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食品会社の炎上に学ぶ危機管理対応と第三者視点の重要性

公開日:2024.05.30 最終更新日:2024.08.09

社内の不祥事が発覚するなどして炎上した企業が、事態を鎮静化させるために謝罪文をリリースするケースは少なくありません。しかし、世間がどのような説明と改善策を求めているのかを正確に把握した上で対応しなければ、さらなる騒動に発展してしまいかねません。今回の記事では、ダメージを最小限に留めるための危機管理対応と、第三者視点の重要性について考察します。

新卒採用者の9割が入社を辞退

キャリア・就職支援の総合情報サイトなどが実施した「2023年卒大学生業界イメージ調査」によると、「就職活動を始めた頃に志望していた業界ランキング」の1位は「食品・農林・水産」でした。

「食品・農林・水産」は「最終的な志望業界ランキング」でも2位に入り、人々の生活にとって身近なこれらの業界は就活生にも人気であることがわかります。ところが、2024年4月に週刊誌がスクープしたのは、缶詰やレトルト食品、ペットフードなどの製造・販売を手掛けるA社で、新卒採用者の9割が入社を辞退したという異常事態でした。

A社は非上場のオーナー企業でありながら、グループ全体の従業員数は5,000人に迫る規模を誇ります。数々のヒット商品も生み出している中、2024年度のグループ全体の売上高は1300億円を超える見込みで、2024年3月にはメジャーリーグの大谷翔平選手が入団したロサンゼルス・ドジャースとスポンサー契約を交わしたことが報道され、話題となりました。

口ずさみやすいメロディーのBGMが耳に残るペットフードのCMも好感度が高く、スクープ前にネガティブな企業イメージを持たれるようなことはほぼなかったと言えるでしょう。

しかし、大量の入社辞退者が出たことを報じた記事に書かれていたのは、老朽化した社宅での共同生活を強いられたり、募集要項よりも約3万円少ない給与額を提示されたという新卒採用者の証言でした。

これらは「暴露系」として知られるインフルエンサーが取り上げたことで、瞬く間に拡散されました。SNS上にはA社を批判する多くのコメントがあふれ返り、他のメディアからも後追いで報道される事態へと発展したのです。

「怪文書か?」――謝罪文のタイトル、内容にも批判殺到

騒動を受け、A社は公式ホームページで謝罪文をリリースしましたが、そのタイトルは「ボロ家報道について」という、企業の公式文書としてはあまりにも不適切な表現で、本文もぞんざいな書きぶりでした。

さらに、問題となった給与への言及はなく、社宅の改装については、すでに亡くなっている副社長に責任を転嫁しているとも取れる内容だったのです。謝罪文に対して多くの批判が集まったことは言うまでもなく、「怪文書か?」と訝る声まで聞かれました。

その後、謝罪文のタイトルと内容は修正されましたが、危機管理体制が整っていない社内の実態を露呈することとなってしまったのです。

今も続く週刊誌報道とインフルエンサー投稿

こうした中、週刊誌はA社が食品衛生法に違反した状態の工場で缶詰を製造していたことや、社長が勤務中の社員に特定の政治家の選挙を手伝わせていたこと、社内での録音防止のためにApple Watchの使用禁止を通達していたことなどを続々と記事にしました。

インフルエンサーもまた、「イケメン社員を“我が物”にする会長」「社員に自宅豪邸の清掃や庭の手入れも指示」「従業員を召使いのように酷使」など、社長とその夫人である会長による独裁的な社内環境を糾弾するX投稿を続けており、A社の炎上が収束する兆しはいまだ見えていません。

炎上が長引くにつれ、当初はさほど目につかなかったA社の商品の不買運動も加速し、SNS上では「もう買わない。自分の社員も大事にしない会社が、犬猫を大事に思っているはずがない」といった投稿が多く確認されています。

さらに、週刊誌とインフルエンサーによって次々と炎上の種がまかれていることで、長期にわたるブランドイメージの低下も見られます。

A社は内部告発の存在を否定するも信用は得られず、Googleマップでは社名を「ブラックシーチキン株式会社第一サティアン」へと勝手に改変されました。
一度失墜したブランドイメージの回復は困難なことから、今後の採用活動への影響も不可避という状況です。

改めて今回の事象を総括すると、週刊誌とインフルエンサーの双方にリーク情報が集まり、悪い意味での相乗効果によって拡散されてしまいました。

また、SNS上の投稿数が最も増加したのは、「ボロ家報道」の謝罪文を出した後です。

インフルエンサーが取り上げた翌日に謝罪文を発表したA社の対応自体は素早かったものの、不適切なタイトルと内容がネット上で議論を呼んでしまいました。社内向けのコミュニケーション(インナーコミュニケーション)に関してもリークされるなど、ここ最近のリスクコミュニケーションの要素がすべて含まれている炎上例と言えます。

このように、マスメディアとインフルエンサーの双方への対応が必要になるケースは増えていくことが想定されます。 A社の炎上の推移を自社に置き換えながら注視していく上で、学ぶべきポイントは以下の3つです。

■対外的コミュニケーションの重要性

非上場のオーナー企業は権力が集中しやすく、独裁的な社内環境に陥りやすい。そのため、対外的なコミュニケーションを活発化させることが重要。

■謝罪文の内容が批判されることもある

A社の場合、謝罪文を見たインターネットユーザーがどのように感じるかを考慮するという「受け手への配慮」が不足していた。文章の表記や内容に対し、どのような批判を受ける可能性があるのか、社会の論調をしっかりと把握した上で対応する必要がある。

■第三者視点の重要性

社内だけで問題や対策、謝罪文などを考えることは客観的な視点で物事を捉えられないという問題の温床になるため、第三者視点で考えられる仕組みづくりや、時には外部に対策を依頼することも重要。

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ネット上の口コミやニュース記事などを収集し、ネガティブとポジティブに分けて正確に把握した論調を踏まえ、これから想定されるリスクを診断するとともにマスコミ対応やリリース文のライティングなどを支援します。他社と提携しているため、緊急窓口としてのコールセンターの立ち上げや、マスコミ向け記者会見のセッティング・運営もお任せください。

事態が落ち着くまでの間は、ネット上の投稿やネットメディアの論調をモニタリングし、トーンや視点の微妙な変化も見逃さずにご報告します。
検索エンジンで表示される関連キーワードも監視するため、不適切な語句がヒットしたとしても、速やかな鎮静化が可能です。

炎上リスクを遠ざけ、非常時も適切な対応を取るためには、十分なデータと専門的な知見にもとづく適切な判断が欠かせません。

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