ロシアのウクライナ侵攻におけるフェイクニュースの現状【第79回ウェビナーレポート】
- 公開日:2022.03.16 最終更新日:2023.06.20
※本記事は2022年3月9日正午現在の情報に基づいて作成しています。
ウクライナへの経済的支援を表明する企業が続出
桑江:ロシアのウクライナ侵攻について、世界中からロシアへの批判の声が上がっているのは皆さんもご存知の通りです。国内外の各企業がどういった対応をしているのかをまとめてみました。
国内企業で先んじて具体的な人道支援を申し出たのは、ディスカウント店「ドン・キホーテ」を運営するパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(HD)です。軍事侵攻から逃れたウクライナ難民100世帯を受け入れると発表しました。
経済支援や店舗での雇用などを含めたもので、SNS上では難民が来ることに対する不安の声も一部に見られましたが、称賛する声が多数寄せられています。
また、ファッション通販サイト「ZOZOTOWN」を運営するZOZOは、ウクライナを支援するチャリティーTシャツの予約受付を始めたと発表しました。
売り上げは全額寄付するということで、SNS上ではTシャツの画像を添えた投稿をして購入を勧める人も続出しています。
そして、不動産総合サービスのAPAMANグループは、停戦後の住宅などの復興支援やアパマンショップ店舗での反戦ポスター設置を発表しました。SNS上の大きな反応は確認されていませんが、一部では好意的に取り上げられています。
海外では民泊仲介大手の米Airbnbが、ウクライナからの難民に対して10万人分の住居を一時的に無償提供すると発表しています。
さらに、ウクライナのAirbnbを予約だけして宿泊せず、現地のホストに宿泊料を受け取ってもらうという形で支援する動きも盛り上がっています。
工場の操業停止や事業撤退、サービス制限も
さらに目立つのは、ロシアでの経済活動から手を引くという判断です。トヨタ自動車はロシア工場の操業を停止し、SNS上では「仕方がない」と賛同する声が広がっています。
米石油最大手エクソンモービルも、同社にとってロシアで最後のプロジェクトとなっていた石油・ガス開発事業「サハリン1」から撤退することを発表しました。
それ以外にも、石油メジャーがロシア事業を完全に取り止める動きが相次いでいます。
一方、米ウォルト・ディズニーはロシアでの新作映画の公開を中止すると明らかにしましたが、ロシアの子どもたちや一般市民に同情する声が目立ちました。
米ネットフリックスは、ロシア国内の規制で義務付けられている国営放送の配信を同国のサービスに追加する計画はないと表明。ロシアでのサービスを停止することも発表しました。
スウェーデンのアパレル大手H&Mも、ロシアでの販売の一時停止を発表するなど、国内外の企業がさまざまな形で現地でのサービス制限などを打ち出しています。
金融系の締め付けも活発化しており、米のクレジットカード大手であるビザとマスターカードはロシアでの業務を停止すると相次いで発表しました。
ジェーシービーもロシアでのカード取引を停止すると発表していますし、米PayPalなども追随する動きです。
IT分野のロシア対抗策も活発化
IT関連の企業がさまざまなデジタル情報などを駆使したり、ロシア市場での商品・サービス提供を止めたりしている流れにも注目するべきでしょう。
米Appleはロシアでの製品販売や「Apple Pay」の提供を停止しました。こちらについては称賛の声というより、巨大IT企業の影響力の大きさについての言及が多かった多かったと言えます。
また、ウクライナでは米Googleが「Google検索」と「Googleマップ」の検索結果に緊急時情報を表示する「SOSアラート」を追加しました。
同社はウクライナの方々のアカウントのセキュリティー保護の自動的な強化にも乗り出しています。
動かざる企業への批判や同調圧力が表面化
一方、米マクドナルドに対しては「ロシア国内での営業を停止するべき」という声が広がりました。Twitter上ではマクドナルド製品のボイコットを呼びかける声が拡散し、「#BoycottMcDnalds(ボイコットマクドナルド)」というハッシュタグがトレンド入りしたほどです。
その後、マクドナルドはロシア国内の店舗を一時的に閉鎖すると発表したのですが、これはTwitterなどの論調が影響したのかもしれません。
このように、ロシアでのサービスを継続する企業に対しての批判、同調圧力が世界で広がっているのも事実です。
世界のプロサッカーリーグでもロシア企業とのスポンサー契約を打ち切るクラブが続出した中、財政難に喘ぐスペインの名門クラブFCバルセロナ(バルサ)はロシア企業との巨額契約を継続し、批判を招いています。
マクドナルドと同様、今後の対応が変わる可能性もありますが、現段階では無言を貫いているため、他クラブと比べた印象が非常に悪くなってしまいました。
バルサが財政難に陥っていることは知りつつも、「バルサは地に堕ちた」と辛辣な意見を口にするサッカーファンも数多くいます。
このように、ロシアをめぐる状況においては企業がどのような態度を示すのかが非常に注目を集めていて、場合によっては批判や同調圧力に晒される事態が起こっています。
日本国内はそこまでの状況には至っていないものの、今後はそうしたことが起こらないとも限りません。グローバル展開をされていたり、現地に支社や工場などのルートがあったりする場合は、今後の対応に注意を払う必要があるでしょう。