「今日の仕事は、楽しみですか」炎上した広告メッセージに欠けていた思慮深さ
- 公開日:2021.11.30 最終更新日:2024.01.26
朝の通勤客で込み合う品川駅のコンコースに登場した広告メッセージがTwitter上で炎上し、わずか1日で取り下げられました。「今日の仕事は、楽しみですか」という何気ない問いかけが騒動となった本事例は、クリエイティブを受け取る側に立った思慮と予期せぬ炎上に備えることの重要性を物語っています。
目次
労働者の半数超が「仕事に強い不安やストレス」
厚生労働省が2021年7月に公表した「労働安全衛生調査(実態調査)」の結果によると、現在の仕事や職業生活に関することで、強い不安やストレスになっていると感じる事柄がある労働者の割合は54.2%に達しました。
とりわけ、働き盛りと言われる30~59歳の割合が高く、50~59歳は58.3%と6割近くに到達。性別でも男性の58.4%、女性も49.0%の人が「ストレスがある」と答えていることから、仕事を通じたメンタルヘルスの問題は特定の年齢層や性別に限ったものでないことが見えてきます。
ちなみに、ストレスとなっている事柄は「仕事の量」の42.5%を筆頭に、「仕事の失敗、責任の発生など」(35.0%)、「仕事の質」(30.9%)と続きました。
また、「仕事の失敗、責任の発生など」や「雇用の安定性」(15.0%)などの割合は2018年の前回調査を上回っており、仕事を取り巻くさまざまな要素がストレスの原因になっていることもうかがえます。
仕事に対して「気疲れ」や「気苦労」のレベルを超えた心労、心痛を感じている人は、もはや珍しくないと言えるでしょう。
実際に「強い不安やストレス」まではなかったとしても、何らかの理由でネガティブな感情を抱きながら仕事に就いている社会人は少なくないのではないでしょうか?
こうしたことから考えると、「仕事は楽しい」と感じている労働者は、むしろ“マイノリティー”であることが容易に想像できるのです。
こうした状況の下、これから紹介するクリエイティブの事例が批判を浴びたのは、当然の成り行きだったのかもしれません。
朝の通勤時間帯に合わせ、品川駅で広告ジャック
2021年10月4日朝、通勤客で混み合う品川駅のコンコースに連なるディスプレイに、ある広告メッセージが一斉表示されました。
「今日の仕事は、楽しみですか」
広告主のA社は、法人向けの人材育成や組織活性化、新規事業開発に特化したサービスを提供しています。メッセージは特定のサービスを宣伝しているわけではなかったため、自社のブランディングを狙ったのかもしれません。
しかし、先述の調査結果を考えれば、多くの労働者のメンタリティーと乖離したメッセージは到底共感されるものではなかったのは確かでしょう。
事実、広告メッセージが表示された当日の朝も、Twitter上ではほとんど話題に上りませんでした。
しかし、そんな広告メッセージが、なぜ批判を浴びたのでしょうか?
炎上のきっかけは広告主のツイート
そのきっかけとなったのは、A社のCEOであるB氏が発信したツイートでした。
10月4日午前11時半に公開されたB氏の投稿には、問題の広告メッセージが表示された朝の品川駅の画像が添えられていました。
この投稿で広告メッセージの存在を知ったTwitterユーザーからは「不愉快極まりない」「(仕事が)楽しみじゃない人はイラっとする」といった反発が相次いだのです。
Twitter上ではB氏が投稿した画像を加工した、いわゆる大喜利合戦も始まってしまい、「#品川駅前で一番心傷付けた奴が優勝」のハッシュタグがトレンド入り。B氏は10月5日、「配慮を欠く表現だった」と謝罪し、たった1日で広告を取り下げざるを得なくなってしまいました。
さて、今回の事例には、2つの特徴があります。
1つは、Twitter上での批判は、品川駅を利用する通勤客から直接浴びせられたものではなかったということ。事実、B氏が投稿した画像を見ても、頭上のディスプレイに視線を向ける人さえほとんど見られませんでした。
つまり、炎上を主導したのは、B氏の投稿画像を目にしたTwitterユーザーだったというわけです。
もう1つは、ディスプレイに表示された広告メッセージは「今日の仕事は、楽しみですか」というコピーだけではなかったこと。問題のコピーは約15秒間の広告の一部でしかなかった上、流れたのはわずか1秒程度でした。
いくつものメッセージがあった中で「今日の仕事は、楽しみですか」という文言だけが切り取られ、批判の対象にされてしまったのです。
「広告がどう受け止められるか」を考える
さて、今回の事例から企業が学ぶべきことは何でしょうか?
シエンプレが考えるのは、以下の2点です。
1.広告の受け手側が何を感じるのかを意識してクリエイティブを制作する。
2.間違ったメッセージが伝わっていないかをモニタリングする。
新型コロナウイルスの感染リスクに怯えながら、やむを得ず出勤しなければならない人々も大勢いる中で、今回のような広告メッセージがどのように受け止められるのか?
A社はまず、それをしっかり見極める必要がありました。
また、広告メッセージなどが意図しない形で切り取られ、炎上状態に発展するリスクは、いくら事前チェックを重ねてもゼロにするのは困難です。
まして、悪意のある第三者の手にかかってしまえば、何らかの被害は避けられません。
だからこそ重要になるのが、自社に関するインターネット上の反応を把握するモニタリングです。不穏な動きをいち早く察知し、もし間違った情報が伝わっているのなら、大きく拡散してしまう前に正しいメッセージを発信する必要があるでしょう。
炎上の芽を摘むシエンプレの手厚いサービス
今回の事例のような状況に備え、シエンプレは数々の対策を用意しています。
「クリエイティブリスク診断」サービスは、顧客企業の企画・制作物を独自の炎上データベースと照合。展開を予定している各種メディアとの親和性を見極めることも可能です。
また、自社のプロモーションなどへの起用を考えているタレント・インフルエンサーのインタビューやSNSでの発言を洗い直し、ネットユーザーの評判を確かめる「タレント・インフルエンサー拒否反応調査」サービスも提供。せっかくのプロモーションが逆効果になってしまう事態を防ぎます。
もちろん、24時間体制の「Web/SNSモニタリング」サービスも万全です。
目視とAIツールを駆使したネット監視だけでなく、炎上時と炎上後の対応の優先度も案内する充実したサポート体制を敷いているため、顧客企業の担当者の負担を軽減できます。
「当たり前のプロモーション活動をするだけで、炎上に巻き込まれるわけがない」と考えている企業は多いかもしれません。
しかし現実には、広告メッセージなどが思わぬ批判にさらされてしまうケースが後を絶たないのです。
ネット炎上の予防から鎮静化、評判管理、誹謗中傷対策まで、シエンプレが網羅するサービス分野の広さやクオリティーは国内トップを快走しています。
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