PRイラストに「性的消費」と批判殺到! 企業SNSはなぜ「炎上」したのか?
- 公開日:2020.12.17 最終更新日:2024.01.26
「企業SNSアカウントの運用体制は多くの企業が内製化しているが、リソース不足に悩んでいる」
2020年3月、ソーシャルメディアサービス事業などを手掛けるガイアックスがSNS運用に取り組む企業担当者150人(社)に実施した独自調査から、このような傾向が浮き彫りになりました。
150社のうち、SNSマーケティング業務を「すべて内製化している」と回答したのは半数超の89社。「一部を外注している」と答えた46社と合わせると、実に90%の企業が業務を内製化しています。
さらに、SNSマーケティングの課題については「運用リソースが足りない」が66社を数え、フォロワー数や投稿コンテンツへの反応が増えないといった悩みも多いことが確認されました。
こうして見ると、企業SNSは社内の限られた担当者が慢性的な「リソース不足」と「ネタ不足」に苦しみながら投稿を重ねていることが分かります。
そのような状況下でフォロワー数や反応を増やそうとしたとき、投稿内容のチェックが甘くなってしまうのは当然の成り行きと言えるかもしれません。
しかし、企業がフォロワーなどの獲得より意識を向ければならないのは、投稿に対してネガティブな反応を寄せられないようにするためのリスクマネジメント、つまり「炎上」を避けることでしょう。
それにも関わらず、企業SNSアカウントの「炎上」事例は後を絶ちません。
とりわけ多いのは、ジェンダーへのアプローチを誤ったことによる「炎上」。ユーザーの目を引こうとするあまり過激なテーマに踏み込み、「デリカシーに欠ける」といった批判を浴びてしまうケースです。
タイツ姿の女性イラストでキャンペーン
タイツ姿の女性イラストでキャンペーン
2020年11月2日、有名タイツメーカーのB社がTwitterの公式アカウント上で多数のイラストレーターとのコラボキャンペーンを開始しました。ちなみに、この日は「タイツの日」。タイツを着用した女性のイラストを楽しんでもらいながら、自社製品をPRするのが目的でした。
爽やかなイラストが並んだ当初、Twitterユーザーの反応は好意的で、「タイツの日」がトレンド入り。寄せられたイラストに対し、公式アカウントでは「動悸がおさまらない」とコメントし、キャンペーンは大成功したかのように思われました。
しかし、ここから事態が一変します。
イラスト描写が過激化、公式アカウントが制御不能に
その上、B社の公式アカウントからは好意的に取られる投稿だけではなく、スカートの裾を持ち上げて脚を見せている女性のイラストが複数投稿され始め、批判が起こり始めたのです。
また、Twitterの特性上、キャンペーン用のハッシュタグはB社が依頼していない一般ユーザーも使用しても問題がないものです。それにより、タイツをモチーフに描いたイラストが次々と投稿され、性的な表現も含まれるものなど、その表現内容についてコントロールできない状態に陥ってしまいました。
批判的な投稿とリツイート投稿が相次ぎ、公式アカウントが本格的な「炎上」状態に移行したのは、その日の深夜でした。
投稿の中身は「タイツを履く女性に向けてのPRではなく、タイツを履いている女性が好きな層に向けたPRだ」「男性を喜ばせるためにタイツを履いているのではない」といったもの。まさに「性的消費」を糾弾するものでした。
さらに、「炎上」の矛先は公式アカウントの運用体制にも向けられます。
B社が依頼した特定のイラストレーターのファンであることを示唆するツイートを何度も書き込んだ担当者に対し、「公私混同」との指摘が殺到。キャンペーンそのものについても「担当者の趣味の要素が強いのではないか」という疑念を持たれ、イラストの過激表現への苦情を上回る数の批判的な投稿が寄せられました。
11月3日夜、B社はTwitterの公式アカウントと公式サイトで謝罪し、キャンペーンの中止を発表、当面はあらゆる新規ツイートを休止することも表明しました。
前例に学び、外部の意見も取り入れて
「性的消費」との批判が巻き起こった背景には同時期、大手玩具メーカーが自社製品の女児キャラクター人形をめぐる不適切なTwitter投稿で「炎上」していたことも挙げられます。
2次元キャラクターのいわゆる「萌え絵」を用いた表現では、過去に「セクハラ」と批判された事例も発生しました。
こうした中、B社のキャンペーンではイラストレーターへの発注内容が明確ではなく、イラストレーター独自の表現で描かれた作品が投稿されていたのです。
一般ユーザーからの投稿を制御できなかった点を含め、最初の「炎上」の要因は前例に学べなかったことが大きかったと言えるでしょう。
「公私混同」と運用体制への批判が相次いだ2度目の「炎上」もまた、B社の担当者による「前例」に伏線がありました。この担当者はキャンペーンが始まる前にも、同じイラストレーターに企業アカウントを使って「私信」と誤解されそうなリプライを何度も送っており、個人と企業の境界線が曖昧になっている傾向が見られたのです。
もっとも、B社の公式Twitterアカウントはユーザーと積極的に交流し、流行のハッシュタグを用いた投稿も行われることから、「親しみやすい」と評判でした。。
とは言え、いわゆる「中の人」の我が出過ぎるなど、ユーザーとの距離感を無視するような言動に厳しい目が向けられるのは当然でしょう。
公式アカウントとして相応しい投稿かどうかの判断は担当者任せにするのではなく、一定の運用ルールを定めておくことが重要です。
さらに、運用段階でも社内で二重、三重のチェックを行い、定期的に外部の意見を取り入れる仕組みづくりが求められます。
例えば、今回炎上したのは二次元である“イラスト”でしたが、もしこれが「実写」だったとして同じことをするだろうかと疑問に思うべきです。今回のケースを「実写」の世界に置き換えて考えてみた場合、果たしてモデルさんにスカートを捲りあげてタイツを見せた写真を取らせるでしょうか?
もし企画段階で通ったとしても、実際の撮影現場をみて違和感を持つ社員はいたはずです。もしくは、実際に出来上がった写真をみて、社内の誰かが「これはアウトだろう」と世に出る前にNGを突きつけたのではないかと思います。「イラストだとどうしてもチェックが緩くなってしまいがちですが、「イラストも「実写」と同じ感覚で判断する必要があります。
では、仮に「炎上」が発生した場合、企業はどう対処するべきでしょうか?
B社の事例でも、批判が起き始めた段階、あるいは最初の「炎上」フェーズで企画の見直しや公式アカウントの非公開化に踏み切っていれば、大規模な「炎上」は避けられた可能性が高かったはずです。
大々的なプロモーション活動やリリースなどを行う際はSNSの動向を常にモニタリングし、世論の推移を正確につかむことが重要になります。
また、日頃から過去の「炎上」事例を定期的にチェックしておくことも重要です。特に、直近の事例と同じ轍を踏んでしまった場合の批判は強まる傾向のため、より注視し、経緯を検証しておくべきでしょう。
会員企業に炎上研究レポート配信、勉強会も開催
ただ、多くの企業が自社でこれほどの対策を取るのは人員、ノウハウの両面で困難かもしれません。
そうした場合も、ご安心ください。国内唯一のデジタル・クライシス対策カンパニー、シエンプレが豊富なサービスを提供して手厚くサポートします。
例を挙げると、24時間監視のWeb/SNSモニタリングやPR企画などのクリエイティブリスク診断などを実施。万が一「炎上」に至った場合も、事実と異なる風評など2次被害の状況を確認し、弁護士や専門業者と相談しながら的確な対応を決定します。
弊社が運営するデジタル・クライシス総合研究所では、会員企業に月1回の炎上研究レポートを配信。さまざまな炎上事例をリスク対策のケーススタディとして活用するための勉強会も開催し、外部アドバイザーへの相談も受け付けています。
企業SNSの効果的な運用を検討されている場合は、ぜひ弊社にご相談ください。