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五輪組織委・森会長の女性蔑視発言から考えるスポンサー企業の社会的責任

公開日:2021.06.01 最終更新日:2023.05.31

※この記事は雑誌『美楽』2021年6月号の掲載内容を転載しております。

2月3日、日本オリンピック委員会評議会での、森元会長の「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる。」といった発言に対して批判が殺到しました。女性蔑視と捉えられる内容であり、4日に緊急記者会見を実施。発言の撤回を行いました。またIOC(国際オリンピック委員会)は記者会見を踏まえ、「発言の謝罪をもって、問題が終わったと考えている」と事態の収集を図りました。

しかし9日にはIOCは「森会長の最近の発言は完全に不適切だ」と表明(※1)。当初の立場と一転して森氏の発言を問題視するようになったのです。また10日には小池東京都知事が五輪4者会談の欠席を表明。11日には五輪放映権を持つ米NBCが森会長の辞任を要求する意見記事をリリースするなど事態が深刻化しました。これらを受け、12日の合同懇親会にて森氏は会長の辞任を表明するに至ったのです。

ではなぜ、IOCは当初の立場から一転し発言を問題視するようになったのでしょうか。また会長辞任という事態の深刻化を防ぐことはできなかったのでしょうか。ネット上の論調を調査し検証を行いました(※2)。

投稿数の推移や論調の変化を見ると大きく3つの要素が確認されました。1つ目が問題発言と記者会見に対するものです。問題の発言に対して、翌日の記者会見実施というスピード対応はであったものの、内容に問題があり炎上が加速したのです。
(一次炎上)2つ目が記者会見後の事態の深刻化です。海外を中心に抗議の声が相次ぎ、また国内でもアスリートや著名人の批判のコメントが寄せられたのです(※3)。
(二次炎上)3つ目がスポンサー企業の対応です。スポンサー企業や五輪関係者からも批判的なコメントが相次ぎました(※4)。
(三次炎上)これらのスポンサー企業の中には、過去にジェンダー問題を経験している企業が確認されています(※5)。
また多くの企業では「人権指針」などを独自に規定していました(※6)。

このようにマスメディアだけでなく、著名人や企業・団体が行う情報発信が一定の影響力を持つようになっています。マスメディアが報道し、その後著名人や企業が情報発信することで、炎上が加速し、事態が深刻化する傾向が確認されているのです。一方で一次炎上の時点で適切な対応を行っていれば、炎上の拡大を防げた可能性もあるのです。

また本件に関しては、社会的な問題に対してスポンサー企業がコメントを求められる事象となっています。企業自身に否があるような不祥事や炎上ではなくても、コメントをしないことで問題を容認しているかのような印象を与えるリスクがあるのです。
そのためリアルタイムに世論を把握し、適切な広報活動を求められるケースが今後増加すると予想されます。また企業として間接的に炎上に巻き込まれないように、平時から企業の立場や考え方を適切に発信していくことが求められているのです。

※1 https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2021-02-09/QO9J0XT0G1L901
※2 調査対象:「森会長」に関するTwitter投稿、各種メディア記事
検索キーワード:「森 AND (会長 OR 善朗 OR オリンピック)」
調査期間:1月27日〜2月28日
調査件数:3,641,876件(Twitter)、15,229件(各種メディア記事総数)
※3 https://twitter.com/GermanyinJapan/status/1357539445004668931
https://twitter.com/daijapan/status/1358617668253716480
※4 https://mainichi.jp/articles/20210212/k00/00m/020/292000c
https://www.asahi.com/articles/ASP285WQPP25UTIL06S.html
※5 http://news.bbc.co.uk/2/hi/business/4967602.stm
※6 https://www.hd.eneos.co.jp/csr/social/rights.html

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