炎上は予防できる!企業が取り組むべき炎上予防・リスク最小化対策とは
- 公開日:2022.12.26 最終更新日:2024.05.02
「攻め」のマーケティングツールとして有効なSNSですが、「守り」を固めていないと思わぬ炎上に発展するリスクにさらされることがあります。それはサッカーやバスケットボールなどのスポーツ同様、ビジネスもしかり。成功や勝利をものにするには「攻守」が伴っていなければなりません。攻めのマーケティングは、失点を防ぎ、万が一失点しても即座にリカバーする体制を整えておくことで初めて機能するのです。
誰もがスマホやパソコンで発信できる時代です。SNSの普及率は国内で8割を超えました。それゆえ、たった1人の不用意な発言、配慮に欠けたつぶやきで企業全体が批判を浴び、揺らぐケースもあります。本記事では企業が取り組むべき炎上予防・リスク最小化対策を解説していきます。さて、あなたの会社の炎上へのディフェンスは鉄壁ですか?
この記事では、炎上が発生するメカニズムと予防や対策について解説します。
目次
ネット炎上は日本国内で1日4.8件発生中
企業やその従業員、著名人などのSNSやブログの言動が一般ユーザーの反感を買い、集中的に批判や悪評が飛び交う騒ぎが「炎上」です。英語では「Flaming(Flame)」と言われ、まさに集中砲火を浴びた言動に、批判のFlame(炎)がメラメラと燃え上がり、収まりがつかない状態を指します。
ネットの炎上は年々、増加傾向にあり2021年は、1日4.8件の炎上が発生していました。日本国内で発生する「山火事」が1日あたり3件(林野庁調べ)のペースで発生していることと比べてみても、それよりはるかに発生のリスクが高まっていることが実感できるでしょう。先が見通せない時代。世の中にフラストレーションが鬱積している社会不安と炎上は連動している、と指摘する専門家もいます。
なぜ炎上する?炎上が発生するメカニズム
8千万人が利用するSNSに潜むリスク
日本のSNS利用者は右肩上がりに増加して8千万人を突破しました。誰もがスマホやパソコンで発信できる時代です。それゆえ、たった1人の不用意な発言、配慮に欠けたつぶやきで企業全体が批判を浴び、揺らぐケースもあります。
しかし、企業や学校教育においてSNSの使い方、注意すべきことなどをしっかり教わったことがありますか?リスクはどんなSNSの使い方に起因するのか。それを理解せずにリスクを冒してしまうと、個人はもちろん会社や組織に多大な損害が及ぶことがあります。
炎上が発生するメカニズム
炎上が発生するメカニズムは、テレビ番組やYouTubeの生配信での言動などがリアルタイムで問題視され「炎上」するケースと、過去の問題事象がぶり返して露出し「炎上」するケースがあります。
「炎上を起こす主体」は、大きく、著名人、法人、一般人の3つに分類されます。炎上する行動は、法律に抵触する可能性のある行為などの反社会的行為や規則・規範に反した行為やその告白、予告と、それ以外の不適切と判断される可能性のある発言・行為に分類されます。
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「SNS利用研修」で従業員の個人アカウントからのトラブル防止を
従業員のSNS上での不適切発言や投稿は、企業の社会的な信用の失墜や不買運動に発展する可能性があり、企業の存続に関わる取り返しがつかない事態にもなりえます。
ひとり一人の従業員に、不用意なSNSの利用が懲戒処分の対象や損害賠償請求に発展することを周知し、無用のトラブルを起こさないという意識を持たせる必要があります。
バイトテロが損害賠償に発展したケース
2019年にバイトテロ事件に見舞われた大手回転寿司チェーンEは株価が急落し、「悪ふざけ」の代償としてはあまりにも大きい27億円相当もの損失を被りました。
2013年に被害に遭った個人経営のそば店は計3,300万円の負債を抱えて破産。事件の当事者であるアルバイトの大学生らに1,358万円の損害賠償を求めて提訴しました(学生らが約200万円を支払うことで和解)。
ちなみに、2021年6月に相次いだバイトテロ事件を見ると、被害に遭った企業は当事者の店員たちを解雇しただけでなく、法的措置も含めて厳正な対処を検討すると発表しています。
裏を返せば、企業側が受けるダメージは解雇しただけでは済まないほど大きいということでしょう。
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従業員向け「SNS利用研修」では、他社の従業員が起こしたさまざまな炎上事例と悲惨な末路を具体的に示して理解させ、個人のSNSアカウントを利用する際の注意点も分かりやすく解説します。
バイトテロ事件の防止に欠かせないのは、従業員自身に「(バイトテロは)悪ふざけだったではすまされない」という意識を持たせることです。従業員に対して入社時の研修や職場への携帯電話の持ち込み禁止を課しているにも関わらずバイトテロの被害に遭ったというケースが多くあります。
従業員には過去の炎上事例を用い、バイトテロ事件を起こした人の末路がどんなに悲惨なものかを定期的に伝える取り組みが不可欠と言えます。不適切な行為が発覚した場合は多額の賠償金を求めて提訴されるリスクがあることに加え、本人の名前や住所、学校名などの個人情報が暴かれ、晒されてしまえば、将来の就職や結婚にも悪影響が及ぶことを伝えます。さらに、刑事事件になってしまえば、取り返しのつかない社会的制裁を受けることになります。
自社のSNS運用にあたってのルールを策定する
アルバイトから経営層まで企業や団体に所属する全ての従業員は日頃何らかのSNSにアクセスしています。企業全体の取り決めとしてソーシャルメディアの使用目的や禁止語句などをルール化し、従業員に共有することが重要です。
公式SNSアカウントの運用が属人的であることは、炎上を起こす主な原因の一つです。SNS運用のルールを作り、ミスがないようにすることも不可欠です。各企業の性格にマッチしたソーシャルメディアガイドラインの策定によって、SNS炎上の防止やリスク低減に努めましょう。
・ソーシャルメディアガイドライン
従業員に対し、SNSを利用する上で注意するポイントや炎上の火種となる投稿を防ぐことを目的とした指針や具体例を策定し提示します
・公式SNSアカウント運用ポリシー
法人の公式SNSアカウントの明示、運用方針や立場、発信する内容を明示することで、公式アカウントの立場と「やること」と「やらないこと」を明確にすることで運用の属人かを防ぎます
企業の個人情報保護方針や情報セキュリティポリシーなどと同様に、ソーシャルメディアガイドラインや公式アカウントを明示し運用ポリシーを明示することも欠かせません。
「Web人物調査」で採用時に人材を見極める
炎上に繋がるような行動を起こしそうな人材の採用を防ぐことも炎上リスクの低減、炎上の予防につながります。
過去に、SNSで炎上させた投稿をした人は前提として、素行の悪さや法に触れかねない言動を仄めかすような傾向があります。自身の言動が社会的に与える影響の大きさや損害に対して無自覚です。
そのような人材を採用しないように、アルバイトであったとしても応募者のSNSアカウントをチェックし、投稿内容から炎上事案を起こす可能性があるか採用時に見極めましょう。
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自社の商品やサービスのブランドイメージ向上や販売促進を目的に、芸能人を起用しテレビCMなどを放映している企業にもリスクはつきまといます。多額の予算をかけてテレビCMを制作し放映しても、起用した芸能人の過去の言動や投稿が原因で炎上するケースがしばしばあります。
過去の発言でおかしな主張をしたことがある人はSNSに何らかの痕跡が残っています。SNSをさかのぼれば何となくでも分かります。また、起用を考えているタレントなどを実際に使ったことがある会社に評判を聞くのも良いでしょう。
従業員の採用前にリファレンスチェックをするように、芸能人を起用する際に過去の言動に問題がないかどうかを確認しましょう。特に法や公序良俗に反していないか、商品・サービスのイメージにそぐわない言動をしていないかなどをチェックすることで炎上に発展するトラブルを防げるかもしれません。
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i-siten.comインフルエンサーのリスクをSNSでチェック
近年では広告キャンペーンに芸能人を起用するように、多数のフォロワーを抱えるインフルエンサーを起用するケースが増えてきました。芸能人のリスクチェックと同様にインフルエンサーの過去の言動のチェックも必要です。
インフルエンサー起用のメリットは、そのフォロワーに「この人が使っているなら、自分も買ってみようかな」というファン心理から購買検討のフェーズまで意識を引き上げることが期待できます。テレビCMなどのマス広告と比べて制作コストを抑えられ、インフルエンサーの生活や行動に密着した商品やサービスの紹介が可能です。
その一方で、起用したインフルエンサーのイメージと商品やサービスのブランドイメージが一致していなければ「ステルスマーケティング」の疑念をもたれてしまい逆効果になります。
また、インフルエンサーの起用中に企業のPRとは無関係の事象で炎上に発展し、炎上しているインフルエンサーを起用した企業にもバッシングの影響が及びブランドイメージの低下や売上減少に繋がるリスクがあります。
さらに、インフルエンサーが過去に炎上につながるような不適切な発言や言動、投稿をしていたことが発覚することで自社のブランドイメージを傷づける懸念もあります。
従業員の採用や芸能人の起用する際にリファレンスチェックをするようにインフルエンサーの起用時にも、自社のブランドイメージに合致しているか、過去に問題が発生していないかどうかを把握することで炎上に発展するリスクを低減できます。
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i-siten.com広告で使うクリエイティブをチェック
ここ数年は、テレビCMや自治体のPR動画の表現が炎上するケースも増えてきました。インターネットの普及により、地域限定で放送されたり公開された動画であっても瞬く間に共有され炎上に発展するケースがあります。
企業のテレビCMや自治体のPR動画の炎上ではジェンダーに関する表現で炎上するケースが多い傾向にあります。女性、または男性を応援したつもりなのに「性役割の固定化」であると指摘を受けたり、「性差別」と受け取られて炎上するパターンです。さらには「女性」を強調しすぎた表現が女性に不快感を与え炎上するパターンもあります。
働く人を応援する目的で、強い「メッセージ」を広く伝えようと意気込み、新聞広告と駅の交通広告の広告表示を経営者が自らSNSに投稿したことで炎上に発展したケースもあります。
過去の炎上パターンを知っておけば避けられる事案も数多くあるため、広告出稿時には過去の炎上事案に照らし合わせてチェックすることが望ましいです。
シエンプレでは毎日収集した「炎上」事例をデータ化して保存し、さまざまな企画・制作物を「炎上」データベースと照合した上で、アナリストが「ステマ」などを含む70以上の項目でリスク診断のサービスを提供しています。
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炎上予防には、問題行動を起こしそうな従業員を採用しないように見極め、「SNS利用研修」や「ソーシャルメディアガイドライン」の周知と理解促進で炎上発生リスク低減に努めます。
しかし、炎上予防の対策を実施しても、炎上につながる事象の発生はゼロにはできません。炎上につながる問題事象はSNSで拡散され「炎上」が発生します。SNSでの投稿内容の中から自社に関する情報を日常的に「モニタリング」する「SNS監視」が欠かせません。
「SNS監視」により、自社の炎上につながる「火種」を早期に発見し対処することで被害を最小限に留められます。監視対象のSNSは、Twitter、5ch、Googleレビュー、各種業界別クチコミサイト、Facebook、Instagram、さらにはTikTokも含まれます。各メディアに投稿されている内容をモニタリングするツールを準備し、自社にまつわる投稿を確認、評価します。
SNS監視やSNSモニタリングの課題は、収集した情報が「炎上」に発展するリスクの有無や対処の要否の判断です。対処すべき投稿と対処が不要な投稿の見極めは困難を極めます。そのような課題に直面した際には、専門業者へ相談しアドバイスを依頼しましょう。
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SNS炎上のリスクと予防について紹介してきましたが、不祥事による炎上などいくら準備をしても防ぐのは難しい炎上もあります。
炎上という非常事態は、想定外のタイミングで突発的に発生します。自社で準備したプロモーションが発端となり炎上したとなれば、関係者の動揺と混乱の様は「危急存亡」の状況でしょう。しかし、その様な危機的な状況こそ落ち着いて冷静に対応することが求められます。具体的な手順を見ていきます。
事実確認と状況(論調)を把握する
まず初めに落ち着いて炎上の内容を早期に確認します。「何が問題で炎上している」のか、原因や要因を確認します。次に、その炎上の原因や要因となった事象の「事実関係」を確認します。
批判されている内容は「事実はなのか、誤解なのか」、「事実であれば何が問題なのか」、「誤解であれば、なぜ誤解されたのか」、炎上した結果を恐れず、冷静に事実関係をSNSの投稿や株価掲示板、クチコミサイトを検索し投稿内容を確認します。次に、SNSで批判しているユーザーは何を批判しているのか、その批判の矛先を理解することが大切です。
炎上状態になっているユーザーの批判に正面から向き合い、炎上の原因とユーザーの批判の論点に向き合い謝罪しなければ「問題の本質がわかっていない」、「論点をそらしている」等と更なる批判に繋がり、より事態を悪化させることに繋がります。
事実関係を客観的に正しく確認しSNSユーザーの批判の論点や論調を把握することで、謝罪の方向性を検討できます。
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一度、炎上が発生すると、全く関係のない過去のトラブルや不満などが思わぬ形で蒸し返され共有されるといった本筋とは関係のない批判的な投稿が多数発生します。本来は、炎上の原因となった事象に向き合い、SNSユーザーの批判の論点と論調に向き合った対応が必要なのに、その他の「ノイズ」に気を取られてしまい、謝罪のポイントがブレてしまい「謝罪」を「謝罪」として受け止めてもらえないケースがあります。
“「謝罪」とは自らの非を認めることであり、それによって信頼が低下する恐れもある。謝罪には、状況を逆転させる効果がある。謝罪とは、先約的でありながら非戦略的と思われることが大切という高度なコミュニケーションなのである。”「失敗しない謝り方」 – 東北大学大学院教授 大渕健一著(CCCメディアハウス)より一部抜粋して引用
SNSユーザーの批判に向き合い適切に謝罪することが炎上の早期沈静化に繋がります。
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発生した炎上を早期に沈静化するためには、SNSユーザーの論調に寄り添い「何を謝るのか」を具体化、明確化しスピーディーに対応することが欠かせません。ここで大切なことは、自社に責任があるケースとそうでないケースで必要な対応は異なります。
謝罪するということは、自社に問題があり、それを認めることです。理不尽な批判や事実と異なる炎上をできるだけ早く沈静化するために謝罪してしまうと「落ち度がない」のにもかかわらずそれを認めてしまうことになります。
炎上の発生原因と問題点を整理し、自社に責任があれば、問題があったことを認めその発生原因と問題点を整理し自社の責任を明確にする。被害にあわれた方にお詫びし、その回復に努めつつ再発防止策の実行を約束し実行するという決意表明を会見やプレスリリースなどで丁寧に行うことで沈静化に努めます。一方で、炎上の発生原因と問題点を整理し自社に責任がない場合でも不快な思いをさせてしまったことに対して謝罪する。
発生した事象や問題の規模が大きく、事実関係の確認や論調分析に時間がかかる様なケースでは、逐次対応状況やその経過を継続的に発表することで、事象に向き合い適切に対応していることを伝えることができます。対応策の検討に時間を要してしまい、迅速で的確なコミュニケーションを行えないことでより事態を悪化させることは避けなければなりません。
「炎上の発生」を前提とした組織や体制づくり
炎上発生時の危機管理マニュアルを作成
SNSの普及率は人口の8割に達している今日、いつ、どこで、どんな炎上が発生するか予測することはほぼ不可能です。自社の不祥事や経営層や従業員による不用意な言動や投稿、など炎上発生のリスクと要因を上げたらキリがありません。
その一方で、実際に炎上が発生すると関係者は混乱に陥り何から手をつけたら良いか分からず、組織的で体系的に対処できずに、発表が遅れ状況を静観していると誤解され、さらに批判されるというケースが少なくありません。
その様な状況から「炎上はいつ起きてもおかしくない」という前提で、炎上の火種を持続的に把握しましょう。炎上の発生の確認と事実関係の確認。論調の分析から謝罪点の検討、報道発表の内容作成と発表方法の検討などを業務プロセス、役割分担と意思決定や指揮命令系統を明文化しましょう。
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マニュアルを作っていても、実際の炎上時の混乱状況下では冷静に対応できないこともあります。また、従業員を対象にSNS利用の研修や炎上発生時の末路を説明しても「自分ゴト」化してもらわないことには本質的な予防に繋がりません。
そこで、炎上を疑似的に体系できる研修を利用することで、従業員にネット炎上を「自分ゴト」化してもらい、広報や広告宣伝、経営企画などのバックオフィス部門や経営層には、炎上発生時に危機管理マニュアル通りに対応できるのか検証する研修があります。
この訓練では、炎上発生時のメディア対応に関する訓練が含まれていることが重要です。疑似体験訓練の過程でメディア対応についても課題を検証し炎上の発生に備えることが不可欠です。
多くの企業や団体では、地震や火災が発生した際の手順や行動を忘れないために定期的に防災訓練を実施しています。SNSが人口の8割まで普及した今日、定期的にSNS炎上訓練も欠かせなくなっていると考えます。
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