病院のSNS炎上から考える人事アカウントの正しい運用方法とは
- 公開日:2022.12.01 最終更新日:2023.06.15
※この記事は雑誌『美楽』2022年12月号の掲載内容を転載しております。
2022年8月、愛知県にあるA病院の人事部看護師採用チーム公式ツイッターの投稿が不適切だと世間から批判され、炎上する事案が発生しました。
問題となった投稿は、退職を相談した勤続3年目の看護師に対し、「『目標をもってないからや、なんか目標をもて』と言ってやった」とアドバイスしたというもの。この投稿についてネット上では、「公開パワハラ」「上から目線」などの批判の声が上がりました。批判を受けたA病院は、ツイッター上に謝罪文を掲載し、アカウントを削除しました。
今回、炎上した一つの要因は「受け手側への配慮不足」といえるでしょう。相談者や投稿を目にしたユーザーがどのように感じるかを配慮していたのならば、炎上は回避できた可能性があります。幅広い世代にSNSが普及した今、多くの人が他者からのマウンティングやハラスメントなど、劣等感や不快感のある投稿に敏感になっているのです。上から目線や価値観の押し付けとも捉えられかねない発言は、炎上の火種になりかねません。特に企業の人事・採用担当の公式SNSの発言は、上から目線に捉えられやすい傾向があります。
また、アカウントを当日中に削除したものの、数日後に36万人以上のフォロワーを持つインフルエンサーが問題の投稿のスクリーンショットとともに拡散したことも炎上の要因といえます。拡散により、多くのユーザーがこの不適切発言を知ることとなったのです。
本事案のような企業の採用担当のSNS炎上は、過去にも多数発生しています。2022年1月には、B社、C社、翌月には、D社の採用担当者が公式SNSで不適切発言をし、炎上に至っています。炎上により、企業のイメージダウンだけでなく、株価の下落などの影響を受けた企業もありました。
人事・採用担当の公式SNSが炎上した場合の対策として重要なことは2点挙げられます。1点目は「火に油を注がない」ということ。ツイートやアカウント自体を削除するなど、炎上時に批判が想定される新規の情報を出さないことで、再炎上を回避できる可能性があります。2点目は「早期発見・早期対策」です。今回の炎上では、問題の投稿があった8月18日ではなく、インフルエンサーが投稿を拡散した8月23日に関連した投稿が急増しています。8月18日時点で批判の投稿が複数あったため、その時点で炎上の予兆を掴み、事前に対策をしていたならば被害を最小限に留められたと推測できます。
SNSは使い方次第で敵を増やしてしまう一方で、ファンを増やすこともできる優秀なツールです。正しく運用するためには、社内で研修を行い、事例のインプットや直近の風潮を従業員に理解してもらう必要があります。また、投稿前には「受け手側の思考を想像する」「感情や思いつきのままに発信しない」「投稿に責任が持てるのか」という点をチェックすることが大切です。「個人アカウント」ではなく、「企業アカウント」であるという認識を持ち、有効に活用していくことが、企業の担当者には求められているのです。