WEB記事などの削除は慎重に!企業の主義・主張だけでなく、ネットユーザーの心理にも配慮を
- 公開日:2019.12.12 最終更新日:2023.06.21
多くの一般企業にとって、マーケットに送り込もうとする自社製品は、その時点で考えられる最良のコンセプトや技術などを投入した自信作であることでしょう。
「たくさんの人に手にしてもらえるはず」「役に立って喜ばれるはず」という確信を持てない自社製品を販売している企業は、世の中に存在しないはずです。
半面、たくさんの苦労を重ねて開発された商品も、万人に等しく受け入れられる可能性は限りなく小さいのが実情です。
ある製品を気に入って使い続ける人がいれば、「使いづらい」「効果が薄い」と感じる人もいるでしょう。それぞれの人に異なる価値観が存在するのは、成熟した消費社会では極めて自然なことと言えます。
事実、インターネット上の商品紹介サイトには、あらゆる分野の製品についてさまざまな意見や感想が書き込まれています。企業の窓口などに寄せられる声も同様でしょう。
説明責任を果たさなければ世論の反発を招く
企業は製品やサービスを通し、世の中にさまざまな影響を及ぼす立場です。そのため常に、消費者や地域住民、取引先、株主などに対する説明責任があります。
自社製品に対するクレームなどが、どんなに不本意なものであっても、説明責任から逃れることはできません。
都合の悪い情報を無視、あるいは蓋をしようとすれば、世論の不信や反発を招くのは必至です。
画期的な効果に自信を持っている自社製品が「何の役にも立たない」と批判された場合、企業はどう対処するべきでしょうか?
誤った対処で世論の反発を招いてしまわないために、どんな備えが必要なのでしょうか?
次に紹介する事例を通し、リスク回避にふさわしい行動を検証してみましょう。
自社製品の批判記事、一方的な削除申請で「炎上」
2019年4月、科学雑誌Rに水処理装置を製造・販売するN社の主力製品に対する批判記事が掲載されました。公式サイトにも掲載された記事は、首都圏の大規模団地で起こった水道水のトラブルに関するものでした。
著名な化学者である筆者は、N社がマンションや集合住宅などの水道管の外側に取り付けるだけで配管内の赤錆を黒錆に変え、管の寿命を建物寿命まで延ばせると謳う機器を製造・販売していることを紹介します。
筆者は1個数百万円もの高額機器を導入した大規模団地で赤水が発生し続け、住民が困り果てているという状況を明らかにした上で、「謎水装置」と呼ぶこの機器の効果について「物理的には何の意味もないガラクタでしかない」と主張したのです。
これに対し、N社はRのWEBサイトのプロバイダに対して記事削除の仮処分申請を行います。
プロバイダは8月30日、削除申請があった批判記事も掲載されたRのサイトをすべて公開停止しましたが、これに納得しなかったRの編集長はサイトが突然削除された事実をFacebookで明らかにしました。
憲法で保障されている「言論の自由」の観点からも、仮処分の申請段階でプロバイダが公開停止措置を講じるのは異例のことです。
この日以降、SNSなどにはN社の姿勢に「都合の悪いことを削除しようとする」などと反発するコメントが殺到し「炎上」が発生します。
9月2日には、有名ブロガーとして影響力を持つ実業家のY氏が「ホットになってきた」と「炎上」をブログで取り上げました。
N社の機器を「超絶未来技術」と言い表したブログは注目を集め、機器の商品名と「謎水装置」をキーワードに含んだ9月3日のTwitter投稿数は、前日までの1日600件余りから1,800件超に跳ね上がったのです。
※自社調べ
主要メディアの関連記事数は結果的に増加
さらに、RのWEBサイトは削除されましたが、「炎上」が話題になったことでメディアによるN社の機器関連の記事数は増える結果となりました。
※自社調べ
WEBサイトの公開停止措置は9月5日に解除されますが、9月13日には別の企業でもこの機器を使っていることが判明し、SNS上では再び「炎上」が発生しました。
N社が仮処分まで申し立てて葬り去ろうとした批判記事は、結果的に多くの人の目に触れることになったのです。
N社に限らず、企業が削除の申し立てを行ったことでかえって「炎上」を招いたケースは枚挙にいとまがありません。
例えば、ある企業が大手口コミサイトに投稿されたネガティブな記述の削除を申し立てたところ、インフルエンサーがその事実を公開して「炎上」しました。
また、不動産投資の営業電話に対する苦情や疑問をブログに書き込まれた企業がDMCA(デジタルミレニアム著作権法)に関する申請を悪用して記事を削除した結果、「炎上」を引き起こした事例もあります。
N社は自社の公式サイトで、配水管防錆機器の独自技術や各種効果などを詳細に説明しています。
英国バッキンガム宮殿など世界的な建築物への設置結果が堂々と公開されていることからも、製品の性能には相当の自信を持っていることがうかがえます。
Rの批判記事に関しても短絡的に削除を求めるのではなく、科学的な見地の議論にも応じる姿勢を見せていたとしたら、少なくとも「都合の悪いことを削除しようとする」といった批判は避けることができたかもかもしれません。
客観的なリスク調査・分析が不可欠
このように、企業の一方的な主義・主張に基づく情報発信は極めて危険です。
申請先のサイト管理人や口コミ投稿者の炎上リスクはもちろん、申請理由に問題がないか専門的な知見や世論に沿って調査するべきでしょう。
申請前後はSNS投稿などのモニタリングを継続し、有事に備えておくことも必要です。
つまり、第三者の視点でネットユーザーの心理を見極めながら、世論や申請媒体のリスクを客観的に調査・分析する姿勢が求められるのです。
ネット上で「悪評」が拡散するのを恐れるあまり、正確な状況を把握しないまま削除などの措置を取ると、かえって世論を刺激してしまいかねず、「炎上」などを招きやすくなります。
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