レポート:【第5回ウェビナー】ヨッピー直伝「嫌われないことで炎上は防げる」
- 公開日:2020.06.17 最終更新日:2023.06.20
見る人をイラっとさせなければ炎上しない
桑江:炎上対策のチェックリストとしては、「宗教や人種、国籍などを差別していないか」「法に触れていないか」「個人のプライバシーに配慮しているか」「マイノリティーへの配慮はあるか」といった項目をよく使います。
ヨッピー:もちろん、それは正しいのですが、それだけではない気がしますね。
例えば「つまらない投稿を読まされた」「何か文句を言いたい」「説教か、腹が立つな」といったネガティブな感情が先に生まれたから、「この辺を突っ込んでやろう」という心理になるという方が正しいと言えるでしょう。
だから僕は、コンテンツを見た人をイライラさせなければ、そもそも炎上しないのではないかという仮説を立てています。
つまり「面白い」「ためになった」「よく言ってくれた」「かわいい」などポジティブな反応を引き出せれば、リスクはかなり減るということです。
「見て損をした」「時間を無駄にした」「面白くない」とイラっとさせた時点で炎上リスクが跳ね上がります。
桑江:なるほど。
ヨッピー:かなり前のことですが、「音楽の有用性」の研究という名目で、誰もが知る名作アニメの悲劇的なラストシーンの音楽をコミカルな曲に差し替えた動画を公開しました。
1.7万リツイートをされて約100万回も再生されましたが、「著作権法に違反している」などと非難してきた人はゼロでした。
なぜ炎上しなかったかというと、笑ってしまったからですよね。差別やプライバシーなど細かい炎上要因の1つ上のレイヤーに、そのコンテンツを見て笑ったか、ムカついたかが関係するということです。
そのように言う人はあまりいないのですが、むしろそちらの方が大事なのではないかと思っています。
桑江:この動画は、かなり話題になりましたよね。リアルで視聴して、確かに笑ってしまいました。
ヨッピー:広告企画は弱者への配慮不足や男女、宗教、人種、国籍などの差別につながる表現でしょっちゅう炎上しています。見た人をイラっとさせたから、思慮が浅い点を非難してやろうという行動が起こるのでしょう。
もちろん、どれだけ面白くてもだめなものはだめですし、つまらなくても正しいものは正しいので、「イラっとするかどうか」に左右される風潮をよしとしているわけではありません。ただ、現状はそれが大きな炎上要因になり得るということです。
桑江:そうですね。
イキらず謙虚に、自虐ネタも交えて空気感を乾燥させない
ヨッピー:炎上を起こさないため、他人をイラっとさせないように対策をする余地は、まだまだあると思います。
例えば、山火事がなぜ起こるか。たき火の不始末やタバコのポイ捨て、放火などを防ぐため、たき火を禁止したり立て看板を設置したり、見回りを強化したりする対策は正しいのですが、もっと大きい山火事の発生因子は空気が乾燥しているかどうか。炎上も同じで、空気感がカラカラに乾いていると、すぐに燃えます。
桑江:「湿度」を保つためには、どうすればいいのでしょうか。
ヨッピー:僕が実践しているのは、女性と写真を撮るとき、相手の方にお願いして頭頂部をつかませてもらうこと。例えば、ピースサインなどをして写ると「モテている」と他人の反感を買うだろうと考えたので、そう思われないように中和するというメソッドです。
桑江:調子に乗っていると思われたくないと。
ヨッピー:自分のTwitterなどには、高級料理を食べている場面の写真も載せません。適度にひどい目に合っている様子は投稿する半面、PV数やリツイート数の自慢、著名人と会食したということもあまり言わないようにしています。
要するに、他人をイラっとさせないためには「謙虚であること」「イキらないこと」がとても大事だということですね。
「イキっている」と思われると、本当に炎上しやすくなります。インターネット上でよく炎上していると言われているのは、大体がイキっている人たち。「どれだけ炎上しようが、自分はイキりキャラを貫く」という人は構わないのですが、「炎上したくないけれどイキりたい」というのは矛盾しているので、やめた方がいいですね。
もちろん、企業にとって炎上はマイナスでしかないので、謙虚でいることが大事です。
桑江:その通りですね。
ヨッピー:ただ、ほとんどの企業・個人は、これができていません。イキってはいないものの謙虚とまでは言えないニュートラルな状態であることがほとんどですので、みんなもう少し平均を下げた方がいいでしょう。
自慢を自慢のまま終わらせるとイキっていると思われるので、いわゆる自虐ネタを少し混ぜてつぶやいた方が空気感は湿ってきます。
さらに、謙虚な投稿を1回したから炎上リスクが減るというわけではなく、ずっと積み重ねることができるかどうかが大切です。
「売れています!」「年商が3倍になった!」など強さだけを押すのではなく、「年商は増えたのに賃金が変わらない」というような弱さをアピールする方が嫌われづらくなります。
桑江:謙虚に徹することが大切なのですね。
ポジティブな反応を得られるかを考えてから投稿を
ヨッピー:イラっとさせないためには、自分のつぶやきなどが「面白かった」「役に立った」というポジティブな反応を得られるかどうかを考えてから投稿する必要があります。
また、投稿内容のクオリティーが保たれていて、真っ当なビジネス、コンテンツ運用であることも重要です。これらが整っていなければ、どこかで燃えてしまいます。
「その仕事は何のためにしているのか」と聞かれてもしっかり答えられるように、法律やモラルに照らしても胸を張れるようにしておかなければなりません。嘘をついても必ずばれます。
もちろん、全部きちんとやっていても炎上するときは炎上しますが、空気感がカラカラに乾燥していなければ挽回は可能です。炎上は正しく恐れましょう。
「チャーミングさ」はつくり出せる 「中の人」の人選も肝心
桑江:嫌われないようにできるかどうかは「チャーミングさ」の有無でも変わってくるかと思いますが、それは意図的につくり出せるものなのでしょうか。
ヨッピー:キャラクターはつくれますよ。なるべくイキらないといったことの積み重ねで、何となくかわいげが出てきますので。
桑江:確かに、自虐ネタが1つ入るだけでもイメージは変わってきますよね。空気感が乾き切ってしまった企業や個人が潤いを取り戻すには、どうしたらいいでしょうか。
ヨッピー:消費者ときちんと向き合って真っ当なビジネスをしていれば、一度燃えてもそうそう乾き切ることはないでしょう。もし、完全に乾いていて、ひどく叩かれているなら、ビジネス自体を抜本的にやり直さなければだめだと思いますね。
桑江:SNSによる企業活動の認知は重要ですが、ありきたりの内容では注目されず、ふざけた投稿は炎上を呼んでしまいます。その中間を狙ったギリギリセーフのラインを探る上では、センスも絡んでくる気もするのですが。
ヨッピー:「これがセーフで、これがアウト」という理由を言語化するのは難しいのですが、炎上を防ぐにはSNSに詳しい社員を探して意見を聞くのが一番いいですね。
SNSをよく知らない人が企業アカウントの「中の人」に選ばれていることがありますが、運用としては本当に間違っていると思います。また、「中の人」は20代の若い社員だったとしても、その上で決裁をしているのが40代の部長などだとだめですよね。
SNSに精通していて、「この投稿はイラっとしますよ」と言い切れる人たちをインターネットやSNSのプロモーション周りにちゃんと配置していれば、中間を狙ったギリギリのラインが見えてくると思います。
桑江:SNSの風潮や流行、空気感を把握するためには、普段から面白がってSNSを使い、感覚を磨いている人をアサインすることが必要ですね。
外部からだとイキっているように見えるアカウントなのに炎上しないという場合、その人やその分野の認知度が低い、あるいは教祖的にあがめられているという以外の要因は考えられますか。
ヨッピー:山火事も乾いているだけで自然に発火するのではなく、火元が加わって初めて燃えます。それがまだ起こっていないだけという可能性が高いと思いますね。イキっていると感じる企業や人物は、いずれ何かをしでかすでしょう。
桑江:イキることのデメリットはお話しいただいた通りかと思いますが、メリットもあるのでしょうか。
ヨッピー:イキっていても正しいことを言う人に従ってついていく人がいるので、そういう人たちの支持を得られるメリットはあります。ただし、イキっている分だけ周りの空気感が乾燥するので、本当に気を付けなければなりませんね。