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メディア演出での炎上からジェンダー問題による発売中止まで(デジタル・クライシス白書-2022年1月度-)【第76回ウェビナーレポート】

公開日:2022.02.02 最終更新日:2023.06.21

失言、誤爆、ルール無視? SNSの不適切投稿に批判

桑江:大阪市内の精神科クリニックで2021年12月に発生した放火事件に絡み、AV監督のA氏が精神科に通う患者を揶揄するツイートを投稿、ファンの間からも「擁護できない」との声が多数上がりました。ただし、本人は謝罪などをせず、持論を発信し続けています。
企業のSNS公式アカウントでこのような投稿をすることはほぼないと思いますが、私たちがリリースした「デジタル・クライシス白書2022」によると、2021年は一般の人の炎上がかなり増えたことが分かりました。
自社の社員が不謹慎な投稿をして大炎上してしまった場合、勤務先が特定されて飛び火する可能性があります。そのため、社員の私的なSNS利用についても十分に気を付けなければなりません。

続いての事例も、SNS上での失言です。徳島県の放送事業者B社のTwitter公式アカウントに、特定の政党の代表を誹謗中傷する書き込みが投稿されました。
50代の社員が個人アカウントと勘違いをしてツイートしたのが原因で、いわゆる「誤爆」に当たります。B社は個人の端末で公式アカウントに投稿できるようになっていたことと、書き込まれた内容のチェックがずさんだったことを謝罪しました。
公式アカウントの運用で一番やってはいけないのは、プライベート端末からの投稿を許すことです。「いいね」の表示やリツイートなど、ボタン1つでできてしまう行為ですら、誤爆のリスクはあります。
こうしたことを防ぐには、社員がプライベートで使っているパソコンやスマートフォンなどを公式アカウントに紐付けさせないよう徹底しなければなりません。
誤爆による企業のダメージは、非常に大きいものになります。今回の事例でも、公式アカウントの運用者に対するルールを徹底するべき理由が改めて浮き彫りになりました。
一方で、例え個人のアカウントだとしても、誹謗中傷の書き込みをしていいのかという問題があります。相手に身元を特定されたり訴えられたりすれば勤務先に悪影響が及ぶこともあるので、プライベートでSNSを利用する社員にも注意を促す必要があるでしょう。

同じくSNSの発信をめぐって騒動になったのは、女性参院議員のC氏です。自身のTwitterで、「箱根駅伝」の往路を力走する母校の選手を応援したのですが、沿道で拍手を送る観客に交じって撮影した写真が物議を醸しました。
今大会でも主催者の関東学生陸上競技連盟が呼び掛けていたのは、新型コロナウイルスの感染拡大防止を目的としたコース沿いでの応援自粛です。このため、C氏の投稿は「ルールを守っていない」との批判を招いてしまいました。
企業のイベントなどを発信する際も「ルールを守っていないのではないか?」と思われてしまいそうな言動はできるだけ排除すべきですし、写真を撮るときもルールに合致しているかどうかをしっかり確認する必要があります。

テレビ出演で炎上、飛び火…過激な演出が原因!?

さて、2022年の正月に放送されたテレビのバラエティー番組の事例に移りましょう。コンビニ大手3社の人気商品の味をジャッジする企画で、特定の商品(おにぎり)の試食を拒否した審査員のシェフD氏が炎上しました。
一方、D氏は最終的に試食に応じ、商品の魅力を高めるためのアドバイスも送っていました。つまり、炎上は試食を拒んだ場面だけを切り取られた結果だと言えます。
しかし、ネット上では、D氏のレストランに行ったこともない人がGoogleマップの口コミで最低評価をつける行為が頻発。もともと4.42あった評価が一時は1.3まで下がるほど荒らされ、メニューの画像をおにぎりの写真に差し替えるなど悪質な行為に及ぶ者も現れました。
この店はGoogleマップで表示されなくなりましたが、それがGoogleによる措置だったとしても当事者自身が逃げの手を打ったと勘違いされ、さらに炎上してしまうこともあります。
さらに、一連の騒動ではD氏と同じ苗字のシェフが営む店に対する嫌がらせも発生し、問題となりました。
ここ数年、何らかの騒動があった場合に間違った特定をされてネット上で攻撃されるケースが目立つため、企業としては巻き込まれ型の炎上にも注意を払わなければならないでしょう。
企業広報としては、自社がどんなテーマでテレビに取り上げられ、どのように演出されるのか、危険があるなら放送前にチェックできるかを事前確認し、リスクをコントロールできないなら辞退するという判断も必要になるかと思います。

炎上のスイッチが入るかどうかは「どう受け取られるか」

次は、アプリ開発などを手掛けるE社の炎上事例です。この会社の社長が、大手経済紙を模した偽の新聞広告で自社の社名変更を告知する画像を自身のTwitterに投稿したところ、SNS上では「悪ノリが過ぎる」など倫理観を問題視する意見が続出しました。
何らかのパロディー画像などが投稿されるのは珍しいことではなく、ポジティブな意味でバズったケースも多々あります。
ただ、今回のパロディー画像には、この経済紙の広告費が高すぎると揶揄するようなメッセージが付されていました。
それにも関わらず紙面を模し、広告媒体としての価値にフリーライドしたということが、閲覧者を不快にさせたのだろうと思います。
例えば、メッセージが「日本一の経済紙に、いつか本当の広告を出せるように頑張りたい」という内容だったら、炎上しなかったかもしれません。
つまり、炎上した理由はパロディーという行為自体ではなく、メッセージの内容にあったという気がします。

世界的な炎上事例としては、新型コロナのワクチンを接種していない男子テニス界のスター選手F氏に対し、豪州裁判所が国外退去の裁定を下した件に注目が集まりました。
ワクチン接種の是非が世界中で論争を巻き起こしている中、やり玉に挙げられたとも言える出来事でしたが、このようなトラブルは日本でも十分に起こり得るでしょう。
例えば、企業がイベントや採用面接などの参加条件にワクチン接種を提示した場合、批判されるリスクが生じます。エッセンシャルワーカーではない従業員にワクチン接種を強制するのもネガティブに捉えられがちなので、強制と受け取られかねない表現にも注意を払うべきです。
イベントなどの開催に当たってはどのような取り扱いにするのか、慎重に判断しなければなりません。

人種差別とジェンダーバイアス、センシティブな反応が続出

そして、ドイツの自動車会社G社の事例です。中国のインターネットで公開した広告動画に目の細い女性モデルが登場し、「中国人を侮辱している」との批判が殺到しました。
C社は広告動画の撤回に追い込まれましたが、中国では2021年11月にも、欧州の高級ファッションブランドが上海の美術展で公開したアジア系女性モデルの写真に同様の批判が集まり、撤回されています。
過去に問題となった表現を学ばなければ、同じような騒動を引き起こしてしまう可能性があることから、グローバルに展開されている企業は特に気を付けなければなりません。
地域独特の差別的な仕草、言葉なども存在しますので、そのあたりもしっかりケアしなければならないでしょう。

また、世界的な家具メーカーのH社がツイートしたCM動画が賛否両論を巻き起こしたのは、テレビを見ている父娘に母が食事を運ぶシーンです。
「女性を奴隷のように扱っている」といった意見が上がった一方、そうした批判に「過剰すぎる」と嫌悪感を露わにする声も上がりました。
このように、ジェンダーバイアスを想起させるクリエイティブなどに関しては、細かい表現についてまでセンシティブな反応を招くということが分かります。
企業の関係部署においても、このCM動画などを見ながら意識をすり合わせることができれば、ジェンダーバイアスの基準の共有に役立つでしょう。

国内のジェンダー表現をめぐっては、テレビアニメのキャラクターの「名言」をモチーフにしたバレンタインデー向けのグッズに対し、Twitter上などで批判が上がりました。
問題となったのは「女の敵は女」という言葉で、キャラクターを所有するI社はグッズの発売を中止しましたが、このアニメのファンにとっては番組での「名言」をあしらった魅力的なグッズということになります。
ただし、このキャラクターのことを知らず、言葉尻だけを捉えた人には「今の世の中にそぐわない」とネガティブに受け止められたというわけです。
過去に人気があり、今なお一定のファン層に受け入れられている表現だとしても、刻々と変化する社会規範に照らし合わせてどうなのかということはしっかり考える必要があります。

「怒り」爆発の有名人ツイートに「身勝手」と批判

このほか、タレントしても活動しているロック歌手のJ氏は、空港で飛行機に乗り遅れそうになった際、必要以上にキャビンアテンダントにせかされたという不満をツイート。「自分のことしか考えていない」「身勝手な発言」といった批判を浴び、最終的には自身のブログに直筆の謝罪文を掲載しました。
また、伝説的ロックバンドのドラマーだったK氏も、南太平洋のトンガ沖で発生した海底火山の大規模噴火に伴う津波警報の出し方に「(なぜ津波が来るのか)説明をしろ」と怒りのツイートを投稿し、物議を醸した次第です。
Twitterには自分の感情をそのまま書き込んでしまいやすいので、このような騒動は十分に起こり得ます。
企業のプロモーション活動でタレントやインフルエンサーを起用する場合も、本人のツイートなどを注視しておく必要があるでしょう。

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