バラエティ番組の炎上から考える 誹謗中傷対策の重要性
- 公開日:2022.04.01 最終更新日:2023.06.01
※この記事は雑誌『美楽』2022年4月号の掲載内容を転載しております。
2022年元旦に放送されたとあるTBS系バラエティ番組に出演したイタリアンシェフのA氏が世間から批判を浴び、炎上する事態となりました。
番組の内容は、大手コンビニエンスストアの人気商品をプロの料理人が試食し、合格か不合格かをジャッジするというもの。審査員として出演したAシェフは、ファミリーマートの「直巻和風ツナマヨネーズおむすび」を前にして「食べたいという気にさせない」と、試食を拒否。商品の開発担当の女性は、食べてから合否を判断して欲しいと涙ながらに訴えました。必死の訴えを受け、最終的には口にしたものの、結果は当然のように不合格。このシーンを見た視聴者から「失礼だ」「態度が悪い」と批判が集中したのです。批判はSNS上だけに留まらず、Aシェフが経営するレストランのグーグルマップや公式ユーチューブ動画のコメント欄に大量の誹謗中傷が書き込まれる事態になりました。食べたことのないAシェフの料理を酷評するなどの荒らし行為を行うユーザーを「ツナマヨ民」と称するなど、大きな話題となりました。誹謗中傷が要因となり、Aシェフのレストランは閉業。動画やSNSアカウントも全て削除されています。このように、炎上による誹謗中傷によって、コストをかけて獲得したフォロワーやコンテンツ、来店に繋がるはずのレビューも全て失う事となってしまったのです。
多くの批判を浴びたAシェフですが、一方では彼を擁護する声も見られます。番組を最後まで確認すると、担当者に謝罪し、商品の改良案を的確かつ真剣にアドバイスしているのです。「食べずに不合格にした」という部分だけが切り取られ、独り歩きしてしまったことが炎上した1つの要因といえるでしょう。また、本事案では、攻撃的な誹謗中傷行為をする「ツナマヨ民」の存在など、ネットリテラシーの悪化が懸念されます。実際、シェフと同姓の男性が経営している無関係のレストランが誹謗中傷の被害に遭い、困惑の声を上げています。
今回の事案のように、ネットでの誹謗中傷は深刻化しています。2020年、フジテレビの恋愛番組「テラスハウス」の出演者であるプロレスラーの木村花さんがSNSで中傷され、自ら命を絶ってしまった悲痛な事案が記憶に新しい人も多いのではないでしょうか。
本事案は、木村花さんの事案と同様に番組制作側にも批判の矛先が向いています。もしも、テレビ局もしくはシェフのいずれかが早期に公式な場で謝罪していたならば、ダメージは小さかったと推測できます。なぜならば、弊社の調査(※1)により、炎上事案発生後、メディアによって記事化・放送されるスピードは約半数が24時間以内であること明らかになっているからです。誹謗中傷のきっかけとなる炎上を回避するには、迅速かつ適切な初動対応が重要なのです。
ネットでの誹謗中傷が絶えない現代において、早期にトラブルを検知し、適切な対応を取るためには、モニタリング体制を構築することが必須といえるでしょう。また、少しでもクリエイティブに違和感のある場合には、第三者への相談や、チェックを依頼できる体制の構築も必要です。
※1 弊社刊行資料「デジタル・クライシス白書2022」より