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第1回~10回ランチタイムウェビナーの総集編&質問回【第12回ウェビナーレポート】

公開日:2020.08.05 最終更新日:2023.06.20

同業者も追随、コロナ禍の中で光った「神対応」

桑江:今回はまず、「神対応」の事例を紹介しましょう。新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、大学の学費減免を求める署名が全国100大学に拡大した中、首都圏のA大学が全学生のすべての学生にオンライン授業のための機材購入費5万円を給付して喜ばれました。
コロナ禍の中では、業界に先駆けた企業の取り組みの反応を見て他社が追随する動きが出ていますが、今回の事例でも追随する大学が相次いだところです。
また、海外ではメキシコのビール大手B社のボランティア活動が評価され、日本でも賞賛の声が多く上がっています。新型コロナを連想させる名前の自社商品に対して不買運動も起こっていたのですが、ビールの生産過程で生まれるアルコールで殺菌ジェルを作って無料配布した結果、風評被害が一掃されました。

前薗:B社の取り組みには、日本の酒造メーカーもどんどん追随しています。神対応がいろいろな会社の良い対応に波及していくという流れができるきっかけの1つになってくれましたね。

桑江:ある企業の取り組みが「いいね」と言われたことに触発され、「自社は何ができるのか」と対応を考えていくポジティブな連鎖が起こると非常にうれしいですよね。そのような意識を持っていれば、神対応が生まれやすいと思います。

前薗:ただし、その逆もあり得ますよね。1社が炎上したときに同業他社にまでマイナスの声が広がってしまうリスクにも気を付けなければならないでしょう。

便乗商法の批判をかわした「寄付」

桑江:そうですね。菓子メーカーC社が「お菓子で日本を明るく」と発案したTwitterキャンペーン「#おかしつなぎ」には多くの同業他社が共感し、企業の枠組みを超えた業界のムーブメントになりました。菓子好きにとっては、非常にポジティブな印象の企画でしたね。
また、石川県の温泉旅館Dが企画した「自粛警察の皆様、お疲れ様です!プラン」もSNS
上で話題を集めました。
人によっては「嫌味」とも受け取られてしまいかねないプラン名でしたが、世の中の反応はとてもポジティブでした。「宿泊代金の半分を医療従事者に寄付する」と謳っていたのがポイントで、その大義名分がなければ炎上していた可能性があります。
コロナ禍で流行した「自粛警察」の便乗商法と受け取られないようにするため、寄付という方法をうまく使ったキャンペーンだったと言えるでしょう。

前薗:「自粛警察」にけんかを売るだけだと炎上商法と言われる可能性が高かったと思います。抱き合わせのようなケースで炎上してしまった企業もいくつか確認されている中、「自分たちが儲けるつもりはない」という姿勢が、ポジティブな反応を生んだ要因でした。

桑江:重要なのは、国民の声に寄り添えているかどうかということでしょう。コロナ禍では消費者への対応に注意を払うのはもちろんですが、無理に営業を再開しようとして従業員に負担を強いると内部告発を生んでしまいかねません。
自社の従業員が感染するリスクはこれまで以上に高くなっていますし、社内外の対応はすべて世の中に出てしまうという意識を持つ必要があると思います。

前薗:Twitterユーザーは、非常時に企業が儲けようとしているかどうかという臭いに敏感ですよね。炎上を沈静化させる過程では、自社がいかに損をするかをPRに活用するケースが多い気がします。

すべてのステークホルダーに寄り添う姿勢が大切

桑江:コロナ禍の広がりとともに企業の返金対応も話題になりましたが、法律などを盾にして「返金しない」と言い切ってしまうとユーザー、国民に寄り添っていないと批判されるでしょう。
逆に言えば、こういった時勢だからこそ、消費者はどの企業が信用できるのかを見極め、コロナ禍が落ち着いた後の自分の消費行動に生かそうと考えているように思いますね。

前薗:そうですね。

桑江:従業員に対する神対応としては、食品スーパー大手E社が総額3億円の一時金を支給しました。コロナ輪禍による巣ごもり需要の高まりで業務負担が増した従業員をねぎらい、モチベーションの向上につなげたいというのが狙いで、インターネット上でも非常にポジティブな反応を得たところです。
さらに翌月は、従業員にリフレッシュしてもらおうと全店舗が1日ずつ臨時休業し、「こんな風に従業員のことを考えてくれる会社で働きたい」といった声も多く聞かれました。
つまり、神対応は企業のイメージアップだけでなく、高い求人効果も期待できるということです。CMよりはるかに効果的な求人広告を打ったようなもので、他社に比べて多くの人材が集まることも期待できます。

前薗:お金の話になると企業の負担が大きいかもしれませんが、例えばホームセンター大手F社はコロナ禍で雇い止めに遭った人などを中心に3,000人の追加採用を発表しました。
社会の情勢に合わせ、世の中の声に寄り添えば、本来なら思い通りの採用が難しいと言われる業界にもポジティブに作用することがあるように思います。

ゲストが提案する炎上予防策・マーケティング手法

ヨッピー氏…「面白さ」と「謙虚さ」が大切

桑江:さて、ここで改めて、過去の回に出演していただいたゲストの方々が実践している炎上予防策・マーケティング手法を抜粋しましょう。
ヨッピー氏(Webライター)は「嫌われないことで炎上は防げる」というテーマで講師を務めていただきました。嫌われないためには「面白いかどうか」が重要で、「謙虚であること」も大事だと。相手をイラっとさせてしまい、炎上につながってしまう流れを断ち切りましょうというのがポイントでしたね。

前薗:特に印象的だったのは「謙虚であること」という言葉です。芸能人の炎上パターンは、目立とうとした結果であることが非常に多いと思います。調子に乗っている、偉ぶっていると思われないようにするためにも、「誰のおかげ」などしっかりと他者を立てるようなプロモーションが必要でしょう。

鹿毛康司氏…「人の心」について思考し続ける

桑江:クリエイティブ・ディレクターの鹿毛康司氏(株式会社かげこうじ事務所代表取締役)が挙げたのは、「思考停止をすると炎上が起こりやすい」ということ。「人の心」について真剣に何度も思考し続けたCMだけが人の心に響くというこだわりをお持ちでした。

前薗:テレビCMは炎上するか成功するか、二極化してきていると思います。売りたい、買ってほしいというのが前面に出過ぎると炎上するということですね。
ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)の経営を再建した株式会社刀の森岡毅代表取締役CEOも著書の中で、ユーザーが何を期待しているのか、何をしたいのかに寄り添い切った結果、USJのV字回復を果たせたというお話をされています。やはり共通している部分があると思いましたね。

佐藤尚之氏…炎上の盾となる「ファンベース」

桑江:それらの考え方がさらに進んだのが、佐藤尚之氏(株式会社ファンベースカンパニー)が唱えてらっしゃる「ファンベース」です。
ファンに愛されている企業、公式SNSアカウントが炎上しづらいということは実証されています。コロナ禍の中では人に直接会いにくく、日々のコミュニケーションもSNSに依存せざるを得ません。
withコロナ、アフターコロナの社会では、自社のファンたちが周りにしっかりとメッセージを伝えてくれる流れをつくることが重要になってくると思います。

出典:佐藤尚之著『ファンベース ―支持され、愛され、長く売れ続けるために』

前薗:自社が炎上した場合、企業は「言い訳」と捉えられるのを気にして、あまりものを言えなくなるものです。そういったときに助けてくれる仲間の存在がすごく大事で、それがファンかと思います。
プロモーションだけでなく、炎上リスク対策の面でも自社を擁護してくれる人の存在は非常にありがたいので、ファンベースという考え方は非常に参考になりました。

有事に備えたリスクシナリオの想定が不可欠

桑江:一方で、企業が主催するイベントなどで新型コロナのクラスターが発生したというような場合、企業だけではなく来場者も個別に情報発信してしまうことを前提に動かなければなりません。
一般の人が流した情報であっても、誰もが知ることができます。公式発表をする場合は絶対に揺るがない、第三者に批判される余地のない状態を整えておくべきです。例えば、「感染予防対策は万全だった」という公式発表の内容が実態と異なっていたら、より大きいネガティブな影響を受けてしまいます。
また、本部は「こうするように」と通達していたのに、現場が混乱してできていなかったということも起こり得るでしょう。そうしたことも踏まえて発表しなければ、事実と乖離してしまいます。今後はイベントなどの企画を再開する企業も増えると予想されますが、そうしたリスクには十分な注意が必要です。

前薗:イベントやキャンペーンなどの参加者は1人1人が広告塔と考えて、「会場で誰がどんな写真を撮っても問題ないか」という観点で企画・運営に当たるべきでしょう。
自社のホームページなどの情報で間違った部分があれば常に訂正しながら、世の中の反応をつぶさに調査していく必要があると思います。

桑江:いざというときに公表するリリース文や事態収拾を図るフローも、確実に準備しておかなければなりませんね。

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