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「異物混入」はこう対応する!製パン会社の好事例に学ぶべきセオリーとは?

公開日:2024.07.01 最終更新日:2024.08.01

飲食物を取り扱う企業・店舗で「異物混入」が発生した場合、事故の規模や混入物の種類によっては大きな騒動に発展する可能性があります。事態の鎮静化に欠かせないのは世間の不安を払しょくすることで、その方法を誤れば不買運動にも発展してしまいかねません。今回の記事は製パン会社の好事例をもとに、消費者を安心させる対応のセオリーを考察します。

異物混入のリスクはゼロにできない

東京都保健医療局がまとめた食品の苦情統計(※)によると、2022年度に発生した「異物混入」は565件に上りました。 都内に限っても1日1件をゆうに超えるペースで、全国の道府県を合わせると相当な数になるということは容易に想像できるでしょう。

こうした状況は、飲食物を取り扱う企業・店舗が異物混入のリスクを完全に排除するのは困難な現実を表しています。 もちろん、異物混入を防ぐ対策の立案・実行は欠かせませんが、万一起きてしまった場合の適切な対応についても当然考えておかなければなりません。 騒動を無為に拡大させない対応の手順・内容を練る上では、必要なセオリーを網羅した好事例を参考にするのが最も効果的です。

消費者から連絡を受け、速やかにリリースを公表

2024年5月5日、製パン大手A社のお客様相談室に寄せられたのは、「(食パン)に異物が混入している」という消費者からの連絡でした。
その2日後、別の消費者からも同様の指摘を受けたA社は、その日のうちに「お詫びと自主回収に関するお知らせ」を公式サイトでリリースしています。

リリース文では、東京・多摩地区の工場で製造された特定の商品に「異物(小動物らしきものの一部)」が混入した事実とともに、異物が混入した商品の回収を終えたことを説明。同じラインで製造した商品の回収や、原因究明と対策強化のため該当ラインを当面休止することなども明示しました。

5月21日には「お詫びと経過のご報告」をリリースし、異物がクマネズミの子どもだったと報告。該当ラインの全設備を細部まで徹底的に清掃・殺菌し、細菌検査でも異常がないことを確認したとしました。

その上で、防鼠対策としては、工場外部の巣穴と工場建屋の隙間の閉塞、粘着トラップの増設と監視カメラ112台の新設によるモニタリングの開始、ネズミを忌避する超音波発信機13台の設置といった対策を実施済みであるとしました。

SNSでの告発やメディアなどからの批判を抑止

消費者から連絡が入った段階でリリースを出すなどの対応を始めたA社の姿勢は、消費者がSNSで異物混入を告発する事態を防ぐ結果に繋がりました。
もちろん、Xの書き込みにはネガティブな反応もあり、一部では商品への不安や不買を宣言する投稿内容が確認されたものの、大きな混乱や批判は他の異物混入事例と比べて少なかったと言えます。

世論の形成に影響を及ぼすメディアもリリースの情報を報じるにとどまり、A社が過去に起こした異物混入の炎上事案を蒸し返すような動きも見られませんでした。
とは言え、本来であれば「ネズミの死骸が混入したパンが販売されていた」という事象自体は強く非難され、大炎上に発展する可能性が高かったはずです。

しかし、異物混入の発生連絡から2日後に第一報を発信するなどスピーディーかつ丁寧な情報開示を行ったことで、本事例は批判的な論調が強まることなく収束しました。

リリース文は表記がわかりやすく、第三者の外部機関による検査結果を記載したことで憶測や邪推が飛び交うこともありませんでした。そのため、過剰な不安を煽りがちなメディアやインフルエンサーの主張を封じ込むことができたと考えられます。

自主回収商品の購入者に、お詫びとしてQUOカードを発送したことについても、対応の早さを称賛する声が聞かれ、A社の行動は消費者から一定の評価を得たと推測されます。

そのことは、二度のリリース以外に世間が反応を示さなかった状況を裏付ける投稿数の推移を見ても明白で、他の異物混入のケースと比較しても早期の沈静化に成功した好事例と言えるでしょう。

消費者対応について守るべき3つのセオリー

A社の事例から学ぶべき対応のセオリーは、以下の3点にまとめることができます。

■自主回収や休業などの判断を迅速に行える体制をつくる。
⇒事象発生時の危機管理対応マニュアルを策定する。

■保健所の指導など、外部機関に相談した結果をリリースできるように体制を整える。
⇒同上。

■消費者に与える影響の大きさを鑑み、迅速に消費者へ情報を届けられるよう公式SNSや公式サイトでもお知らせをする。
⇒お知らせをする際は、異物混入の経緯と対策、手元の商品が回収対象か否かを消費者自身が速やかに判別できるだけの情報を提供する。

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※東京都保健医療局 食品衛生関係苦情処理集計表

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