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内部告発・不適切発言によるSNSトラブルの時代 求められる企業の行動指針とは(デジタル・クライシス白書-2025年2月度-)

公開日:2025.03.28

混迷続くフジテレビ スポンサー離れと改革の行方に注目

桑江:最初のテーマは「メディア・スポンサー関連」です。元タレント・中居正広氏の女性トラブルに関する報道を受け、多くの企業がフジテレビでのCM放映を中止しました。同社の2025年3月期の広告収入は、従来計画を233億円も下回る見通しとなり、今期は赤字転落が予想されています。

一方、高須クリニックや夢グループなどの一部スポンサーは、CMの継続を決定しました。こうした対応に賛否両論が寄せられる中、いち早くCMを再開したキンライサーなど新たな動きを取る企業も現れ、一連の状況には変化の兆しが見られます。

フジテレビは若手・中堅社員を中心とした「再生・改革プロジェクト本部」を設けて再発防止・風土改革に取り組む構えで、3月末には第三者委員会による調査報告書が公表される予定です。多くのスポンサーは同社側の対応を見極めながらCM再開の是非を判断するとみられます。

今後のスポンサーの動向が注視されますが、少なくとも調査報告書が出るまでは、CMを積極的に再開すべき理由は見当たりません。「この番組に、こういう思いを持っているので再開する」ということであれば、何とかプラスになる可能性はありますが、「売名行為」「時期尚早」と批判されるデメリットも勘案した上で判断することが大切です。

中居氏トラブル余波 鶴瓶氏の広告見合わせが物議

桑江:中居正広氏のトラブルに関連しては、スシローが笑福亭鶴瓶氏の広告起用を一時的に停止したことが物議を醸しました。トラブル発生の直前に中居氏の自宅で開催されたバーベキューパーティーに鶴瓶氏をはじめとする大物芸能人が参加していたことが週刊誌で報じられた後、同社の公式サイトから鶴瓶氏の写真が消えたことが話題になりました。

同社はメディアの取材に対し、「お客様から様々な声をいただいている現状を踏まえ総合的に判断しました」と回答しています。しかし、SNS上では「過剰に反応しすぎ」といった意見が多数寄せられました。

その後、同社は公式サイトにお詫びを掲載し、「所属事務所様を通じて当初の報道に対し書面にてご見解を頂きましたが、状況の全体像が不明確であったため、広告使用を一時見合わせた」と説明。「その結果として、笑福亭鶴瓶様および所属事務所の皆様にもご迷惑とご心痛をおかけし、深く反省しております」と謝罪しています。

スシローの対応が過剰だった感は否めませんが、しっかりと謝罪したことは評価もされています。社会を揺るがす騒動の余波を受けた場合、企業としてどう振る舞うべきか参考になる事例かと思います。

マルちゃん「赤いきつね」アニメCMが炎上

桑江:次は「ジェンダー・フェミニズム」です。「赤いきつね」のWeb限定アニメCMが、SNS上で物議を醸しています。このCMは、女性が薄暗い自室でテレビを眺めて感動するシーンから始まり、涙ぐみながら「赤いきつね」を食べるというシチュエーションをアニメで描いたものです。マルちゃんの公式YouTubeやXなどの媒体で公開されました。

追って公開された別バージョンのアニメCMでは、残業中の男性がデスクで仕事をしながら「緑のたぬき」を食べる姿が描かれています。

公開当初は大きな話題になりませんでしたが、SNS上では「きっしょ!女性を赤面させるなら、男性もちゃんと赤面させろ!」「セクハラCM」「男性向けに作られた内容」といった批判的なコメントが相次ぎ、急激に拡散しました。

一方、「これって性的な表現?どこが?」「エロ要素なんてないでしょ?」などと異を唱える投稿も相次ぎ、SNS上で論争が巻き起こっています。

企画を担当した企業は、公式XにおいてSNS上で噂されていた生成AIの使用を否定しており、虚偽の拡散や関係者への誹謗中傷をやめるよう呼びかけて話題になっています。

従来であれば、企業のクリエイティブを批判する意見が噴出すると、「行きすぎ」という声が強まって収束するパターンが多かったのですが、今回は論争が続いています。本件を題材に社内で意見を出し合って共有すれば、自社のクリエイティブチェックなどに活かせると思います。

中町兄妹、埼玉県の道路陥没事故めぐる発言で炎上

桑江:続いては「不適切・不用意な発言」です。人気YouTuber・中町兄妹が配信した動画内での発言が炎上しています。

妹の中町綾氏が埼玉県八潮市の道路陥没事故に触れ、「でっかいトラックが通るときは一緒に走らないようにしようと思ったり。マジで日々どう生きるかを常に学んでる。で、(自分が)秒で死んだらおもろいよね」と発言。兄の中町JP氏も笑いながら同調し、深刻な事故を茶化すかのようなやりとりが続きました。

発言の切り抜き動画がSNS上で拡散されると批判が殺到したことから、兄妹はYouTubeに謝罪動画を投稿しています。

しかし、中町綾氏を起用している「CanCam」や「ピーチ・ジョン」にも批判の矛先が向けられ、「ピーチ・ジョン」は中町綾氏の起用を取りやめるなど影響が広がりました。

切り抜き動画は若干の悪意を持って編集された印象もありますが、企業がSNSのインフルエンサーやユーチューバーを起用する際のリスクが露呈したように思います。インフルエンサーなどを起用する場合は、本人が発信しているコンテンツの事前チェック体制を確認しておく必要があります。

高所得者の厚生年金保険料引き上げに賛成し物議

桑江:元NHK職員で厚生労働省社会保険審議委員会(年金部会)委員のたかまつなな氏が、自身のXで高所得者の厚生年金保険料引き上げに関する見解を発信し、議論を呼んでいます。たかまつ氏は、「高所得者の厚生年金保険料上げ厚労省案」という日本経済新聞の記事を引用し、「この案に賛成しました」と投稿しました。

この投稿では、保険料引き上げの背景や意義について説明するとともに、自身の意見やネット上の論調に対する違和感にも触れています。これに対し、SNS上では「現役世代の負担増に反対」「年金制度はすでに破綻している」など、たかまつ氏の理解不足を指摘する意見が相次ぎました。

たかまつ氏は、若年層の代弁者として期待されていましたが、その期待を裏切ったと感じさせてしまったことが大きな批判につながったと言えます、企業の経営者などが官公庁や自治体の委員などを務める場合も、世間から期待される立場を踏まえて発言する必要があります。

すき家でピッチャーの水を「直飲み」 女性客の動画が炎上

桑江:次は「客テロ(迷惑行為)」です。すき家で自身がピッチャーの水を「直飲み」する動画をInstagramに投稿した女性客の行動に、批判が殺到しています。動画は、投稿から24時間で自動的に削除されるストーリーズの機能を使用してアップされたものの、削除後もネット上で拡散し続けました。

メディアの取材に対し、同社は「本件についてはすでに把握しており、すき家の店内で撮影されたと認識しています。また、ピッチャーはお客様が席を立つたびにすべて洗浄するわけではありません。ただし、当該動画で使用されたピッチャーは、該当人物が退店した後に他のお客様に提供された事実は一切ないことを確認しています」と回答しました。

すき家は「今回の被害を受けて、現在警察に相談している」ことも明らかにしています。

ここ数年、客テロに対しては企業側も警察に相談した上で厳しい対応を取ることが普通になってきています。企業としては「不衛生な店舗」と思われないよう、「このように事後対処した」という事実を表明することも大切です。

宝石店の利用客が強引な営業についてX投稿

桑江:最後は「その他」です。Xを利用する一般ユーザーが投稿した、festaria(フェスタリア)という宝石店の営業手法に関するエピソードが波紋を呼んでいます。

投稿者は、社会人3年目の記念に父親とともに百貨店内のfestaria店舗を訪れ、ダイヤモンドのネックレスを購入してもらったそうです。しかし、そのことを投稿して以降、「お父様はお元気ですか?」といった営業電話がかかってくるようになったといいます。

さらに、「気軽な会」との説明を受けて招待された同店のファミリーセールに参加した際は、約120万円分の宝石を分割払いで購入させられそうになり、その場で「お父様にお願いされたらいかがでしょう?」と勧誘されたことを明かしました。

この投稿が拡散されると、「こういった販売方法はなくなるべき」「百貨店に苦情を入れるべき」など批判の声が相次ぎました。投稿者は当初、宝石店の名称を伏せていましたが、リプライ欄に寄せられた「〇ェスタリアでしょうか」といったコメントを肯定したことで特定されてしまいました。

顧客に「不適切」と捉えられかねない言動は投稿される可能性があり、場合によっては動画や写真を撮られて拡散してしまうかもしれません。元社員や元店員などが騒動に便乗し、「こういう指示を受けていた」ということをリークするリスクもありますので、営業現場などの実態はしっかり確認しておく必要があります。

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