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デジタル・クライシス白書-2023年2月度-~止まらない炎上の連鎖~【第102回ウェビナーレポート】

公開日:2023.03.01 最終更新日:2024.03.05

※当記事は「Twitter」当時の内容となります。

迷惑動画問題は新たなフェーズに

桑江:この1カ月間を思い返すと、2013年の「バカッター」、2019年の「バイトテロ」を彷彿とさせる迷惑行為が相次ぎました。バカッターはTwitter、バイトテロはInstagramのストーリーズを中心に広がりましたが、今年はTikTokが迷惑行為に使われています。
24時間限定の公開で「フォロワー」しか閲覧できないストーリーズの投稿は内輪向けでしたが、TikTokは不特定多数に見られるのが前提のプラットフォームです。最近は迷惑動画による騒動を見て「自分もやってやろう」と追随するケースが多く、これまでとは明らかに違うフェーズに入ったと思います。

前園:そうですね。

回転寿司店などで「客テロ」が続発

桑江:では、具体的な事案を振り返っていきましょう。まずは「客テロ」です。
回転寿司チェーン大手A社の店舗で、他の客が注文した寿司にレーン上でわさびをのせるといったいたずら行為の動画がSNSに投稿されました。
A社は警察に被害届を出すことを明らかにしましたが、回転寿司業界ではその後も同様の迷惑行為が続発しています。

前園:A社の店舗では、それ以前にも他の客が注文した寿司を勝手に取って食べる動画がTikTokに上がっていましたね。

桑江:その後、回転寿司業界をめぐっては、B社の店舗の利用客が一度手にした寿司の皿を笑いながらレーンに戻すといった4年前の動画がSNS上で拡散されました。
さらに、C社の店舗では利用客が醤油さしや湯飲みを舐め回したり、唾を付けた指でレーンを流れる寿司に触ったりしている動画が拡散され、マスメディアでも大々的に報じられています。C社は刑事と民事の両面から対処する意向を発表しました。

前園:以前のバイトテロでは従業員に対する研修実施や民事の損害賠償請求というスタンダードをつくりました。C社の対応により、迷惑動画は刑事事件化するのがスタンダードになったと思います。
企業が類似のトラブルに巻き込まれたときは、そのことを認識した上で踏み込んだ対応を取るべきかどうかを判断しなければならないでしょう。ただし、過去の迷惑動画が拡散された場合は、どこまでさかのぼって罪を追及するべきかを見極めなければなりません。
「右に倣え」というスタンスで安易に判断すると、「やり過ぎだ」という批判的な論調が強まってしまわないとも限りませんので。

桑江:迷惑動画が拡散された後、C社の株式の時価総額は一時的に約168億円も下がってしまいました。今回のような事案が発生すれば、ステークホルダーである株主への責任も問われることになります。

前園:企業関連の炎上が発生した場合、ステークホルダー向けのコミュニケーションは広報部門からのリリースという形になるパターンが一般的です。
ただ、特に上場企業の場合はIRの担当部門と連携し、機関投資家などの不安材料を払拭して株式を売却しないようグリップすることも求められつつあると思います。

ついに「火炎放射」まで…悪質化する迷惑行為

桑江:九州のうどんチェーンD社の店舗では、利用客が共用のスプーンを自分の口に入れる動画がSNS上で拡散しました。また、E社が運営する大手カレー専門店で3年前に撮影された迷惑行為の動画も発掘されて広がっています。
さらに、コンビニとみられる店内では商品のライターオイルを陳列棚にかけ、持っていたライターで火をつける動画などが拡散されました。
カラオケチェーン大手のF社の店舗でも、噴射したスプレーに火をつけて「火炎放射」のようにした光景などが撮影され、スーパー大手G社の店内でも消毒用のアルコールを噴出させながらライターで引火する動画が撮られています。迷惑動画の投稿はどんどん増え、一向に止まらない状況です。

前園:こうしたパターンの場合、企業としてはリリースやお知らせの発信に関する立ち回り方が変わってきます。
注意すべきなのは「警察に相談する」と「被害届を出す」というニュアンスは違うという点です。まずは警察に相談し、対応を決めた上で被害届を出すという流れになるので、万一の際はリリースなどの文面に気を付けていただきたいと思います。

「バイトテロ」も複数発生

桑江:同じように「バイトテロ」も発生し、さまざまなSNSを介して動画が拡散しました。
コンビニ大手H社の店舗では、若い女性店員2人がケースに陳列されたポテトを交互にかじる様子などを撮影した動画がストーリーズからTwitterに転載され、拡散する騒ぎになっています。
別のコンビニ大手I社の店舗でもアルバイトによる不適切な行為が発覚し、SNSユーザーに店舗が特定されました。店舗はGoogleマップの登録情報が荒らされるといった被害が出ています。

前園:「客テロ」も「バイトテロ」も「承認欲求を満たしたかった」、あるいは「仲間内で盛り上がったから」という心理は同じですよね。迷惑動画をSNSに上げたのが客だったのかアルバイトだったのかという違いしかないと思います。

公式Twitterアカウントが乗っ取り被害に

桑江:続いては「乗っ取り・なりすまし」です。コーヒーチェーン大手のJ社が、不正アクセスによって公式Twitterアカウントを乗っ取られたと発表しました。アイコンやヘッダ画像が削除されるなどし、J社とは全く関係ないツイートも見つかりました。
4日後に復旧し、運用も再開しましたが、Twitterを情報伝達手段として使っている企業は多いと思います。改めて管理を見直すことが必要でしょう。

前園:認証バッジ(公式マーク)などの導入でTwitter上のなりすましを減らしていますが、乗っ取り関連の話は大なり小なり出ています。
個人情報をダイレクトメッセージなどに残していると、アカウントを乗っ取られた際に管理ができなくなるため、自社でしっかり管理できる環境に移しておきましょう。また、2段階認証によるセキュリティー強化で、なりすましを予防することも必須だと思います。

人気商品が招いた混乱が物議

桑江:このほかの事案としては、キッズ向けの人気節分アイテムを発売したK社の一部店舗が混乱状態となり、赤ちゃんの泣き声が聞こえる中での争奪戦を撮影した動画がSNSで拡散されて物議を醸しました。

前園:年始の福袋の件も含め、人気の商品は転売をどう抑制するかという問題があります。そこに完売しやすいブランドという要素が重なると、今回の事案のようなトラブルになりやすいようです。
企業としては騒動になれば態勢の不備を指摘される可能性があることを認識し、リスクシナリオ(想定される災害と障害の組み合わせ)を描いたうえで、対策を立てておく必要があると思いますね。

パワーワードに潜むリスクが浮き彫りに

桑江:「高齢者は老害化する前に集団自決、集団切腹みたいなことをすればいい」という経済学者のL氏の発言をめぐり、本人が助教授を務める米国の大学が公式サイトに「意見は彼個人のものであり、経済学部や大学の見解を示すものではない」との記述を追加しました。
L氏の持論は日本国内のみならず、米ニューヨーク・タイムズなど海外紙でも報じられ、問題視されていました。
このように、強いインパクトを持つワードが拒否反応を引き出すことは十分起こり得ます。企業としても、ずけずけとものを言うタイプのタレントなどをプロモーションに起用する場合は、こうしたリスクも考えておかなければなりません。

前園:ミクロの話になりますが、キャッチコピーや公式サイトのコンテンツのタイトルなども注意が必要ですよね。
今回の事案では、強いフレーズやパワーワードの安易な使用が、自らの首をしめることになるということを実感しました。

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