東洋水産株式会社の事例から学ぶ企業のSNS対応について
- 公開日:2021.03.01 最終更新日:2023.06.08
※この記事は雑誌『美楽』2021年3月号の掲載内容を転載しております。
東洋水産のインスタントラーメン「マルちゃん正麺」の公式ツイッターアカウントが実施した、漫画を使ったプロモーションが議論を巻き起こしました。発端となった投稿は夫婦の日常を描いた四コマ漫画。その最終コマで描かれた、夫と息子が昼食で使用した食器を仕事帰りの妻が洗う姿に対して賛否の声が集まりました(※1)。
例えば「結局ジェンダーロールから脱却できないんですね」「なんで夕方帰ってきた母親に洗わせてるの」といった性的役割分業に関して批判的な投稿が行われました。
一方で「独自の解釈で変にいきり立って噛み付いている人に対処する必要はない」(※2)「これに反応するくらい日々つらいお母さんが多いと思うと悲しい」(※3)といった擁護する意見も多数投稿されていました。
これらの賛否の声を受けて、東洋水産は三つのポイントを押さえて対応を行いました。その結果、「真摯な対応に感銘した」(※4)「過去の炎上事案から学んだ完璧なアナウンス」(※5)といった投稿が行われ、ツイッター上で称賛されることになったのです。
では三つのポイントとは一体何でしょうか。一つ目は投稿を安易に削除しなかったことです。投稿内容の論調を分析しどのような投稿が寄せられているのか確認するまでの間、「今後の掲載については現在精査しております」と一次回答をし、第二話の公開延期を発表。その間に十分な分析と検討を行うことができたのです。
二つ目は批判意見も真摯に受け止めつつ公開を再開したことです。ツイートの内容を分析した結果、「この程度で炎上するのか」「炎上に屈するな」などの擁護の意見が過半数であり、批判的な投稿を行っているのは一部の読者であると判明。投稿数が沈静化したタイミングで漫画の公開を再開したのです。
三つ目がイラストレーターに責任はないと、担当者をフォローしたことです。「原作は弊社の責任の元に制作・公開しております」と言及することで、イラストレーターへの飛び火を未然に防止したのです。
このように東洋水産は漫画に寄せられた投稿に対して一部の人から批判を受けながらも、十分な分析と検討を重ねた結果、謝罪対応を行わないと結論づけました。
また漫画に対して批判の立場の人、擁護するファンの人の双方に配慮しただけでなく、イラストレーターへの配慮を行いました。こうした各関係者への行き届いた配慮は、過去の炎上した企業の対応事例を参考にしたのではないかと考えられます。
このように企業のSNSの炎上に対しては、どんな投稿が寄せられているのかを分析し、論調を十分に把握することに加え、過去の炎上事例やその対応を学び、自社にノウハウを蓄積しておくことが重要なのです。
※1 https://twitter.com/maruchanseimen_/status/1326329070548787201
※2 https://twitter.com/k27river_oliver/status/1327430358908817408
※3 https://twitter.com/asonoahiru/status/1327436037191135232
※4 https://twitter.com/notalMCZ/status/1328908869544726530
※5 https://twitter.com/mameloff_csgo/status/1328974294181847040