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新型コロナウイルスに対する企業の危機管理対応を考える

公開日:2020.04.21 最終更新日:2024.05.08

政府による緊急事態宣言から一週間弱。連日様々なニュースが日本中を駆け巡り、またこの事態においての企業側の対応についても様々な意見が寄せられる状況です。

そのような中で、弊社にも「企業としてどのように対処すべきなのか」という相談を受けることが増えており、またその状況は日々変わっているため、出来るだけリアルタイムで情報共有をしなければという思いが強くなりました。

そこでこれからしばらくの間、新型コロナウイルス関連でのネット上での出来事について、週数回の頻度で簡単ながら考察の上でシェアをする試みをスタートしたいと思います。

もちろん弊社は医療分野の門外漢ですので、新型コロナウイルスについてのニュースの真偽を見定めることは出来ませんが、少なくとも各企業や個人のネット上の行動について、どのような反応があったのか。そして場合によってはどういったリスクにつながったのかについては、日々調査・分析をしておりますので、そうした観点から少しでも皆様の支援が出来ればと考えております。

少しでも対応に困ったり、悩むことがありましたら、お気軽に弊社までご相談ください。

(2020年4月13日付)文責:桑江令

▼より酷くなる「不寛容社会」に、企業はどうすべきか。

安倍首相の緊急事態宣言があった4月7日、フォロワー数約20万人を誇る人気ミュージシャン、スガシカオさんが以下の内容でTwitterに投稿を行った。
(現在は削除済み)

「今一番大切なことは、みんなが一人一人どうすべきかを考えて、一致団結してこの危機を乗り越えることだと思うんだ
批判や怒りや疑いじゃなくてさ、不要な外出を控える、自分や家族を守る、他人を思いやる、医療を守る…それしか新型コロナに勝つ方法はない」

内容だけを見れば何ら違和感は無いと個人的には感じているが、この投稿に多くの批判が集まり、その後に「言葉足らずでした。すみません。」と投稿を削除する事態となった。
寄せられた批判をまとめて見てみると異常さが分かる。

「音楽興味ねえしあんま知らんけどスガシカオ…お前もか。批判やめてみんなで頑張ろうって。お前ら何か貰ってんの??人の生き死にかかってるのに批判すらするなってなんなんだ!」

「この状況で「一致団結」を掲げて批判や怒りや疑いを放棄するなんておそろしすぎる………」

こうした意見が多く寄せられ、それぞれの意見にも多数の「いいね」が集まった。
もちろんその批判に疑問を投げかける擁護派の声も当然多くある。

「政権を批判する際に戦時中の翼賛体制を引き合いに出す連中が、スガシカオの「一致団結してこの危機を乗り越える」「批判や怒りや疑いじゃなくて」という発言に逆上し「アーティストのくせに権力に隷属するのか」と同調圧力を加え謝罪と削除に追い込むというファシズム。これ、叩かれるほどの発言かよ」

「スガシカオさん真っ当なことを言っているのに炎上。
大体文句言っている人「そんなことより」的な事で自分が不安に思っている事を言っている。
不安は当然です。僕も沢山あります。でもこういう皆んなで頑張って行こうって発言に怒りのレスが横行すると、元気付けてくれる発言が出なくなりますよ。」

このように、今や日本のSNS界隈は、どのようなまともな意見、かつ多くのユーザーがまともだと感じている意見だとしても、
何らかの難癖や勝手な決めつけにおいて批判されるリスクが相当に高いということだ。
このような形で糸井重里さんや山下達郎さんも炎上の憂き目に遭っている。

こうした炎上事例は、企業アカウントよりも発信力のある有名人だからこそこれだけ良くも悪くも反応があるが、
実際企業アカウントも同じように目をつけられてしまう可能性は大いにあるのだ。

2011年3月の東日本大震災の時、SNS上では同じように「不謹慎だ!」と様々な意見を一方的に批判する風潮が生まれたが、
それはまだ「何がOKで何がNGか」がまだ分かりやすかった。
そしてその時は「何らかの揚げ足を取られそうな発言はしない」「それが判断できなければ発言自体しない」が正解だった。

しかし今回の事態において、少なくとも日本のSNS界隈は完全に分断されていると感じる。
どのような意見であれ、自身が否定されたと思い込んでしまう層が現れ、ヒステリックな反応をしてしまうのだ。
そしてそれは、2011年を教訓に企業側が何らかの発信をしなかったとしても、
従業員から会社に対しての批判が出るリスクもある。

もちろんこれはこの先が見えない身体的・経済的な未曽有の危機において神経質になっているということは十分理解できるが、
長年SNSの論調を分析してきた我々でさえ、この事態は異常だと感じざるを得ない。

この週末で大きな批判を集めた、星野源「うちで踊ろう」動画への安倍首相の参加も、
残念ながらこの事態、この状況を把握できずに実施したことが要因である。
まずはこのコロナショックを考えるときに、この「超・不寛容社会」をまずは前提として欲しいのだ。

▼企業のリスクとは

今この段階(4/13午前)において、企業としてのリスクは、以下が共通して挙げられる。

A:従業員の中で感染者が出た場合にどう対応するか
・その従業員が症状を自覚したまま勤務していたかどうか
・その従業員の感染において会社に責任があるか
特にBtoCの企業においては、営業への影響を考慮してこの事実を公開すべきか悩むケースもあると思うが、今や事実を伏せることのリスクが圧倒的に高い。
なぜならば、会社が例えその事実を伏せようとしても、従業員の口から必ず漏れるからだ。
今や誰もがSNS上で告発できる時代、かつこのコロナショックにおいては「会社vs従業員」の構図になりがちであり、
まず間違いなく社内から漏れてしまうと考えた方がいい。(実際に従業員の告発で発覚した例もいくつか出ている)
そして運良くその時点でばれなかったとしても、最終的に都道府県側から公表された時に、必ず突っ込まれる事態となる。
そして一度そうなってしまうと、例えデマが混じっていたとしても訂正するのは困難となる。

B:会社内、店舗内などで感染者が出た、感染者が立ち寄ったとデマが出た際にどう対応するか
・しっかりと「事実と異なる」と言い切れる管理体制になっているか
・出回ったデマに対して、企業としてしっかりと発信する手段をもっているか
残念ながらここ一ヶ月の間に弊社クライアントだけで4件もデマに巻き込まれている。
「〇〇の従業員がコロナだったらしい」といった一件の書き込みから、
そのお店に確認の電話や、既に事実と決めつけての嫌がらせの電話が寄せられる事態になっている。
それを企業側の努力で避けるというのはなかなか難しいが、少なくとも2つの方法で善処はできる。

1.こうしたデマが出回らないか、常時ネット上を把握できる体制を作る
2.企業でのコロナ対策の取り組みを事前に公式サイト上で公開することで、少しでも疑われる余地を減らす

特に2については、BtoCの企業においては必須だと言える。
これだけ感染者が日々増加している状況だと、従業員の中から感染者が出ることは想定しなければならないが、
その際に前もって企業としての対策を公開できていたかどうかで、その後のネット上の反応は大きな差が出るのだ。
「事前にこれだけ対策をしていたのに感染者が出たのだからしょうがない」と思って貰えるか、
「感染者が出たのに企業としてどう対策していたんだ!」「感染者が出た後に対策されても」と批判されるか。
もしもまだ会社として何も公開していないのであれば、まずはその準備をして欲しい。

今後において想定されるのは、感染者がより増え、更なる「自粛ムードの高まり」が行き過ぎた批判を生むことだ。
既にリアルな現場において、営業中の店舗への嫌がらせが相次いでいるという声もあるが、ネットなら更に酷くなる可能性が高い。
そして従業員側からの不平・不満や告発も流行することだろう。先週は家電量販店においてそのような動きがあった。
こうした状況の中でどのような企業活動を行っていくのかは、もちろん経営判断となるわけであるが、
その判断において今回説明したようなネット上のリスクを十分考慮し、
その上で採った判断においてのリスクを最小限に抑える努力が必要となるだろう。
もちろんその時にどうリスクについて向き合わなければならないか、少しでも不安があれば、弊社の担当に相談して欲しいと思う。
そしてこうした判断の際に少しでも役立てるよう、今後このようなコラムを定期的に配信していくつもりだ。
(今回は初回ということもありだいぶ長文となったが、次回以降はシンプルに直近での事例や動きを取り上げる形を想定)

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