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「マタハラ」内部告発で「炎上」!企業を襲うレピュテーションリスクとは?

公開日:2020.04.17 最終更新日:2023.06.21

企業経営には、さまざまなリスクが付き物です。
リスクの種類は多岐に渡りますが、企業価値そのものに深刻なダメージを及ぼしかねないものの1つがレピュテーションリスクです。
レピュテーションとは「評判」「風評」といった意味。レピュテーションリスクとは文字通り、「企業の評判が失墜する危険」を指します。

会社ぐるみや従業員による不正・不祥事の発覚、製品やサービスに対する消費者の不満、職場の人間関係や労働環境などをめぐっての内部告発…。レピュテーションリスクの種は、あちこちに潜んでいます。
もちろん、企業にとって評判が大切であるというのは、昔も今も変わりません。
しかし、SNSなどが普及した近年、評判に関わる情報が拡散される範囲やスピードは格段に増しています。SNSや口コミサイトで悪評が立ってしまい、たちまち「炎上」に巻き込まれる企業は後を絶ちません。

場合によっては、企業の存続さえ脅かしかねないレピュテーションリスク。2010年代後半からこの言葉がよく使われるようになった背景には、リスクマネジメントに対する企業意識の高まりも関係していると言えます。
これから紹介するのは、内部告発をきっかけにレピュテーションリスクに晒された企業の事例です。予期せぬ事態にどう備え、対処するべきか、詳しく考察してみましょう。

「妊娠を報告したら、社長から減給を提案された」と告発ツイート

女性キャリアコンサルタント(プロデューサー)として活動するS氏。
パラレルワーカーとして複数の職場を掛け持ちする傍ら、就職活動や大企業という組織の中で覚えた違和感をTwitter上で発信、働く女性らの共感を集めていました。

そんなS氏の肩書の1つが、データコンサルティング事業などを手掛けるD社の人事部長。彼女が自らの職場に関するツイートを投稿したのは、2020年1月29日のことでした。
「もう言います」。覚悟を決めたかのような言葉で切り出されたツイートには「会社に妊娠を報告したら、社長から減給と法に触れない範囲での対処を提案されました」と書かれていました。
「泣きたい」という言葉で締めくくられた投稿は、まさに、社長のマタニティハラスメント(マタハラ)を告発する内容そのものでした。

Twitter投稿数推移

※自社調べ

会社側は発言内容を否定 「炎上」の矛先は告発者へ

「ブラック企業」での出来事かと思わせるようなS氏のツイートは徐々に拡散され、「プチ炎上」状態に発展します。
リプライを始めとするネット上の反応はD社を批判し、S氏を擁護する内容が多数を占めました。

しかし、この後、事態は思わぬ方向に進み始めます。
1月31日、D社は公式サイトに「当社従業員のツイッターでの発信内容に関するお知らせ」を掲載しました。
そこには「当社代表者がマタハラに該当する発言を行った事実はありません」「当社従業員によるツイートの内容は不正確で、殊更に誤解を与えるような表現がなされており、当社としては、大変遺憾に受け止めております」などと、S氏の主張に対する全面的な反論が並んでいました。

妊娠を報告したS氏と会社側のやり取りも明らかにされた「お知らせ」。まとめサイトなどにも両者の対立が取り上げられ、ネットユーザーは即座に反応します。
言い分を真っ向から否定される形となったS氏のツイートは一気に拡散されて「大炎上」。SNS上のコメントの多くはD社を擁護する論調に転じ、S氏をバッシングする投稿が増えることとなりました。

両者が謝罪と和解を公表し鎮火

事態が収束に向かったのは、それから数日後のことでした。
2月4日、S氏は「マタハラ」に関する投稿をすべて削除した上で、「お騒がせし申し訳ございませんでした」とツイート。「訴え方の一つとしてSNSを選んだことについては大変反省しております」と謝罪し、会社側と和解したことも明らかにしました。

一方のD社も翌2月5日、2回目の「お知らせ」を公式サイトに掲載。「お取引先様を含む関係者の皆様に多大なご心配をお掛けしておりますこと、あらためてお詫び申し上げます」と謝罪。「本件を反省し、役職員間の日頃からのコミュニケーションにいっそう留意し、このような誤解を招くことがないように、また、誤解が生じても社内で話し合って前向きに解決できる環境づくりに、真摯に取り組んで参ります」とコメントしました。

両者がそろって謝罪を表明したことで、騒動の終わりが印象付けられたのは間違いありません。
「炎上」をさらに焚き付けたい「野次馬」たちも、これ以上火の手の勢いを強めることができる材料は見当たらないと判断したのでしょう。「マタハラ」をめぐるTwitter投稿は、潮が引くように減っていきました。
従業員と会社側の意思疎通がうまくいかなかったことを露呈してしまったという意味で、S氏にもD社にもそれぞれ落ち度があったのは確かです。しかし、比較的早い段階で共に謝罪と和解を公表したのは、賢明な対処でした。

人物調査やネット監視 リスク回避の備えを

とはいえ、今回の騒動からは、多くの企業が学んでおくべき教訓が見えてきます。
それは、事実関係がどうであれ、SNS上で告発されて「炎上」してしまえば、企業の信用やブランドが毀損されかねないということです。
「妊娠を報告したら減給を言い渡された」のが事実ではなかったとしても、「妊娠した社員の処遇について、明確なルールが整っていない会社」というマイナスイメージが広まってしまった可能性は否めません。

こうしたリスクを避けるため、企業はどんな備えをしておくべきしょうか。
考えられるのは、以下の対策です。
・企業の取り組みや考え方などを表す積極的かつ正確な情報発信
・SNSなどの活用に関する従業員教育の徹底
・取引先や従業員、採用予定者の調査(過去に不祥事や犯罪、コンプライアンス違反を犯していないかなど)
・企業に対する誹謗中傷の投稿などをいち早く察知し、対処するためのネット監視

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