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SNSでの「新CM予告」に学ぶネットミームの危険性

公開日:2024.12.06

SNSなどで企業がプロモーションを行う際は、特定の層を刺激する表現を避けなければなりません。不用意に踏み込んでしまうと、思わぬ批判を招いてしまうことがあります。今回の記事では、ごく普通のプロモーション活動だったはずの「新CM予告」が炎上してしまったビール会社のX投稿から、ネットミームを用いる際の注意点などを考察します。

公式Xの縦読みメッセージが炎上

「きみは未来のスーパースター」

2024年10月24日に開かれた「プロ野球ドラフト会議2024」を中継したテレビ局が、同日付の新聞のテレビ・ラジオ欄(ラテ欄)に寄せた縦読みメッセージは、プロ野球を夢見る若者へのエールとして、ネット上でも話題となりました。

新聞のラテ欄などにおける縦読みメッセージは、「粋な言葉遊び」として幾度となく用いられています。ところが、ビール会社大手A社が公式Xアカウントに投稿した新CM予告の縦読みメッセージは、強い批判を浴びて炎上することとなりました。

A社のポストには「手震えるんだけど」という投稿文と共に、ビールに関する文章が書かれたメッセージ画像が表示されていました。赤い丸で囲まれた計16字を繋げた文章の内容は、人気の男優と女優を起用した新CMのテレビ放映が、明後日から始まることを示唆するものでした。

ところが、このメッセージが投稿された翌日、A社は公式Xで「配慮に欠けた表現がございましたので、当該ポストを削除させていただきました。ご不快な思いをおかけしましたことを、謹んでお詫び申し上げます」と謝罪しています。

新CMを予告したに過ぎないメッセージは、なぜ炎上してしまったのでしょうか?

元ネタは人気アイドルグループのメンバー脱退騒動

今回の投稿を批判した層の中心となったのは、男性のアイドルグループを多数輩出してきた旧芸能事務所大手B社のファンでした。

投稿の元ネタは、B社でデビューした人気アイドルグループのメンバー脱退騒動を悲しむファンの投稿が元です。そのため、多くのファンから「悪趣味だ」と批判されました。

さらに、A社は2023年にB社の創業者の性加害問題が表面化した際、B社の所属タレントの広告起用を取り止める考えを表明しています。

その上、A社の社長は「B社のタレントは二度と起用しない」と宣言しました。トップ自らが「絶縁」を言い渡したにも関わらず、B社のタレントのファンから生まれたネットミーム(ネット上で拡散されたコンテンツ)を自社のプロモーション活動に用いたことが、火に油を注ぐこととなったと考えられます。

炎上を受け、A社の広報担当者はメディアの取材に対し、「このネットミームの背景を十分に理解していなかった」と釈明しました。

しかし、SNS上では「脱退騒動を小馬鹿にした」「人の悲しみを踏みにじった」などと憤る声が続出し、「ネットミームで遊ぶなら出処や由来くらいは確認しておけ」といった強い反発も上がっています。

また、謝罪文の「配慮に欠けた表現」「削除させていただく」という言い回しには、「具体的に何に対して謝罪しているのかわからない」「『削除させていただく』という日本語がおかしい」といった指摘が寄せられました。

投稿文の「手震えるんだけど」という表現についても、アルコール依存症を想起する人が一定数おり、「アルコールを販売する会社としてどうかしている」という厳しい論調が聞こえてきます。

ネットミーム使用に欠かせないのは慎重さ

今回の事例から学べるのは、企業がネットミームを使用する際は、元々の発信源や背景を調査し、自社の利益を追求するプロモーション活動に取り込むことが適切かどうかを慎重に判断する必要があるということです。

SNSで多くの人に親しまれているネットミームは、そもそもバズりやすいという利点があります。ただし、「流行っているから便乗しよう」という安易な発想は禁物です。特定の企業活動とは全く関係のないネットミームを自社の利益のために引用することを、不快に感じる人がいないかどうか、十分に注意しなければなりません。

実際に、A社の広報も「このネットミームの背景を十分に理解していなかった」と釈明しています。しかし、まさにこのような甘い姿勢が、炎上の要因になったと考えられるのです。

また、いわゆる「ご不快構文」の謝罪文からは、誰に何を謝っているのかが伝わってきません。そのため、心から謝罪するという誠意も見えにくく、「定型文で適当に謝っている」という印象を与えてしまいます。誤字・脱字の単純ミスはもちろん、日本語の作法を逸脱した言い回しが批判されるケースも多く、社会の公器として立場に則った十分な注意が欠かせません。

これらを踏まえると、今回の謝罪文は「何に対して謝罪をしているのか?」「なぜ、投稿を削除したのか?」という点を、明確に示す必要があったと言えます。

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まずは、ネット上の口コミやニュース記事などを細かく収集し、ネガティブとポジティブの論調を正確に分類した結果を踏まえ、想定されるリスクを診断します。

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事態が沈静化するまでは、顧客企業に関するネット上の投稿やネットメディアの論調をモニタリングし、批判の度合いの微妙な変化などをつぶさに報告します。

検索エンジンで表示される顧客企業の関連キーワードも監視し、不適切な語句はポジティブなキーワードに置き換えていくことが可能です。

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