大手焼き肉チェーンの女性半額キャンペーンに見るジェンダー炎上の論調変化と注意点
- 公開日:2024.10.24
社会的・文化的な性別(ジェンダー)に基づく偏見や格差・不平等などによって生じるジェンダー問題は、社会的な敏感さが増しているテーマです。無意識に先入観や偏見が入り混じった発信をしてしまい、ジェンダー炎上に見舞われる企業は後を絶ちません。今回の記事では、ジェンダー炎上を巡る近年の論調と注意点について考察します。
目次
「女性のみ」の条件が「男性差別」と物議
大手焼き肉チェーンを運営するA社が、2024年9月に実施した食べ放題コースの半額キャンペーンは、SNSにおけるジェンダー炎上の論調が変化している状況を強く印象付けました。ポイントとなったのは、キャンペーンの対象が「女性のみ」だったことにあります。
A社の公式Xがキャンペーンの告知をすると、SNS上には「これは行きたい」「次の女子会はここで」など歓迎する意見が寄せられました。 賛成派から聞かれたのは、「食べ放題は女性の方が損だから」「女性の方が少食だから」「男性も女性を誘って牛角に行きやすい」「妻が半額になるから、家族で行くと安くなる」といった主張です。
一方で多く見られたのは、「男性差別」「男女平等ではない」「このご時世、性別でサービスに差をつけるのは許されない」など憤りの声でした。 反対派からは、「A社に限ったことでなく、レディースデイや女性専用車両など、日常のあらゆるシーンで男性は軽視されている」といった趣旨の意見が多く上がり、「他企業がジェンダー問題を気にしてレディースデイの廃止で動いているのに…」「A社はとんだ男性蔑視企業であることがわかったので二度と行くことはない」といった厳しい論調も聞かれました。
「性自認女性」の半額適用を報告する投稿も
さらに、著名なインフルエンサーが「XユーザーからA社への問い合わせで、性自認女性も半額との回答があった」ことなどを取り上げたことで、キャンペーンはさらなる物議を醸しました。
キャンペーンの告知が行われた2024年8月30日~9月1日の3日間の関連投稿件数は約2.6万件でしたが、このインフルエンサーが投稿をした9月2日~4日の3日間の投稿件数は20万件と急増しています。
実際に、男性客が予約の際に「性自認女子」と伝え、女装をして入店したところ半額が適用されたという投稿もあり、「男性蔑視」などの文脈とは異なる観点でも波紋が広がりました。
すべての性に対する表現には細心の注意が必要
このように、レディースデイや女性半額キャンペーンなど、特定の層だけを優遇するキャンペーンでは優遇されない層が生まれるため、議論(批判)を呼びやすいと言えます。
近年は女性蔑視だけでなく、社会的なジェンダー意識の高まりを背景とした男性蔑視の指摘も増えているため、すべての性に対する表現には細心の注意を払う必要があるでしょう。
これらのことを踏まえ、企業がジェンダー炎上を防ぐために注意するべき点は、以下の内容です。
■特定の性別を優遇するキャンペーン
「レディースデイ」など特定の性別を優遇するキャンペーンは一定の批判を呼ぶため、性別による不公平感を抑えるなどの工夫をすることが重要です。また、性別を対象とする場合は、LGBTQ+に関連して言及されることもあるため、身体的性別なのか性自認なのかについても考慮する必要があります。
■性別によって役割を決めつける表現
「女性は家事・育児」「男性は仕事」など、性別によって役割を決めつけるような表現などは、受け手の誤解を招いたり、うがった見方をされたりしてしまいかねません。そのため、性別を問わない表現を心がける必要があります。
■事前チェック
性別のみに限定された話ではありませんが、企業としてどのように発信するのか、受け手にどのように見られるのかを事前に十分チェックしておくことが重要です。
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