セレクトショップA社の「女性蔑視」の炎上事例から考える、情報発信時に検討するべきリスクについて
- 公開日:2020.12.01 最終更新日:2023.06.21
※この記事は雑誌『美楽』2020年12月号の掲載内容を一部修正の上、転載しております。
セレクトショップ大手A社が販売したTシャツのデザインをめぐり「女性蔑視」などという批判が集まりSNS上などで炎上していました。
該当のTシャツのデザインは「LOVERAT IS OVER」「Just call me Tee」の2種類。前者は長髪の人物が拳銃を突き付けられ口を押さえられた、性暴力を連想させる絵柄でした。そして後者については、下着の見える格好をした女性が「おまたせ~エ」「ギャル募集中」との文言と併せてプリントされていました。テレホンクラブなどのいわゆる「ピンクチラシ」を参考にしたとみられるイラストだったのです。
こうしたデザインに対して、「DVと買春のどこが可愛いんだ。」といった批判や、Tシャツを販売したA社の企業倫理に対して批判的な投稿が行われました。
一方でデザインに対して肯定的な投稿もありました。「LOVERAT IS OVER」は、浮気男は終わりという意味で全体としてはDV・暴力の否定とも捉えられるといった指摘です。また「一見不快な絵に見えるかもしれないが、それは人それぞれの感性に依るものだ」といった投稿も確認されています。これらの投稿のようにデザインに理解を示す動きも見られました。
そしてこの様なネット上の炎上に対して、A社は「イラストのモチーフとされた事象へのアンチテーゼがデザインに込められていると解釈し販売していた」と説明しました。そして意図を正確にお伝えできていなかったと謝罪を行い、当該Tシャツの販売を中止し、商品を紹介したツイートの削除といった対応を行ったのです。
こうした本来意図していたメッセージが受け手側に伝わらず炎上に至るケースは過去にも存在しています。
百貨店Bの広告では「わたしは、私。」というコピーと共に、女性の顔一面にパイが投げつけられた写真が使用されていました。この広告には「同質化圧力から脱却し、私らしく生きることを応援していきたい」という意味が込められていました。しかし実際には「暴力的だ」「悪意を感じる」といった不快感を示す声が上がったのです。
また自動車メーカーC社の公式Twitterが行ったアンケートでも受け手側の捉え方への配慮が不足していました。女性ドライバーに対する「やっぱり、クルマの運転って、苦手ですか?」という表現が、女性の運転技術が男性よりも劣るかのように捉えられてしまったのです。
このように女性蔑視に関する炎上は、本来意図していたメッセージが受け手側に伝わらず炎上に至るケースが多く見受けられます。また内容の説明不足やメッセージの一部が切り取られ拡散されることで、本当に伝えたいメッセージが歪曲して拡散するケースも存在しています。
ジェンダー以外にも、人種問題や政治的な発言など、特に慎重に扱う必要のあるテーマについて発信する場合は、内容を十分に検討することが必要です。そのうえで意図に反する情報の広がり方をしないか予測することが求められているのです。