携帯ショップの不適切メモがSNSに流出!「炎上」を防ぐクレーム対応の重要性
- 公開日:2020.03.31 最終更新日:2023.06.21
世の中には、特定の職業や社会のみで通用する特殊な言葉があります。
俗に言う「隠語」で、部外者に秘密が漏れないようにしたり、仲間意識を高めたりする目的で使われています。
例えば、百貨店業界などに存在する隠語が「川中さん」。
従業員同士で「あの方は川中さんです」といった使われ方をしますが、これは実際に川中という名字の人が訪れたことを指しているわけではありません。
「川中さん」が意味するのは「万引きが疑われる客」。ちなみに「川中」は「買わなかった」という言葉に由来しているそうです。
思わず膝を打ってしまいますが、こうした隠語は必然的に生まれたと言えます。
もし、従業員が特定の客を指して「万引きするかもしれません」などと口にしたら、どんなことが起こるでしょう。
本人に気付かれてしまうだけではなく、周りにいる客まで不快にさせてしまうのは間違いありません。
百貨店業界に限らず、接客の仕事に携わる者が応対や言葉遣いなどに気を配らなければならないのは、古今東西に通じる常識です。
しかし、SNS全盛の昨今、サービスや商品に不満を抱いた消費者の行動は、店舗や公式ホームページなどに直接クレームを入れるだけにとどまりません。
出来事の一部始終をSNS上に晒し、瞬く間に「炎上」させてしまうケースも頻発しています。
こうしたリスクに、企業はどう備え、対処するべきでしょうか。
実際に起きた事例を振り返りながら、望ましい対策などを検証していきましょう。
門外不出のはずだったメモが顧客の手に
事の発端は、たった1枚の手書きメモでした。
千葉県内にある携帯電話会社代理店。2020年1月6日、機種変更をしようと訪れたその男性客は、のちに自分が大変な騒動の当事者となることなど想像もしていなかったでしょう。
店長は応対したスタッフに対し、男性客に薦めるべき料金プランを指示するメモを残しました。
さて、帰宅した男性客。代理店から受け取った料金プランの資料の中に、スタッフが書いたとおぼしきメモが紛れ込んでいることに気付きます。
「間違えて入れてしまったのか」
通常なら、それで済んだ話かもしれません。
しかし、メモには看過できない内容が記されていました。
「親代表の一括請求の子番号です。つまりクソ野郎」
男性客の目に飛び込んできたのは、まさに彼自身のことを指した「クソ野郎」という文字。それだけではありません。「親が支払いしているから、お金に無トンチャクだと思うから話す価値はあるかと」」といった侮辱的な言葉も並んでいたのです。
その事実が明るみに出たのは、2日後の1月8日のこと。男性客の知人によるTwitter投稿でした。
※自社調べ
メモの画像もアップされた投稿は当然のごとく「炎上」し、強い憤りから「店舗名を公開するべきだ」との声も上がります。
当初、投稿者は「メモの実紙、店長名刺などの画像もあるのですが、ここで公開リンチにするのは本意ではありません」と、店舗名は伏せる考えを示していました。
しかし、メモに書かれていた料金プラン名から、この代理店は大手通信キャリアの看板を掲げていることが判明。さらにTwitter投稿の翌日、ネットメディアの取材に応じた男性客本人が、千葉県内の代理店であると明かしたことから、Twitter上では店舗をあぶり出そうとする動きが一層強まります。
そして1月10日。「炎上」を取り上げたテレビのニュース番組でメモと名刺が公開され、店舗名はもちろん、代理店の運営会社も特定されることになりました。
キャリアと代理店が同時に謝罪、「炎上」は収束へ
沈黙を守っていた大手通信キャリアと代理店の運営会社は、ここで動きを見せます。
ニュース番組での報道とほぼ同じタイミングで、公式サイトに「不適切なお客様対応に関するお詫びとご報告」を掲載して謝罪したのです。
不適切なメモに関する1月10日のTwitter投稿数は2万5,000件近くに上りましたが、両社が謝罪したこの日をピークに減少。その後、今回の件について特集を組んだワイドショー番組などもありましたが、「炎上」は収束に向かいました。
さて、ここで改めて、一連の流れについて整理してみましょう。
まず、「炎上」の早期収束に至ったポイントとして評価できるのは、両社が事態を的確に把握していたという点です。
ニュース番組で報じられるや否や謝罪文を同時にリリースできたのは、店舗名の特定に注目が集まっている状況を事前に認識し、いずれ突き止められるという事態を想定していたからと言えます。
代理店の運営会社のみならず、大手通信キャリアも「自分事」として謝罪したことで、「炎上」の飛び火を防ぐこともできました。
現場のクレームを把握し切れていなかった実態が浮き彫りに
ただ、一連の騒動を顧みると、企業側が現場のクレームを把握し切れていなかった実態も見えてきます。
ネットメディアの記事によると、男性客は「メモを発見後、すぐに代理店の責任者に納得できる説明を求めたが、らちが明かなかった」と証言しています。
さらに、「大手通信キャリアの本社に直接報告したいと申し出たが、直通の電話番号などは教えてもらえなかった」とも語りました。
クレーム発生からTwitter投稿まで2日間。それだけの時間的猶予があったにも関わらず、企業側はクレームを把握できていなかったというわけです。
今回、不適切メモを受け取った男性客は代理店にクレームを訴えましたが、実際には不満を表明しない代わりに、二度とその企業の商品やサービスを利用しないというケースも少なくありません。
こうしたサイレントクレームを放置してしまえば、SNS上などでネガティブな口コミが広がる恐れもあるのです。
また最近は、顧客が従業員に不当な要求をしたり、悪質なクレームをつけたりするカスタマーハラスメント(カスハラ)も問題化しています。
カスハラは今や主な離職理由の1つにもなっているほど。現場で働く人が苦痛に晒されないよう、企業が対策を講じるべきなのは間違いないでしょう。
謝罪や釈明など現場レベルの対応にすべてを任せるのではなく、適切なエスカレーション(上司の指示を仰ぐこと)を促す仕組みづくりが必要です。
カスハラとクレームの適切な区別が必要
今回の事例について、弊社の見解は以下の3点にまとめられます。
・「炎上」後の対応には概ね問題はなかった。
・企業側が現場のクレームを把握し切れない体制だった。
・カスハラに対する認識と対策が不十分だった。
業務改善に役立つクレームを、カスハラと同様に扱ってしまえば、取り返しのつかない事態を招きかねません。企業側に求められるのは、顧客の声をしっかり把握した上でクレームとカスハラを正しく区別し、対応できる体制の構築でしょう。
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