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TikTokの事例に学ぶステマの問題点と企業の対応策

公開日:2022.03.31 最終更新日:2023.06.21

「参考になる」と感じた口コミが「やらせ」「サクラ」だったとしたら、消費者はどう感じるでしょうか?誰もが答えを想像できるはずなのに、指摘を受ける企業が後を絶たないのがステルスマーケティングです。背景にあるのは広告主としての意識の低さですが、炎上に発展した場合のダメージを侮ってはいけません。不当な広告・宣伝活動の問題点と、企業が取るべき対応策をご紹介します。

ステマの本質は「消費者をだます」こと

消費者に広告であることを隠し、口コミなどを装って商品・サービスを宣伝するステルスマーケティング(ステマ)。商品・サービスの性能や品質を実際より優良に見せかけた場合などは、景品表示法違反に当たる可能性があります。

もちろん、そのような表示はしていなかったとしても、広告と気付かれないようにしてマーケットの興味・関心を掻き立てている以上、「消費者をだます」という本質に変わりはありません。

WOM(口コミ)マーケティング業界の健全な発展を目指す「WOMマーケティング協議会」が2018年に実施した調査によると、企業の依頼を受けたインフルエンサーが商品などを紹介する際、ステマを隠ぺいしたことが判明すれば、51.9%の消費者は「不快に感じる」と回答しました。 「わざとらしさを感じる」(23.7%)を合わせると、ステマには85.6%もの人がネガティブな感情を抱いたということが分かります。

一方、インフルエンサーが企業からの依頼を受けて発信していることを明らかにした場合、「とても良いことだと感じる」と答えた人は29.8%、「良い情報を教えてくれてありがたい」も24.1%に上り、消費者の反応は逆転しました。

つまり、広告・宣伝活動において本当に有益なステマなど、あり得ないのです。

「ステマ」と「広告」の区別が曖昧な企業が多い

それでもなお、ステマを疑われる事例が後を絶たない背景には、インフルエンサーマーケティングに対する広告主の理解・関心が不足しているという実態があります。

先に記した調査でも、WOMマーケティング協議会が策定した口コミマーケティングに関するガイドラインの認知度は、インフルエンサーマーケティングを実施している企業でさえ27%にとどまりました。 このように、正当なマーケティング活動に対する意識の低さが、ステマと広告を区別する「ボーダーライン」を曖昧にしてしまっていると言えます。

新たな広告媒体としても注目されているSNSプラットフォームのTikTokが引き起こしたステマ騒動も、まさに「ボーダーライン」の曖昧さを浮き彫りにした事例の1つです。

インフルエンサーに報酬、一般投稿を装い動画を拡散

その事例とは、TikTokを運営する日本法人A社の行為でした。

A社は2019年7月から2021年12月までの約2年半、延べ20人のTwitterインフルエンサーに報酬を支払い、特定のTikTok動画をTwitter上で拡散させていました。

ところが、Twitterの転載動画には「#PR」などの広告表記はされていなかったのです。 多くのTwitterユーザーが広告だとは思わずに視聴・閲覧していたことは想像に難くないため、「一般の投稿を装ったステマに該当するのでは?」という批判を招いたのは当然の成り行きだったと言えるでしょう。

ステマ疑惑は主要メディアでも報じられたことから、A社は自社の公式ホームページに「お詫び」を掲載しました。

しかし、そこには「TikTok内のコンテンツをより多くの皆様に知っていただくための活動であったことから、『広告』表記は不要との認識にて実施されていた」という弁明も記されていたのです。

さて、「TikTok内のコンテンツをより多くの皆様に知っていただくための活動」とは、一体何でしょうか? 常識的に考えると、それは広告・宣伝活動に他なりません。インフルエンサーに報酬を支払っていたのであれば、なおさらです。

Twitter上でもA社を擁護する論調は少なく、インフルエンサー側の問題点や景品表示法違反の可能性を指摘する声や、他の動画などでもステマが横行していることを疑う投稿が数多く確認されました。

その後、騒動は徐々に収束へと向かいましたが、A社が本当にステマを意図していなかったかどうかは曖昧なままです。

もっとも、Twitter上の転載動画を広告だとは思わずに視聴・閲覧したからといって、明らかなデメリットを被ったという人はいないかもしれません。

しかし、ステマのデメリットは、本当に取るに足らないものなのでしょうか?

すべてのステークホルダーに悪影響

ステマは、マーケティング活動に関わるすべてのステークホルダーに悪影響を及ぼします。

広告主は企業ブランドのイメージダウンのみならず、ビジネスの継続に欠かせない社会的信用を失うことになるはずです。

ステマのコンテンツに触れた利用者は正しい情報を知る権利を侵害されるだけでなく、景品表示法に反する不当表示に気付かないまま商品・サービスを購入させられる危険にも晒されます。

さらに、そのような情報を発信したインフルエンサーも社会的信用を失います。その結果、フォロワーが減れば、他の活動にも支障が出ることは避けられないでしょう。 近年はステマに関わったインフルエンサーを特定する動きも活発化しているため、個人に対する誹謗中傷や風評被害を受ける可能性があります。

関係性の明示と情報収集がカギ

ステマを回避するためには、広告主とインフルエンサーの関係性を明示しなければなりません。

関係性があると判断される条件は、以下の3点です。

  • 1. ネット上で話題にすることが目的
  • 2. 金銭・物品・サービスなどの提供がある
  • 3. 提供内容が「重要」である
  • また、関係性を明示する際は、次の2点を明記しましょう。

    • 1. 誰に協力しているのか(主体)
    • 2. どんな恩恵を受けているのか(便益)
    • 「主体」と「便益」はどちらか一方だけではなく、「#〇〇株式会社」「#PR」など両方を明記する必要があります。

      さらに、過去の炎上事例の情報を収集し、どんな施策が偽装行為として批判されるのかを知っておくのも有効です。 SNS上を駆け巡る論調は変動しやすいため、常に最新の傾向を把握しておかなければなりません。

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      「ステマの認識はなかった」では済まされない

      A社のようにステマ行為が批判された企業の多くは、消費者への謝罪を余儀なくされるのが実情です。

      その一方で、「ステマの認識はなかった」と弁明するケースも目立ちますが、それが真実だったとしても、消費者がすんなり納得すると思うでしょうか?

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