大手牛丼チェーンの炎上事例から考えるSNS時代の顧客対応
- 公開日:2022.07.01 最終更新日:2023.06.01
※この記事は雑誌『美楽』2022年7月号の掲載内容を転載しております。
2022年3月、全国展開する牛丼チェーンA社が実施した、人気漫画「魁!!男塾」とのコラボキャンペーンが炎上する事態が発生しました。
炎上したキャンペーンは、期間中に220米札(マイル)を貯める事で名前入りのオリジナル食器が贈呈されるというもの。キャンペーン開始当時、記載できる名前について利用者がA社のお客様窓口に問い合わせたところ、「任意の名前で良い」という回答でした。しかし、「記載は本名のみ」という条件が後から発表されたことにより、キャンペーン参加者たちから反発の声が挙がったのです。参加者が再度問い合わせをすると、本名以外の記載は不可との回答。また、その回答メールは利用者に対して攻撃的ともとれる内容でした。この対応に対し、利用者は不満とともにメールの画像をツイッターに投稿。この投稿が拡散されたことにより、まとめサイトなどのウェブメディアにも取り上げられ、さらなる批判が殺到したのです。事態を受け、吉野家は公式サイトに謝罪文を掲載。一定条件のもと、本名以外の記載を可としました。
今回、炎上した要因は2点あると考えられます。1点は「顧客への配慮不足」です。特典品を手に入れるには、220日間店舗に通う必要があります。1回300円以上の利用が獲得条件のため、その出費は最低でも6万円以上になるでしょう。キャンペーン参加者は、それだけ吉野家を愛するヘビーユーザーなのです。ファン離れを避けるためにも、回答は丁寧かつ、慎重に行うべきだったといえるでしょう。また、苦労して獲得した品の写真をSNSに投稿したいというニーズもあるはずです。しかし、本名をSNSに晒したくないユーザーが殆どだと考えられます。2点目は「初期対応の不備」です。当初批判は特典獲得者の間のみでした。しかし、投稿が拡散されたことにより、一般ユーザーにも同社の対応が攻撃的であると認識され、炎上状態に陥りました。対応内容がSNS上で公開されるリスクを考慮し、初期対応が適切かどうかの精査が必要だったといえるでしょう。
一方で顧客対応によって炎上が回避できた事例もあります。大手食品メーカーであるカルビー株式会社は、異物混入のクレームに対し、写真入りの調査レポートと自社製品を無償で送付しています。この対応に対し、クレーム客本人が自身のSNSで同社の対応を絶賛するケースも多く、本来、異物混入は食品メーカーにとっては重大なミスになりえるものの、その迅速かつ真摯な対応からか、クレーム客の再購入率は95%といわれています。
2022年末には8241万人に達するといわれている日本のSNS人口。顧客対応においての炎上を回避するには、担当者の対応内容が即座にネット上で公開されてしまうリスクを考慮することが重要です。その上で、担当者1人で安易に回答せず、社内で協議の上、顧客に寄り添った真摯な対応を行うことがベストといえるでしょう。また、社内の感覚が顧客の意識と乖離しているケースもあるため、外部の専門家などに意見を求めることも有効です。