024.06.25 最終更新日:2024.06.26
従業員がSNSなどに不適切な投稿を行って炎上した場合、雇用先の企業にも悪影響が及ぶ可能性があります。誤ったSNS利用を防ぎ、リスクを最小化するための取り組みと、万一の事態が発生した際に求められる対応について考察します。
目次
ネットで横行する「歪んだ正義感」
ネットの世界では、自己主張の実現のために他人を傷つける言動が後を絶ちません。
例えば、コロナ禍においてはマスクをつけていない人やワクチンを接種していない人などを激しく非難する「自粛警察」が活発化しました。
コロナ禍が収束すると、今度は「私人逮捕系」「世直し系」と呼ばれるユーチューバーが出現。動画撮影を目的として、独善的な考えで他人に暴力をふるった人物が逮捕されるケースも出ています。
これらに共通するのは「歪んだ正義感」です。SNS上などでは特定の人物や団体への批判が殺到する炎上がしばしば起こりますが、炎上に加担する人が書き込む動機の多くは「正義感」でしょう。
しかし、感情の高ぶりに任せて正義を振りかざす行為は、自分の価値観を押し付けることにもなりかねません。そうした言動が度を越せば、自らが糾弾されてしまうこともあり得ます。
バスや電車で無断撮影した他人を勝手に晒し、行動を批判
2023年11月に神奈川県内の市立病院で発生した事象も、「歪んだ正義感」を想起させるものでした。
発端となったのは、病院の清掃関係者と思われる人物が「院内のトイレの使い方に対する不満」をXに投稿したことです。
この人物は院内のトイレや廊下などの写真を無断撮影し、「清掃中に入る奴が、偉いんだ、天皇陛下だね」などとコメントしました。
他にも、バスや電車の優先席に座っている病院職員を無断撮影。「やはり、〇〇病院の職員は、特別なんですね、優先席に平気で、すわってました」「最低病院です」などと書き込んでいました。
これらの投稿は、Ⅹユーザーから「優先席は専用席ではないので問題ない」「盗撮する方が問題」「乗客を晒すのはマナー違反より悪質な行為」といった批判が殺到して炎上。病院や市にも通報が相次ぎ、問題が発覚しました。
病院は投稿内容から「院内の清掃を委託している会社のスタッフ」である可能性が高いと判断し、清掃会社に投稿の削除などを要求。病院の担当者はメディアの取材に対し、「無断で車内の乗客を撮影しているものもあり、刑事的な責任が問われることにもなりかねないと注意を伝えた」と話しています。
雇用主の企業にも悪影響が及ぶ可能性
実際に、SNS上で他人を誹謗中傷すれば、名誉毀損で法律に問われかねません。
また、他者を無断で撮影してSNSに投稿する行為は、肖像権の侵害に当たる可能性があります。今回の事例のように悪質な投稿ではなかったとしても、SNS上の写真に第三者の顏が写り込んでいれば肖像権の侵害とみなされる恐れがあるため注意が必要です。
今回の事例で盗撮の被害に遭った人から訴えられた場合、投稿者は民事上で損害賠償責任を負うリスクがあります。さらに、刑事上では名誉毀損罪や侮辱罪に問われるかもしれません。
もちろん、従業員がこうした不適切投稿を行って炎上した場合は、雇用主の企業にも悪影響が及ぶ可能性があります。
ブランドイメージと売り上げの低下はもちろん、クレーム対応の増加や取引先との取引停止も発生しかねないことは想像に難くないでしょう。場合によっては株価の暴落や、民法上の使用者責任を問われることになるかもしれません。
企業として理想的な体制構築のポイントは?
こうした事態を防ぐため、企業としては「従業員に対する啓発活動」に力を入れる必要があります。
SNSに投稿する際は「不適切な行動・悪ふざけ」「差別」「秘匿すべき情報の流布」「著作権の侵害」など「誰かにとって不快になる投稿ではないか?」という観点で、投稿前に今一度振り返ることが重要です。
従業員にSNSリスクをしっかりと理解させるためには、「自分ごと」として捉えてもらわなければなりません。そのため、「会社に迷惑がかかる」という伝え方より「あなたの人生に損害・影響が出る」という伝え方が有効です。
企業としては「リスクを早期に発見し、被害を最小限に抑える体制づくり」も欠かせません。従業員に対しては、自らの不適切な発言が原因で炎上した場合は勝手に投稿を削除せず、まずは上司に相談するよう周知しておくべきです。
さらに、万が一炎上した際は、どういう経路で誰が対応に当たるかを事前に決めておかなければなりません。
また、同業他社で炎上事案が発生した際は、「原因」「再発防止策」「(被害者がいた場合は)被害者への補償内容」を把握し、自社で同様のトラブルが起こらないよう事前に対策を取っておくことも必要です。
SNSガイドラインなどの策定支援や研修を用意
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