「知らぬ存ぜぬ」はアウト!蔓延する「不適切なネット広告」
- 公開日:2021.07.26 最終更新日:2024.01.26
電通グループが2021年1月に公表した「世界の広告費成長予測」によると、2021年の世界の総広告費は前年比5.8ポイント増の約5790億ドル(約64兆5989億円)でした。
媒体別シェアは、デジタル広告が初めて50%に達する見通しとなりました。
デジタル広告に続くテレビ広告のシェアは29.9%と、2021年以降は3割を下回る予測です。
各媒体を見てもシェアが右肩上がりなのはデジタル広告だけで、新型コロナウイルスが発生した2020年も媒体別で唯一のプラス成長を遂げました。
まさに、デジタル広告は世界の広告市場を牽引していると言えるでしょう。
一方で、1つの媒体に大量の広告が押し寄せれば、「いかに自社のコンテンツを見つけ出してもらうか」という競争が過熱します。
そのような環境にあるデジタル広告を巡っては、さまざまな問題が噴出しているのです。
では一体、どんな問題が起きているのでしょうか?
虚偽・誇大表現も野放し? 悪質なネット広告が垂れ流されている
2020年の1年間、Googleが自社の規約違反を理由に掲載を阻止したり削除したりしたデジタル広告は、世界中で約31億件に上りました。
このうち9900万件ほどは新型コロナウイルスに関するもので、偽の治療法などの問題広告も目立ったといいます。
日本でも2020年7月、医薬品的効能効果を広告でうたった健康食品を販売したとして、サプリメントのECサイトを運営するS社の従業員ら6人が医薬品医療機器法(薬機法)違反の容疑で逮捕されました。
逮捕された6人の中には、広告掲載に関与した東証一部上場の広告業大手の従業員も含まれています。
広告業界にも衝撃を与えたこの事件は、デジタル広告の考査がテレビや新聞のそれとは比べ物にならないほど甘いという実態を浮き彫りにしたのです。
こうした情勢を受け、国内最大級のネイティブアドネットワーク「popIn Discovery」は2021年5月、ネットの誇大広告・差別広告の配信停止に向けて、審査体制の一層の強化と配信基準の引き上げに踏み切りました。
同社のある役員は「インターネット上に蔓延する、行き過ぎた広告表現に歯止めを掛けるため」と説明しています。
ネット上の不適切広告が、どれだけはびこっているのか。それは、国の行政機関にまで被害が及んだことからも明らかです。
気象庁は2020年9月、ホームページでの広告掲載を始めました。ところが、広告枠には偽ブランド品の販売サイトなど、不適切とされる計43サイトの広告が次々と表示されてしまったのです。
閲覧者の検索履歴と連動して自動的に広告が表示される「運用型広告」の仕組みを採用したため、ホームページに掲載される広告をコントロールできなかったのが要因でした。
しかし、近年のデジタル広告は運用型が主流です。つまり、適切な対策を取らなければ、どの企業も同様の事象に巻き込まれる可能性があります。
SNS上でも、デジタル広告のトラブルは後を絶ちません。
「自社の商品・サービスで容姿などの劣等感を解消できる」と宣伝する「コンプレックス広告」、「副業、投資、ギャンブルなどで高額収入を手にするノウハウを得られる」と謳う「情報商材広告」、記事を装って商品・サービスの効果や性能を書き立てることもある「アフィリエイト広告」など。これらの中には、明らかな誇張や嘘も紛れ込んでいるのが実情です。
処罰を厳格化 国も監視・規制に本腰
コロナ禍における外出自粛の影響もあってネットの利用者数・時間が増えている中、国も虚偽・誇大広告による消費者被害を防ごうと対応に乗り出しています。
2020年8月の薬機法改正では、虚偽・誇大広告規制に違反した場合の課徴金制度が導入されました。対象商品の売り上げに対する課徴金額の割合(4.5%)は景品表示法の3.5%を上回り、広告代理店や広告制作会社も処罰対象となります。
また、消費者庁は2020年3月から、コロナ感染予防効果を標榜する健康食品やマイナスイオン発生器、空間除菌商品などを販売する複数社に「効果の根拠がない」として行政指導を実施しました。
2021年3月には消費者安全法に基づき、化粧品と医薬部外品を巡る虚偽・誇大アフィリエイト広告について消費者に初めて注意喚起。同じ月には育毛剤のアフィリエイト広告に景品表示法違反(優良誤認)で初の措置命令も出すなど警戒を強めています。
その後もアフィリエイト広告などの実態調査を進めつつ、不当表示が生じない健全な広告の掲載に向けた対応方策を探る検討会を設置。6月10日の第1回会合を皮切りに、年内に一定の結論を導き出す予定です。
アフィリエイト広告の国内市場規模が3000億円以上に膨らむ中、景品表示法の適用基準の整理、不当表示の未然防止に努める姿勢を打ち出しています。
このように国の動きも厳しさを増している状況下では、広告主である企業も「知らぬ存ぜぬ」は通用しなくなるでしょう。
アフィリエイターに広告作成を依頼する場合は、これまで以上に信頼できるパートナーを選ぶことが重要になります。
誇大広告・差別広告などに限らず、デジタル広告の世界ではさまざまな不正が問題となっています。そうした問題への対処を怠ったままWebマーケティングを展開すれば、貴重な広告費を無駄にするだけでなく、ブランドイメージの低下も招いてしまいかねません。
まだまだ遅れている不正対策 自社を守る対策を
デロイトトーマツグループが広告活動を行っている従業員規模5000人以上の企業200社に実施した「広告取引に関する広告主実態調査2020」では、デジタル広告不正について「聞いたことがある」と答えた割合は64.5%に上りましたが、「内容までよく知っていた」はわずか10.5%でした。
デジタル広告不正対策の取り組み状況(予定も含む)についても、最も進んでいるもので「ブランドセーフティ問題(不適切サイトへの掲載防止など)」の30%に過ぎません。
「ビューアビリティ問題(ユーザー視認の確実化など)」は28%、「アドフラウド問題(インプレッションを水増しする不正など)」は27%で、デジタル広告の環境変化に伴う対応はまだまだ遅れていることが明らかになりました。
もちろん、多岐にわたるデジタル広告不正対策の必要性を感じたとしても、「自社はノウハウも人材も乏しく、何をどう進めればいいのか分からない」という場合もあるでしょう。
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