妻が皿を洗うのは男女差別!? 企業の理想的な「神対応」に学ぶ炎上対策
- 公開日:2021.01.15 最終更新日:2024.01.26
米マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏と、米アマゾン・ドット・コム創業者のジェフ・ベゾス氏。日本でも有名なこの2人は、世界に名だたるグローバル企業を築き上げました。
どちらも青年期に起業し、IT分野で世界中の人々の暮らしや経済を一変させた功績の持ち主です。たった一代で巨万の富を手にし、大邸宅を構えているという点も同じ。慈善活動に熱心であることも共通しています。
しかし、両氏の間には、あまり知られていない共通点もあります。
それが、自宅での「皿洗い」です。ゲイツ氏もベゾス氏も毎日、夕食後には自分で皿を洗うのが日課だそう。
ビジネスで疲れた脳をクールダウンし、気分転換を図る手段として積極的に取り入れている習慣のようですが、グローバルエリートと呼ばれる層の中でもトップクラスであろう2人。自由にリラックスしようと思えば、いくらでも方法はあるはずです。
それでもなお、皿洗いを続けるのは、純粋に自分がそうしたいと思っているからに他ならないでしょう。彼らが「仕方なく」、あるいは「妻の代わりに」といった感覚でキッチンに立っているとは、到底思えません。
つまり、彼らはジェンダーフリーを意識して皿を洗っているわけではないだろうということです。もちろん、男性である自分の行動が特別なものであるとも、高尚なものであるとも思っていないでしょう。彼らの頭の中にはきっと、皿洗いが「男性の仕事」「女性の仕事」、などといった、性別による役割分担の区分けはないのだと思います。
しかし、世の中には、皿洗いの担当者から、ジェンダー問題を提起する人達もいます。特に、広告などのクリエイティブ表現においては細心の注意が必要です。企業側の意図していたメッセージから逸脱して、思わぬ“ジェンダー論争”が巻き起こってしまうことがあります。これから紹介するのは、ジェンダー問題の捉え方について深く考えさせてくれる事例です。
大手食品メーカーの公式TwitterのPR漫画が物議
大手食品メーカーのA社が、自社の看板商品であるインスタントラーメンの公式Twitterを開設したのは、2020年7月のこと。この即席麺を使った手軽でおいしいレシピの紹介やタレントによるオリジナルラーメン作りなどの企画が人気で、順調にフォロワー数を伸ばしています。
2020年10月にはプロモーションの一環として、夫婦の日常を描いたPR4コマ漫画の連載を開始。「やさしくもクスっと笑える夫婦の日常」という触れ込み通り、ほのぼのとしたタッチとストーリーが特徴でしたが、11月11日に投稿された漫画の1コマが物議を醸しました。
そこに描かれていたのは、夫と幼い息子が昼食で使った食器を、仕事から帰ったばかりの妻が洗う姿でした。
付け加えておくと、妻が自発的に、あるいは夫に頼まれるなどして皿を洗っているのかどうかまでは分かりません。漫画に描かれているのは、皿を洗う妻と皿を拭く夫がキッチンに並び立ち、穏やかに会話をしているということだけです。
漫画の配信後に寄せられたリツイートは2900件余り。前回の漫画へのリツイートは104件だったことから、その反響は確かに大きいものだったと言えます。
しかし、リツイートの内容は賛否両論でした。「父と子だけの洗い物を、なんで夕方帰ってきた母親に洗わせているの?」「結局ジェンダーロールから脱却できないんですね」といった批判的な投稿が複数あった一方、「独自の解釈で変にいきり立って噛みついている人に対処する必要はないかと」という擁護意見も多く寄せられました。
こうした反応を受け、A社は11月13日、「今後の掲載につきまして現在精査しています」という1次回答を発表。ここまでは、よくある企業の対応かもしれません。
しかし、A社は違いました。11月18日には、意見を真摯に受け止めた上で漫画掲載を再開することと、社外の作画担当者に責任はないという姿勢を示したのです。
かくして、一連の対応に浴びせられたのは、大きな称賛の声でした。
賛否両論への配慮と分析が奏功
社会的、文化的な性別、いわゆるジェンダー思想の偏見を連想させる企業プロモーションの「炎上」事例が相次ぐ中、A社の対応はなぜ支持されたのでしょうか。
シエンプレが分析した要因は大きく分けて2つ。1つは「各関係者への行き届いた配慮」、もう1つは「十分な分析と検討」です。
「各関係者への行き届いた配慮」とは、批判的な意見を受け止めるとしながらも、配信済みの漫画をあえて削除しなかったことで、擁護側にも配慮したという点。「原作は弊社の責任の元に制作・公開しております」と言及し、作画担当への飛び火を防いだ対応も含まれます。
また、「十分な分析と検討」は、リツイート数に関するものです。
実は、この数が急増したのは漫画が配信された11月11日でも、A社が1次回答を発表した11月13日でもありませんでした。
リツイート数が2万5000件に迫ったのは、1次回答を受けて一部のネットニュースが「炎上」と報じた11月14日。しかも、投稿内容の大半は「この程度で炎上するのか」「過敏すぎる」「炎上に屈するな」など、A社に好意的なトーンだったのです。
安易に漫画を削除しなかったことから考えても、A社はネガティブな意見は多数派なのか、その中にインフルエンサーはいるのかといった点を十分に分析・検討したと考えられます。
もちろん、こうした適切な対応を取るためには、日頃から過去の成否事例を把握し、自社にノウハウを蓄積しておくことが重要でしょう。
十分な分析と検討を行うためには、それぞれの事案に関する投稿内容、投稿件数を網羅的に把握することが大切です。
Web監視やクリエイティブリスク診断でサポート
とは言え、これらを自社だけで遂行するためのノウハウや人材を持ち合わせていないという場合も多いでしょう。
シエンプレならWeb、SNS上の投稿を24時間体制で監視し、「炎上」の火種を速やかに察知。他社の「炎上」からの飛び火予測までカバーし、非常時は即座に対策を施します。
さらに、インパクトや話題性を重視するあまり「炎上」しやすい広報・マーケティング活動に対し、専門家が事前にクリエイティブリスク診断を実施。公開しようとする企画・制作物を過去の炎上データベースと照合します。
ちなみにA社のケースでも、漫画の企画段階でフェミニストを刺激するリスクまで想定していれば、そもそも物議を醸すことはなかったでしょう。
さらに、クリエイティブリスク診断に関連しては、プロモーションに起用するタレントなどの問題行為や犯罪履歴などを調べるインフルエンサーリスク診断も用意しています。
この他、弊社が2020年1月に設立した「デジタル・クライシス総合研究所」では、契約企業に対し、月1回の炎上レポートを作成。ケーススタディとして自社の危機管理マニュアルに取り入れたり、リスク診断に活用したりすることが可能です。
2カ月ごとの勉強会では実際の炎上対応事例を学べるだけでなく、自社の体制構築などについて外部アドバイザーへの相談もできます。
デジタル・クライシス対策に関するご相談は、「炎上」のストッパー役として豊富な実績とノウハウを持つ弊社に、ぜひお寄せください。