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「赤いきつね」アニメCMの炎上騒動の振り返り

公開日:2025.04.11

ジェンダー・フェミニズムの話題はセンシティブで、ネット上でも激しく対立することがあります。企業が巻き込まれた際の注意点と、騒動事例から学ぶべき教訓を解説します。

一部のネットユーザーが「性的表現」と批判

2025年2月6日、食品メーカー大手の東洋水産が、看板商品として知られるカップ麺「赤いきつね」のWeb限定アニメCMを公開しました。

同社のブランドであるマルちゃんの公式YouTubeやXなどの媒体で公開されたCMは、若い女性が薄暗い自室でテレビの恋愛ドラマを見て感動するシーンから始まります。「赤いきつね」をすする女性の頬は赤らみ、その目は涙ぐんでいました。

翌7日には、男性バージョンのアニメCMも公開され、残業中の若いサラリーマンがデスクで仕事をしながら「緑のたぬき」を食べる姿が描かれました。

当初、これらのCMは話題になっていませんでした。しかし、公開から10日後の2月16日になって、SNS上では「きっしょ!女性を赤面させるなら男側もちゃんと赤面させろや」「商品化された女性の『私生活をのぞき見』しているような視点を感じる」といった批判的なコメントが噴出しました。

擁護の声が続出も「生成AI」「非実在型炎上」の指摘で混乱

こうした指摘に対し、SNS上では「性的な表現?どこが?」「エロ要素なんてないでしょ?」などと異を唱える投稿も相次ぎました。シエンプレが調査した意見の割合は、ポジティブが72.3%、ネガティブが27.7% で、CMを擁護する声が目立ちました。

ところが、一部では「CMに生成AIを用いたのではないか?」 という疑問や、「絶対に生成AIだ!」と批判するコメントが上がりました。制作会社側は否定のリリースを出し、虚偽の拡散や関係者への誹謗中傷を止めるよう呼びかけましたが、アニメーションムービーにおいては生成AI関連の批判がつきものになっている可能性があります。

また、本件については一部メディアが「非実在型炎上」と報じ、新たな混乱も広がりました。非実在型炎上は、メディアなどが記事や広告のビュー稼ぎを目的とし、実際には炎上していない事象について、いかにも炎上しているかのようなタイトルの記事を発信することを指します。

しかし、東京大学大学院の鳥海不二夫教授は、メディアが炎上と報じ始めた前日の2月16日の段階で、本件に関する投稿がリポストを含めて約1万5000件存在していたことを突き止めました。鳥海教授は、「小規模な炎上ではあっても非実在型炎上ではない」との結論を導き出しています。

東洋水産は騒動に言及せず

一部では、「赤いきつね」の不買運動を呼びかける声も上がった「赤いきつね」騒動。しかし、東洋水産はCMを削除せず、騒動に関するコメントも発表していません。公式Xの更新も平常通りで、2月末に30万フォロワーの達成が間近となったタイミングでは、「28万フォロワーを突破しそうな火曜日の夕方です」などと投稿しています。

事実、フォロワー数は激増し、「赤いきつね」も売り切れが続出しました。炎上前の2月14日に8,521円だった同社の株価は、2月19日には9,302円に上昇したのです。

30万フォロワー達成に向けたタイミングでは、タニタ、サッポロビール、フジッコなどの有名企業が東洋水産のアカウントをフォローしました。これらの企業への不買運動を叫ぶネットユーザーも現れましたが、この動きにも「やりすぎだ」という声が多く上がりました。

東洋水産が沈黙を守っているのは、同社のインスタントラーメン「マルちゃん正麺」の公式Twitterアカウントで2020年に実施した、4コマ漫画を使ったプロモーションの騒動を乗り切った経験に基づくと考えられます。

漫画では、仕事から帰宅した母親が皿洗いをする最後の一コマが「女性軽視」などと捉えられ、一部で批判的な投稿が行われました。

一方で「独自の解釈で変にいきり立って噛み付いている人に対処する必要はない」「これに反応するくらい日々つらいお母さんが多いと思うと悲しい」など、東洋水産を擁護する投稿も多数確認されました。

東洋水産は、批判的な少数意見が本格的に拡散する前に漫画の連載を一時休止し、その後の論調を分析した上で再開しました。さまざまな立場の意見が衝突した「赤いきつね」騒動についても、常に情勢を見極めながら静観していると推察されます。

複雑化するネット世論とジェンダー論争

今回のCMは、女性が露出度の高い服装をするなどというような、あからさまな性的表現はありませんでした。それにもかかわらず、一部のネットユーザーが「性的表現」と指摘したのは、女性の頬の赤らみや口元のアップ、髪を耳元に上げる仕草などの演出が不快感を与えたからだと言えます。

ただし、本CMを「性的」と問題視した声は少数派で、問題提起は多くの異論と反感を呼びました。炎上関連の事象は、マイノリティの意見で批判が高まり、マジョリティの声で収束していく傾向があります。そのため、少数の抗議は「無視されるべきである」という考え方が、社会では最適解とされつつあります。

今回のアニメ表現をめぐる両者の意見は現在も交わっておらず、両者の分断と溝の深さが露呈しています。ジェンダー論争が過熱した過去の同様事例に比べると、批判派に賛同する層も多く見られました。今回の騒動は、単なる「言いがかり炎上」とまでは言えず、表現がひとつでも間違っていたら大炎上していたかもしれません。

また、収束後も火種がくすぶり続けてしまうと多方面に波及し、想定外のリスクが顕在化する恐れがあります。企業としては、男性版と女性版で内容が異なるCMをネットユーザーがどう受け止め、どんな声を上げたのかを、しっかりと把握しておくべきでしょう。

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「赤いきつね」アニメCMの炎上騒動に学ぶ企業のリスクマネジメント

著者:前薗 利大 頬を赤らめながら麺をすする女性を描く 食品メーカー大手・東洋水産が公開したカップ麺「赤いきつね」のWe...

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