炎上事案分析データ2024年9月版(調査対象期間:2024年9月1日~2024年9月30日)
- 公開日:2024.10.31 最終更新日:2024.11.06
シエンプレ株式会社(本社:東京都渋谷区、代表取締役社長:佐々木 寿郎)は、一般社団法人 デジタル・クライシス総合研究所(住所:東京都渋谷区、所長:佐々木 寿郎)と共同で、調査対象期間に発生したネット炎上についての件数と、その内訳、分析結果を公開しました。
目次
- ■調査背景
- ■調査の概要
- ■調査結果
- 1. 炎上主体別 発生件数 1-1. 炎上主体別 発生件数と割合(前月比)
- 1-2. 炎上主体別 発生件数と割合(前年平均比)
- 1-3. 炎上主体別 発生件数と割合(前年同月比)
- 2. 炎上の内容別 発生件数
- 2-2. 炎上の内容別 発生件数と割合(前年平均比)
- 2-3. 炎上の内容別 発生件数と割合(前年同月比)
- 3. 炎上内容の詳細区分別 発生件数
- 4. 法人等の業界別発生件数
- 5. 企業規模別の炎上発生件数と割合
- 5-1. 炎上主体における上場企業・非上場企業の件数と割合(前月比)
- 5-2. 炎上主体における上場企業・非上場企業の件数と割合(前年平均比)
- 5-3. 炎上主体における上場企業・非上場企業の件数と割合(前年同月比)
- 5-4. 炎上の対象となった従業員数と売上高の散布図
- ■分析コメント
- ■(参考)分類基準
- 2.分類基準(炎上の内容)
- 3.分類基準(業界)
■調査背景
2024年1月31日、デジタル・クライシス総合研究所はソーシャルメディアを中心とした各種媒体とデジタル上のクライシスの特性、傾向と論調を把握するために「デジタル・クライシス白書2024」(調査対象期間:2023年1月1日~2023年12月31日)を公開しました。 継続調査の結果報告として、今回は2024年9月1日~2024年9月30日の調査対象期間に発生した炎上事案について、新たに分析しています。
■調査の概要
■調査結果
1. 炎上主体別 発生件数 1-1. 炎上主体別 発生件数と割合(前月比)
9月の炎上事案は73件でした。前月に比べ、19件減少しています。
炎上主体別の内訳では、「著名人」33件(45.2%)、「一般人」16件(21.9%)、「メディア以外の法人」17件(23.3%)、「メディア」7件(9.6%)という結果でした。
割合については下図のとおり、前月と比較し、「著名人」が14.8ポイントの増加、「一般人」が12.9ポイントの減少、「メディア以外の法人」が2.6ポイントの増加、「メディア」が4.5ポイントの減少という結果でした。
1-2. 炎上主体別 発生件数と割合(前年平均比)
前年平均比では、炎上事案は59件減少しています。
炎上主体別の内訳では、「著名人」が10件の減少、「一般人」が28件の減少、「メディア以外の法人」が17件の減少、「メディア」が4件の減少という結果でした。
割合については下図のとおり、前年平均と比較すると、「著名人」が12.6ポイントの増加、「一般人」が11.4ポイントの減少、「メディア以外の法人」が2.5ポイントの減少、「メディア」が1.3ポイントの増加という結果でした。
1-3. 炎上主体別 発生件数と割合(前年同月比)
前年同月比では、炎上事案は53件減少しています。
炎上主体別の内訳は、「著名人」が10件の減少、「一般人」が25件の減少、「メディア以外の法人」が18件の減少、「メディア」が変動なしという結果でした。
割合については下図のとおり、前年同月と比較し、「著名人」が11.1ポイントの増加、「一般人」が10.6ポイントの減少、「メディア以外の法人」が4.5ポイントの減少、「メディア」が4.0ポイントの増加という結果でした。
2. 炎上の内容別 発生件数
2-1. 炎上の内容別 発生件数と割合(前月比)炎上内容別の内訳では、「情報漏洩」が0件(0%)、「規範に反した行為」が7件(9.6%)、「サービス・商品不備」が8件(11.0%)、「特定の層を不快にさせる行為(※)」が58件(79.5%)という結果でした。
前月と比較すると、「情報漏洩」は変動なし、「規範に反した行為」は4件の増加、「サービス・商品不備」は変動なし、「特定の層を不快にさせる行為」は23件の減少という結果でした。
※特定の層を不快にさせる行為:法令や社会規範に反する行為ではないものの、他者を不快にさせる行為(問題行動、問題発言、差別、偏見、SNS運用関連など)
割合については下図のとおり、「情報漏洩」が変動なし、「規範に反した行為」が6.3ポイントの増加、「サービス・商品不備」が2.3ポイントの増加、「特定の層を不快にさせる行為」が8.5ポイントの減少という結果でした。
2-2. 炎上の内容別 発生件数と割合(前年平均比)
前年の平均発生件数132件と比較すると、「情報漏洩」が1件減少、 「規範に反した行為」が6件減少、「サービス・商品不備」が9件減少、「特定の層を不快にさせる行為」が43件減少しました。
前年平均の割合と比較すると、「情報漏洩」が0.8ポイントの減少、「規範に反した行為」が0.2ポイントの減少、「サービス・商品不備」 が1.9ポイントの減少、「特定の層を不快にさせる行為」が3.0ポイント増加しました。
2-3. 炎上の内容別 発生件数と割合(前年同月比)
前年同月の件数と比較すると、「情報漏洩」が変動なし、「規範に反した行為」が10件減少、「サービス・商品不備」が2件減少、「特定の層を不快にさせる行為」が41件減少しました。
前年同月の割合と比較すると、「情報漏洩」が変動なし、「規範に反した行為」が3.9ポイントの減少 、「サービス・商品不備」が3.1ポイントの増加、「特定の層を不快にさせる行為」が0.9ポイント増加しました。
3. 炎上内容の詳細区分別 発生件数
炎上内容の詳細を分析したところ、「問題発言」に関する炎上事案が20件と最も多く、次いで「接客・対応方法」に関する炎上事案が15件でした。
4. 法人等の業界別発生件数
4-1. 法人等の業界別発生件数と割合(炎上の内容別)炎上主体のうち、「法人等」に該当する炎上24件について、業界ごとに分類しました。炎上事案が最も多かった業界は「メディア」と「娯楽・レジャー」業界で、それぞれ7件(29.2%)という結果でした。
業界別の炎上種別を割合で見た場合、結果は下図のとおりです。
5. 企業規模別の炎上発生件数と割合
炎上の標的が「法人等」の場合について、上場企業か否か、また、それぞれの従業員数について調査しました。
なお「法人等」に該当する炎上事案は、日本国内に所在する企業のみを対象としています。
また、公共団体や政党、企業概要や従業員数等の情報が公開されていない団体、国外に所在する企業等は調査対象から除外しています。
調査対象の総数は15件です。
5-1. 炎上主体における上場企業・非上場企業の件数と割合(前月比)
上場区分に関して「上場企業」が主体となった事例が5件(33.3%)、「非上場企業」が主体となった事例が10件(66.7%)という結果でした。
前月と比較すると、「上場企業」の件数は4件増加、「非上場企業」の件数は13件減少しました。
割合を比較すると、「上場企業」の割合は29.1ポイント増加しました。
5-2. 炎上主体における上場企業・非上場企業の件数と割合(前年平均比)
前年平均と比較すると、「上場企業」の件数は変動なし、「非上場企業」の件数は13件減少しました。
割合を比較すると「上場企業」の割合は15.4ポイント増加しました。
5-3. 炎上主体における上場企業・非上場企業の件数と割合(前年同月比)
前年同月と比較すると、「上場企業」の件数は3件減少、「非上場企業」の件数は7件減少しました。
割合を比較すると、炎上した企業のうち、「上場企業」の割合は1.3ポイント増加しました。
5-4. 炎上の対象となった従業員数と売上高の散布図
従業員数2,000人未満、売上高1000億円未満の規模の企業で炎上事案が多く発生しました。
一方で従業員数約2,000人以上の企業でも炎上事案が発生していることから、どのような従業員数や企業規模でも、炎上は発生する可能性があるといえます。
また下図のグラフにはありませんが、従業員数約1万人、売上高約7000億円といった大企業の炎上事案も確認されました。
■分析コメント
国際大学グローバル・コミュニケーション・センター 准教授 山口 真一氏9月の事例で興味深いのは、企業が提供する広告やコンテンツが、想定しづらい形で消費者に不安や混乱を引き起こし、炎上に繋がった点です。まず、ライオンのCM効果音に対する批判は、音声が「Jアラート」に似ているために視聴者に不安感を与えたというものでした。Jアラートは、緊急時に国民へ危険を知らせる重要なシステムであり、その音声は国民にとって緊迫感を伴うものです。このような警告音に類似した音を広告に使用することは、意図せず視聴者の心理的負担を増大させる可能性があります。広告やコンテンツ制作においては、視聴者が予期しない不安やストレスを感じることのないよう、背景や社会的文脈を十分に考慮した演出が求められるといえます。
ゆうちょ銀行の広告での「Mizuho Bank」と記載された通帳は、企業の広告作成における確認不足が原因でした。色調を変化させるなどしなければ透かしに気づきづらいことが、見過ごされた背景にあると考えられます。ただし、少なくとも異なる金融機関のものであることは丁寧に確認すれば気づけたはずです。特に金融機関においては、消費者の信頼がビジネスの根幹を成しているため、こうした確認不足によるミスがリスクとなります。この事例は、広告作成の過程での確認体制の強化がいかに重要であるかを示しています。
これら二つの事例に共通する特徴は、視覚・聴覚を通じて消費者が抱く感情や印象が企業の評判に直結する点です。対策としては、広告やコンテンツの制作段階で、消費者の反応をシミュレーションするプロセスを組み込むことが重要です。特に、音やビジュアルに関しては、消費者に不快感や誤解を生じさせないためのチェックや、他社の物が使われていないかなどのチェックが必要といえます。
■(参考)分類基準
1.分類基準(炎上の主体)抽出したデータは以下の表1に基づき分類しました。
(表1)分類基準(炎上の主体)
参考:山口真一(国際大学グローバル・コミュニケーション・センター 准教授):
『ネット炎上の研究「炎上の分類・事例と炎上参加者属性」』、 出版記念公開コロキウム用資料、2016
公に情報を発信する機会の多いメディア関連の法人については、炎上に至る経緯に違いがあるため、他業種の法人と分けて集計しています。
2.分類基準(炎上の内容)
抽出したデータは以下の表2に基づき分類しました。
(表2)分類基準(炎上の内容)
参考:山口真一(国際大学グローバル・コミュニケーション・センター 准教授):
『ネット炎上の研究「炎上の分類・事例と炎上参加者属性」』、 出版記念公開コロキウム用資料、2016
3.分類基準(業界)
また、炎上の主体が「法人等」の場合、20の業界に分類しました。
なお、該当しない業界に関しては「その他」としてデータを処理しました。
参考:
■炎上事案分析データ2024年9月版のダウンロードはこちらから
■ネット炎上・誹謗中傷・風評被害の相談、取材等のご依頼はこちらから
■一般社団法人デジタル・クライシス総合研究所 概要
名称 :一般社団法人デジタル・クライシス総合研究所
代表理事 :佐々木 寿郎
アドバイザー:山口 真一(国際大学グローバル・コミュニケーション・センター准教授)
沼田 知之(西村あさひ法律事務所所属弁護士)
設立日 :2023年1月20日
HP :https://dcri-digitalcrisis.com/
関連会社 :シエンプレ株式会社