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改めて見直したい、炎上から沈静化までの対応内容と対応スピード(デジタル・クライシス白書-2022年6月度-)【第87回ウェビナーレポート】

公開日:2022.06.29 最終更新日:2023.06.20

公道やキャンプ場の迷惑・違法行為、SNSで続々と告発

桑江:中古車販売A社の展示車両とみられる車両が、前後のナンバープレートを装着せずに公道を走っていたという複数の目撃情報がツイートされ、物議を醸しました。
A社はそれまでも、強引な営業活動などさまざまな問題がTwitter上で多数告発されています。
このような状況で新たな不適切行為が発覚した場合、過去の問題が掘り起こされ、まとめられてしまうかもしれません。
自社に関するどのようなネガティブな投稿があるかを日常的にウォッチし、デマであればきちんと訂正しておくことが必要です。

生活用品メーカーB社は6月7日、グループ会社の従業員による道路交通法違反があったとして謝罪しました。
歩行者が渡ろうとしていた横断歩道の手前で一時停止していた車両をB社の社用車が追い越した動画が拡散されたのを受けた対応で、その日のうちにお詫び文をリリースしたのは賢明だったと言えるでしょう。
しかし、動画を目にした人が多数いた中で、事実関係の説明について不足と誤認があるとの批判を浴びてしまいました。
リリースを出す際、問題の状況についてどこまで詳細に説明するべきかを判断する際は、第三者がどの程度の情報を把握しているかを考慮しなければなりません。
動画などの確固たる証拠とリリースの内容に差異があれば、「おかしい」と指摘を受けてしまうのは当然ことです。

公共の場での傍若無人な振る舞いに関しては、電気設備工事などを手掛けるC社の労働組合による炎上事案も発生しています。
キャンプ場の有料スペースを利用していた一般客が、乱入してきたC社の労組関係者に道具を持ち出され、食料を奪われそうになったという被害をTwitter上で訴えました。
被害者はその後、C社への連絡を通して労組側に苦情を伝えたのですが、誠意を感じられなかった対応の一部始終をTwitter上で再び公開したのです。
このようなやり取り、交渉がSNSで晒されたケースは、これが初めてではありません。
企業としては、ダイレクトメッセージ(DM)などの受け答えも晒される可能性があるということを念頭に置くべきでしょう。

クレカ情報の漏洩、疑い発覚から半年間公表せず

アニメ作品などのコラボカフェなどを運営するD社は6月7日、自社のECサイト利用者のクレジットカード情報7,645件が漏洩した可能性があると明らかにしました。
一方、D社が情報漏洩の疑いを把握したのは半年間も前の2021年末で、2022年2月末には第三者機関による調査も完了しています。
漏洩した可能性があるのはクレジットカードの名義人やカード番号、セキュリティコードなど不正利用に直結しかねない情報です。このため、Twitter上では「あまりにも公表が遅い」との批判が上がりました。
公表が遅れたことについて、D社はリリース文の中で「不確定な情報の公開はいたずらに混乱を招く」と弁明しましたが、当事者への個別対応もしていなかったことが不誠実に見えてしまった要因と言えます。
不確定の情報を表に出せないということは少なからずあると思いますが、当事者への個別対応は別という観点で、少しでも迷惑が掛からないようにすることが重要です。

古くて視野が狭い価値観に潜むリスク

ここからは、旧態依然の価値観がもたらしたハラスメント関連の事案です。
小売りチェーンのE社は、公式Twitterに「ゴリラゲイ雨」という言葉を使った文章を投稿。数時間後には批判が殺到してしまいました。
「ゴリラゲイ雨」は「ゲリラ豪雨」の言い間違いから発生した言葉とされ、ネット上では2012年頃からよく使われるようになったと言われています。
しかし、時代と共に「ゲイ」という言葉の意味、重みが変わってきた中で、「差別的」という批判に至ったわけです。
このように、過去に問題がなかったコンテンツも時代の変化に伴い不適切と受け止められてしまう事態は十分起こり得ます。
情報と共に、価値観もアップデートしなければなりません。
今回のツイートについて、E社は「不快に受け止められた方に謹んでお詫び申し上げます」と謝罪して削除しました。
ただ、いわゆる「ご不快構文」に対しては「差別発言は『不快』とか『不快でない』とかではなくやってはいけない」「多くの人が怒っているのは『不快』だからではありません」といった反発もありました。
安易に「ご不快構文」を用いて批判されるケースは多いので、リスクがあることを認識しなければなりません。

あるテレビ番組では、出演したマナー講師が女性スタッフに厳しい言葉でマナー違反の行為を指摘。女性スタッフが耐え切れずに涙を流したことから、ネット上では「パワハラではないか」といった批判が相次ぎました。
このマナー講師は、過去に放送された別のテレビ番組でも芸人に罵声を浴びせる様子が批判されていたため、その状況を把握できていたとしたら何らかの配慮が必要だったでしょう。
テレビ番組の演出に関しては、今回の事案と同様の批判を集めるケースが相次いでいます。スポンサーとしての見解や対応をただされることもあるので、番組のリスクなどには注意を払う必要がありそうです。

また、前閣僚のF氏は、自身のホームページに「世界各国美人図鑑」と題して掲載していた女性らの写真を削除しました。
これらはF氏らが国内外で撮影したものですが、女性側に許可を取らずに撮影、掲載したカットもあったといいます。
もちろん、今の時代においてルッキズムやジェンダー・ハラスメントを助長していると受け取られかねないコンテンツは不適切ですし、無断での写真撮影なども認められません。
しかし、ここで改めて考えなければならないのは「世界各国美人図鑑」は5年も前に更新を停止していたという点です。
F氏自身も、そのような写真を掲載していたこと自体を忘れていた可能性があります。
過去に発信した内容が後になって発見され、最新の社会規範に適合しなければ、炎上・批判に晒されてしまうことがあるので注意しましょう。

次はハラスメントではありませんが、国家の歴史観に潜むリスクが顕在化した事案です。
人気スマホゲームのキャラクターの衣装デザインが不適切だったとして、韓国の配信会社が謝罪と共に使用の見送りを発表しました。
ゲームを展開する日本企業が「レトロ」をテーマに公募した衣装デザインは国内では好評でしたが、韓国では「大正ロマン」を想起させると反発が拡大。現地メディアは「軍国主義を称賛することと何ら変わりはないという強い世論がある」と伝えました。
それぞれの国・地域や文化圏にはタブーとされたり、不快に思われたりする事象があります。
グローバルな発信・配信を想定する場合、そのコンテンツに対する現地の価値観を考慮しなければ批判を招く可能性があることを認識しておかなければなりません。

「上から目線」の非常識な発信に注意

さて、日本の金融政策のトップであるG氏は「家計の値上げ許容度も高まっている」という自身の発言の撤回を迫られました。
コロナ禍の中では「持てる者」と「持たざる者」などの間で分断が起きていて、上から目線で少しでもイラっとさせてしまうとこのような状況に陥ります。
企業の発信も上から目線と見られがちなので、十分に気を付けなければなりません。

若手女性タレントのH氏は、一緒にいた友人の歩きたばこを叱責した男性を怒り返したエピソードを語り、「逆ギレだ」と物議を醸しました。
企業がこのような発信をすることはないと思いますが、「マナーやルールを守らない」と見られているタレントをCMなどに起用する場合は注意が必要です。
今回もH氏をメインで起用している企業があったとしたら、批判やバッシングを受けていただろうと思います。

Googleビジネスプロフィールの管理徹底を

動画投稿者のI氏が、動画サイトで人気のジャンルの商標権を取得した事案もネット上を騒がせました。
結果的にI氏が権利を放棄するに至った一連の対応では、I氏が所属するライバーコミュニティと動画サイトを運営する会社の毅然とした対応がかなり評価されたと言えるでしょう。
一方、I氏の商標権取得を担当した特許事務所には、GoogleビジネスプロフィールやSNSアカウントへの誹謗中傷が相次いでいます。
このように、何らかの問題を起こした企業をめぐっては、Googleマップの評価・コメントが荒れることが増えているのが現状です。
企業としてはGoogleビジネスプロフィールに登録されている自社の地点はしっかりとオーナー登録をして、何かあればすぐに管理できる体制を整えておかなければなりません。

謝罪時の釈明は「言い訳」と受け取られかねない

最後は、ロックバンドJの結成30周年記念ライブの座席説明に関する事案です。
ライブの数日前に座席を後方に広げる形で変更したのですが、アリーナから1階スタンドに追いやられる人も出て、SNSでは苦情が続出しました。
事務局は謝罪文を公表したのですが、お詫びの言葉より先に「『ステージや座席レイアウトは予告なく変更になる場合』があることをあらかじめ告知させていただいておりましたが…」と釈明をしたため、「謝罪になっていない」と新たな批判を招いてしまったのも事実です。
炎上の当事者になったときは「ただし書きをしてあった」と言いたくなるかもしせませんが、「言い訳をしている」と受け取られないかどうか、よく見極める必要があるでしょう。

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