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「献体写真」の不謹慎投稿に見るコンプラ意識と真摯な謝罪の重要性

公開日:2025.02.28 最終更新日:2025.03.03

SNS炎上をもたらす原因の多くは、コンプライアンス意識が欠如した不適切な投稿です。非を認めて謝罪した場合も、「言い訳」や「開き直り」と捉えられるような言動をとれば、新たな批判を浴びて2次炎上を引き起こしてしまいます。 今回は、東京美容外科の医師と統括院長の投稿内容から、コンプライアンス意識と真摯な謝罪の重要性について考察します。

解剖研修でピースサイン、美容外科医が大炎上

2024年12月、東京美容外科の医師である黒田あいみ氏によるSNS投稿が波紋を広げました。

「頭部がたくさん並んでいる」「今回はfresh cadaver(新鮮なご遺体の解剖)で勉強をしにきていて」という説明が添えられた投稿には、グアムで行われた解剖研修の室内の様子や、笑顔でピースサインをする黒田氏の写真が含まれ、モザイク処理を施した献体も写っていました。

複数の写真を交えて解剖の様子を伝えた内容はInstagramなどに投稿したもので、いわゆる告発系のインフルエンサーがXに転載したことで拡散しました。X上では、「楽しそうに投稿する感覚が人間の感覚じゃない」「倫理観も道徳もない」「あまりに酷くて医学部1年からやり直した方がいい」といった批判の声が殺到しました。

本人と医院長の謝罪内容にも批判が殺到

黒田氏は「倫理観が欠けていた」と自身のブログで謝罪したものの、「一部のモザイク加工が漏れていた」「解剖研修から得られる学びを多くの医師に広く知ってほしいため投稿した」という「言い訳」のような記述もあり、「問題の本質を理解していない」という厳しい指摘が相次ぎました。

本件を受けては、東京美容外科の統括院長を務める麻生泰氏も自身のXで謝罪しています。しかし、「解剖をすることは外科医にとって、とても重要な意味を持ちます」「日本ともルールが異なります」などと的外れなコメントをしたことで、「解剖自体は誰も否定していない」「言い訳じみている」「院長を辞めて責任を取るべき」などの反発が多く上がりました。

実際に、シエンプレが運営するデジタル・クライシス総合研究所の調査でも、本件をめぐるSNS上の論調はネガティブな意見の割合が全体の83.9%を占め、「反省して頑張って」というポジティブな投稿を圧倒しました。

銀行融資取り消しなどのダメージに発展

自身への批判的な投稿が急増した中、麻生氏は「御献体をしてくださった方々への敬意が明らかに欠けておりました。今後、当院医師が同じ過ちを起こさないよう細心の注意を払ってまいります。本来は医学生がわきまえているべき倫理感が欠如している行動でした」と、再度の謝罪を余儀なくされました。

本件の炎上から約2週間後、東京美容外科では3名の医師が退職し、入職が決まっていた2名の医師は辞退しています。銀行からの新たな融資も取り消しとなり、麻生氏は改めて謝意を示した上で、X投稿から離れることを宣言しました。

しかし、炎上の影響はそれでも収まらず、麻生氏は慶應義塾大学医学部の非常勤講師を辞職しています。それに伴い、同大学の附属病院とのパートナーシップも解消された東京美容外科は、大きなダメージを被ることとなりました。

本件から学ぶべき3つのポイント

今回の炎上を踏まえて企業が学ぶべき対応は、以下の3点に集約されます。

■倫理基準の明確化と周知徹底

組織内で従うべき倫理観については基準を明確にし、全従業員に周知徹底しなければなりません。組織内で行う独自の研修なども事前に意図を共有するなど、意思統一を図ることも重要です。

■真摯な謝罪の重要性

問題に対する説明や謝罪を行う場合は、透明性を持って真摯に対応することが重要です。誤解を招く表現や論点がずれた謝罪は、2次炎上などのさらなる批判を招く可能性があります。

■SNSにおける情報発信のリスク・炎上による被害

ソーシャルメディアでの情報発信は、企業イメージに大きな影響を及ぼします。そのため、発信内容や関連する行動に対しては、慎重にならなければなりません。今回の炎上でも、医師の退職や入職辞退、さらには銀行融資の白紙化など、企業イメージの低下が深刻な被害を招くこととなりました。

別の病院では看護師が不適切な医療行為を投稿

医療機関をめぐっては、2025年1月に奇しくも本件と類似する事例が発覚し、物議を醸しています。

千葉大学附属病院に勤務しているとみられる看護師が、2023年秋頃から「インシデントは面倒なので隠ぺいしている」「薬は飲ませたフリをして捨てる」などと投稿していたもので、不適切な医療行為の疑惑はテレビニュースでも取り上げられました。

千葉大学附属病院はメディアの取材に対し、「全診療科を対象に事実確認を進めており、事実が判明した場合の処分は検討中」としています。

投稿内容が事実なら病院側の責任は重大で、隠ぺいは許されませんが、従業員が自社の業務の信頼性に関わる情報を安易に発信する状況を防ぐには、組織内の倫理基準やSNS投稿のリスクを理解してもらうことが必要です。

炎上リスクを最小化する研修や文書作成を支援

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炎上時も安心の「危機対応支援サービス」

万一、炎上が発生した場合も、弊社の「危機対応支援サービス」をご利用いただけば安心です。炎上時は、ネット上の口コミ評判やニュース記事などの論調をモニタリングし、想定されるリスクを洗い出します。

提携会社と連携した緊急のコールセンター開設や、記者会見のセッティング・運営、メディア側の疑問を払拭するプレスリリース執筆といった事後対応も手厚くサポートします。

事態が一段落するまでは、顧客企業に関するネット上の投稿やネットメディアの論調を詳しく把握・分析し、世論の風向きや変化も漏れなくご報告します。

検索エンジンで表示される顧客企業の関連キーワードも細かくチェックし、不適切な語句が出てきても速やかな沈静化を図れます。

炎上のトレンドは日々移り変わっており、何がきっかけで自社に批判の矛先が向くかわかりません。リスクを最小限に抑え、非常時も適切な対応を取る体制を構築するには、専門会社のサポートを頼りにしていただくことが早道です。

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