コロナ禍の挙式キャンセルに「解約料払え」ブライダル会社が「炎上」!
- 公開日:2020.07.17 最終更新日:2023.06.21
19世紀に活動したイタリアの国民的作家、アレッサンドロ・マンゾーニ。代表作として知られるのが、日本でも出版された長編小説「いいなづけ」(1827年刊)です。
結婚を誓い合った若い2人は、理不尽な試練の数々に見舞われて離れ離れの生活を余儀なくされます。
その最大の試練となったのが、世界中で大規模な流行を繰り返した伝染病、ペストでした。イタリア全土に広がった死の病を乗り越えた2人は、晴れて結婚式を挙げました。
イタリア初の古典小説でもある本作は、スペインの統治下にあった17世紀の北イタリアの農民を描いた物語です。
2020年の日本社会では、愛し合う2人を襲う理不尽な試練など滅多にないと思えるかもしれません。しかし、現実には物語のようなハッピーエンドを迎えられないカップルが続出したのです。
彼らの前途に立ちはだかったのは、新型コロナウイルスの感染拡大でした。
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SNS上に「新型コロナで式を中止したいけれど100万円」
結婚情報誌ゼクシィの「結婚トレンド調査2019調べ」によると、結婚式費用の全国平均総額は約355万円。経済産業省の調査では、2019年に8万6,304件の挙式・披露宴が執り行われました。
2020年も、多くの結婚式が挙げられるはずでした。ところが、新型コロナの猛威は人生の門出を祝うことさえ困難にしたのです。
政府が大規模イベントなどの自粛要請を出したのは2020年2月26日のこと。3月25日には外出自粛要請、4月7日には7都府県に対する緊急事態宣言を発出し、4月16日には全国に拡大することとなります。
事態の収束はおろか、感染者数がどこまで増えるか分からない状況下。結婚式の延期や中止を決断せざるを得なかったカップルの悲しみは、察するに余りあります。もちろん、苦渋の決断を下した彼らに何の落ち度もないことは、言うまでもないでしょう。
こうした中、Twitter上では緊急事態宣言下の5月上旬から、ブライダル会社に対する批判的な投稿が相次ぐようになりました。
それらは「新型コロナの影響で式を中止したいけれどキャンセル料が約100万円」、あるいは「ウエディングプランナーにキャンセル料を問い合わせたが、5日間たっても返答がなかった。キャンセル料は挙式日までの日数が少なくなるほど増える可能性があるのに」といった不満や怒りでした。
E社、B社の「悪評」噴出、レピュテーションリスクに発展
とりわけ目立ったのが、E社、B社とのトラブルに関する報告です。
「気力と体力を奪われた」「対応にすごく不安感を持った」「プランナーの高笑いに腹が立った」「内金20万円のうち10万円は戻ってくる話だったのに、実際に振り込まれたのはその半分以下」など、にわかに信じ難い内容ばかりでしたが、「その通り」と言わんばかりに同調する投稿が続出しました。
その後も投稿は続き、E社、B社に関しては「悪評が多い」「経営状態が悪い」「スタッフの対応が悪い」といったネガティブ情報が拡散されます。
さらに「緊急事態宣言の延期で免責キャンセルが可能ではないか」「高額なキャンセル料を鵜呑みにせず、交渉した方がいい」などと投稿者にアドバイスを送るコメントも加わり、E社、B社は「炎上」に巻き込まれました。
もちろん、ブライダル会社も企業である以上、結婚式のキャンセルが相次げば経営危機に陥りかねません。準備に掛かるコストも勘案すると、キャンセル料を請求すること自体は、やむを得ないと言えるかもしれません。
しかし、企業にとってキャンセル料を失うこと以上に恐ろしいのは、ネガティブな評判が広まるレピュテーション(風評、評判)リスクでしょう。経営の根幹を成す信用やブランド価値が失墜してしまえば、元も子もありません。
今回の「炎上」も、まさにレピュテーションリスクそのものでした。その経緯をたどる限り、両社の対応に納得しかねる顧客が多かった事実は否めません。
T社は新型コロナ禍でのキャンセル無料、素早い判断に賞賛の声
一方、同じブライダル会社でも、E社、B社と対照的な顧客対応で評価を高めたのがT社でした。緊急事態宣言の発令期間中に予定されていた結婚式を延期・中止する場合も「キャンセル料は求めない」と発表したのです。
さらに驚かされたのは、その判断を緊急事態宣言の初日に下した対応の早さでした。
もちろん、キャンセル料の放棄が経営的に痛手となったのは間違いないでしょう。
しかし、Twitter上には「この会社を誇りに思う」「素晴らしい対応」といった賞賛が相次ぎました。T社は「レピュテーションリスク」を回避しただけでなく、コロナ禍の逆境をバネに企業価値を高めることにも成功したと言えます。
その証拠に、キャンセル料がかからないにも関わらず顧客が離れることはありませんでした。コロナ前に確保したT社の受注は、緊急事態宣言の解除後も95%を維持したのです。
ハッシュタグで集団投稿、従来型と異なる「炎上」傾向も
さて、E社、B社の「炎上」には、これまでとは異なる傾向も見受けられました。
企業を取り巻く従来型の「炎上」は、あるひとつの投稿が拡散されることで発生に至るというパターンが一般的でした。
しかし、今回はキャンセル料の対応などをめぐって同じような体験をした人たちが「#結婚式キャンセル」などのハッシュタグを使い、次から次と集団で声を上げたのです。「炎上」のスピードや関連する投稿数が増せば、企業が被るダメージも当然大きくなるでしょう。
今回の事例のように、レピュテーションリスクは有事の際に誤った対応を取ったり、判断が後手に回ったりすることで高まる傾向があります。
E社、B社をめぐる「悪評が多い」「スタッフの対応が悪い」といったネガティブなコメントは投稿者の主観ながら、SNS上で告発されて「炎上」してしまえば企業の信用やブランド価値を瞬時に失墜させてしまいかねません。
そうしたリスクを避けるために必要なのは、企業の取り組みや方針を正確かつ積極的に発信することです。もちろん、顧客対応に関する従業員教育の徹底も必要でしょう。
とはいえ、何がきっかけでいつ起こるか分からないのが「炎上」の怖さ。国内初のデジタル・クライシス対策カンパニーのシエンプレは24時間のWeb監視体制を誇り、企業に対する誹謗中傷の投稿などをいち早く見つけ出します。
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