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多発するインフルエンサーが起因となる炎上とその対策

公開日:2023.07.01 最終更新日:2024.03.21

※この記事は雑誌『美楽』2023年7月号の掲載内容を転載しております。

2023年3月、 新電力会社であるA社が炎上する事案が発生しました。炎上の発端はインフルエンサーによるSNSでの拡散です。「法外な電気代を請求された」「返金を断られた」など、利用者の不満の声をまとめた投稿が拡散されたことにより、A社に対するネガティブな投稿が増加しただけでなく、Twitterよりも匿名性の高い「LINEオープンチャット」(※1)に利用者たちが集まり、情報交換をするなどの動きが見られました。

実は同社に対する不満の声は、炎上する約1ヶ月前から上がっていました。A社は問題を認知しており、対応を行ったものの利用者が納得する内容ではなかったため、結果的にインフルエンサーの投稿が起因となり、炎上に至ったと推測できます。

このように、炎上の予兆となる事象が投稿されて日数が経過した後、インフルエンサーがその事象を取り上げることにより、炎上に至る事案が多発しています。2022年には、老舗和菓子店の社長が交通事故を起こした約1ヶ月後、被害者のドライブレコーダー映像がインフルエンサーにより拡散。赤信号を無視したための衝突で、自身の過失にもかかわらず相手を恫喝する姿に批判の声が集中し、社長は辞任に追い込まれました。また、同年7月には、以前から衛生面を指摘した投稿が複数確認されていた有名飲食チェーン店の元従業員が、店舗は大量に害虫の出る不衛生な環境であることを写真とともにツイート。運営会社は告発内容を概ね認め、謝罪を行いました。

弊社の調査によると、2022年の法人の炎上は555件、1日あたり1.5件の炎上事案が発生しています(※2)。また、炎上の悪影響は株価の下落だけではありません。炎上を知ったユーザーの約6割が商品・サービスの利用を停止、再検討しており、求職者の約7割が応募を止めたり、面接を辞退したりするなどの影響があることが明らかになっています。メディアの対応も高速化しており、炎上事案の約6割が24時間以内に放送・記事化されています。

こうした炎上を未然に防ぐためには、有事を想定した危機管理マニュアルの作成が重要です。また今回の事案のように、炎上時に情報が拡散される先はTwitter以外の多岐にわたります。顧客やメディアの対応を行いながら、複数のSNSの論調を把握することは非常に困難といえるでしょう。そのため平時から炎上の火種を網羅的に発見し、スピーディーかつ的確に対応できる体制の構築も大切です。

加えて近年は、企業の公式SNSの不適切な運用をきっかけに炎上するケースも多いことから、SNSポリシーや利用規約、ガイドラインの整備も必須といえるでしょう。これらをしっかりと整備し、社内に浸透、教育させていくことで、炎上リスクを大きく減らすことが可能なのです。

※1 モバイルメッセンジャーアプリ「LINE」の機能。友だち以外のユーザーとも匿名で交流できる
※2 シエンプレ デジタル・クライシス総合研究所発表の調査データ

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