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新型コロナ影響下におけるSNSの動き~炎上と称賛を分けるもの~【第2回ウェビナーレポート】

公開日:2020.05.27 最終更新日:2023.06.20

長引く自粛でメンタルがネガティブに

桑江:新型コロナウイルスの感染が広がる中では、全体的にイライラして疲弊しているようなSNS投稿が多く見られます。「こんなことで批判されるの?」と驚くような事例が実際に起こっていて、各企業は正しい対応策を導き出すのに苦労しているところです。
何を発信するかだけでなく、誰が発信するかも炎上の要素となっています。
例えば、有名人による「外出を避けて家にいましょう」というメッセージですら、外で働かざるを得ない方々の反発を招いてしまう。経済的打撃を受けている方々は、企業のそうしたメッセージを社会的強者の発信とみなし、「コロナ禍の便乗商法だ」と捉えることさえあります。
こうした現象が、社会の対立・分断を助長していると言えるかもしれません。

芳賀:ユニークだと思うのが、新型コロナとの戦いは「人類とウイルスの第2次世界大戦」という視点です。
私も含めて日本人の多くは戦争状態を体験したことがありません。リモートワークをポジティブに捉えている方もいらっしゃいますが、社会全体としては精神的に大きなプレッシャーがかかっている状況です。
「自粛」という規制下に置かれていることで、メンタルヘルスがかなり厳しくなっていると思います。だんだん尋常ではない社会情勢になっていて、ちょっとしたことに対してすごくネガティブになっているという印象です。
東日本大震災の後は、世の中に「みんなで頑張ろう」という一体感があった気がしますが、今は一体感では前に進めないのではないでしょうか。

桑江:Twitterなどでも、通常の企業活動や何気ない個人の言動を批判する「不謹慎狩り」「自粛警察」のキーワードを含む投稿が横行しています。
それらの多くは「不謹慎狩り(自粛警察)は行き過ぎている」と糾弾する声でしたが、ゴールデンウイークに突入したときも投稿件数が増えました。
「不謹慎狩り」は東日本大震災、熊本地震でも話題になった言葉かと思います。当時と比較して、何か感じることなどはありますか。

芳賀:これまで経験したことのない状況に突入しているだけでなく、収束のゴールが見えていないというのが大きいと思います。ウイルスとの戦いに完勝できるわけはなく、人々のメンタルは追い込まれていると言えるでしょう。
そうした中、例えば「トイレットペーパーが売り切れている」というテレビ報道があると、その映像を見た人々は「自分も並ばなくてはならない」と思ってしまいがちになります。
同じように、自粛をしていない人たちの映像は「自分が(不謹慎狩り、自粛警察を)やらなければ誰がやるのか」という気持ちをエスカレートさせている面もある気がします。

桑江:そうですね。

芳賀:東日本大震災では津波による甚大な被害があったので、企業は出演者が海辺を走るようなシーンがある広告、CMを一切自粛しました。
コロナ禍の中では「3蜜状態」のCMもかなり流れていますが、それらが今後どういう評価を得ていくのか。「外に出て発散したい」という世の中のニーズををうまく取り込めるのかというのは注目すべき点だと思いますね。

どういう立場で、どんな言い方をするかが重要

桑江:あるアーティストは「一致団結してこの危機を乗り越えましょう」とツイートしたところ「不要な外出ができない人がどれだけいるか知らないのだろう」「音楽関係者の仕事が次々になくなっている中、情けなくて涙が出る」といった批判を集めてしまい、謝罪に追い込まれました。
このツイートの内容に問題があるとは思いませんでしたが、ポイントは「どういう立場から話すのか」ということだったと思います。メッセージの出し方次第では、内容に問題がなくても穿った見られ方をしてしまい、批判につながるということですね。

芳賀:コロナ禍では生活困窮者をはじめ、身障者、高齢者、子どもなどの社会的弱者が一番つらいと思いますが、企業にも個人にもそうしたステークホルダーはたくさんいるということを意識しなければいけません。
「着眼大局、着手小局」という言葉があるように、大局のメッセージはすごく重要ですが、それだけでは突っ込まれてしまうでしょう。「自分でこういうことを始めた」「こういうことを1つずつ続けていく」といった身の回りの行動が伴い、しっかり見えてこそ共感されるのだと思います。

桑江:メッセージの言い方も、炎上と称賛の分かれ道になります。中国地方のある県知事は、記者会見で「いかに歓迎していないか、警戒しているか、主に他県の皆さんに対して検温し、『まずい所に来てしまったな』と後悔していただくようなことになればいい」と発言して炎上、メディアの反応も非常にネガティブでした。
対照的な呼び掛けで絶賛されたのは、隣県が公式Facebookなどに投稿したメッセージ。「早く会いたいけん、今は帰らんでいいけんね」といった方言で帰省自粛を呼びかけ、「地元が好きになった」「心に響く」などの好意的な反響が広がりました。
このように、同じようなメッセージでも伝え方によって大きな違いが出るということですね。

芳賀:パブリック・リレーションズという言葉があるように、何らかのメッセージを発信する場合は過去に起こった数々の炎上パターンを勉強し、求められるボールの出し方をしっかり研究した方がいいでしょう。
炎上したメッセージのゴールが「コロナ禍が収まるまで県に来てほしくない」ということで、そのために「自分が泥を被ってでも」ということだったならすごいと感じますが、県に来てくれていた方々、好きでいてくれた方々も県民の仲間だという気持ちがあれば、「来てくれるな」という言葉にはならなかっただろうと思いますね。

従来の常識が変わる中で「一丸」は通用しない

桑江:ここまでの話を総括すると、コロナ禍では東日本大震災時のように「みんな一丸となって」というのが通用しません。何を言うかだけでなく、誰が言うかも炎上のポイントになりますね。
また、同じ内容を伝えるにも「言い方」で炎上したり称賛されたりするため注意が必要で、強い口調の言葉はメディアに切り取られて独り歩きする可能性が高く炎上しやすいと言えます。
炎上を避ける上で重要なのは、とにかく正直に、誠実に、迅速にということ。これらを意識しながら対応していくことが必要になります。

芳賀:ウイルス関連も含めて過去にどんなことが起こり、マスコミでどう報道されたかを、多くの専門家から素直に学ぶことが必要です。
「ニューノーマル」という言葉もありますが、これまでの常識がどんどん変わっていくタイミングだと思います。
今までの常識が通用しなくなってくるから一丸になることができないわけですが、想像力を持ちながらこのタイミングを常にウォッチすることが必要です。
また、情報収集はイコール現場力。現場で何が起こっているのかを見ていくことが大事でしょう。

桑江:この発言がどんな反応を得るのかというのも日々変わってくるので、AIを駆使しても炎上するかどうかを予測するのは難しくなっています。
事後にはなりますが、「こういう反応があった」というパターンをしっかり学んでいくことしかできないというのが正直なところですね。

経済レベルが戻るのは2022年か?

芳賀:新型コロナに対するワクチンや薬品の開発は進んでいますが、決して万能ではありません。
SARSやインフルエンザのように収まることは収まるでしょうが、スペインインフルエンザの流行時も「ネズミを焼いて粉末にしたものを飲めば大丈夫だ」といったデマが横行したそうです。

桑江:新型コロナに関しても、いろいろなデマがSNSなどに出回っていますね。

芳賀:悪意があって意図的なのがデマ。それを乗り越えるためには、想像力と現場力を持ち、不安に寄り添う、深く考えるという企業、個人のスタンスが大事だと思います。
例えば、学校が休校になるとなったときに「親はどうするのか?」「保障はどうするのか?」「勉強の仕方はどうするのか?」という想像ができなければなりませんし、「どうすればオンライン授業をできるのか」という現場力を持たなければなりません。
また、「この先どうなるか分からない」という不安に寄り添ってあげることも重要だと思います。
2020年はアゲインスト、まだウイルスと戦っている最中で、これから第2波、第3波もあるでしょう。2021年はWithコロナになり、うまくいけば2022年に経済レベルがマイナスからゼロに戻るでしょう。復興バブルとリバウンドもあるのではないかと思います。

桑江:先ほどのニューノーマルもそうですが、働き方もかなり変わるでしょう。楽しみでもありますが、どうなっていくかをきちんとウォッチしなければなりませんね。

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