「紅麹」問題に学ぶ炎上時の広報対応
- 公開日:2024.04.18 最終更新日:2024.08.09
機能性表示食品のサプリメントを摂取した人々の間で腎疾患などの健康被害が広がっている問題は、社会全体を大きな不安に陥れています。企業がこうした問題の当事者となった場合、どのような広報対応が求められるのでしょうか。世間からの疑問や反発を解消し、炎上の影響を最小化させるための取り組みについて考察します。
目次
サプリメント摂取者の健康被害が続出
製薬会社A社の「紅麹(べにこうじ)」を原料とした機能性表示食品のサプリメントを摂取した人々の間で健康被害が広がっている問題は、2024年3月22日にA社が健康被害の発生と商品の自主回収を発表した後もなお、原因究明の調査が難航しています。
サプリメントの摂取後に腎疾患などで亡くなった人の数は全国で5人に上っており、今回の問題が社会に及ぼしている不安は計り知れません。
こうした中、SNS・Web上ではさまざまな論調の書き込みが飛び交い、A社の広報対応を問題視する声も上がっています。
SNSへの投稿件数はA社が健康被害の発生と商品の自主回収を発表したことをきっかけに急増し、4月2日にはピークの約32万件に達しました。直近1カ月間の投稿件数は190万件に迫る勢いで、国民の関心の高さが伺えます。
製薬会社を応援、「がんばれ」のキーワードがトレンド入り
もちろん、これらの投稿内容は、問題となった商品の製造・販売元であるA社に対する批判的な論調が多く見られました。
しかし、4月2日にトレンド入りしたのはA社の社名の後に「がんばれ」というメッセージが続くポジティブなキーワードでした。
その理由は、A社の商品を愛用する消費者からの応援があったからです。政府に不信感を抱く反ワクチン派のSNSユーザーが、A社ではなく厚生労働省を批判する動きも見られました。
また、一連の健康被害についてA社の「紅麹」が原因と特定し、厚労省に報告した大学教授が別の製薬会社から計1億円もの謝礼金を受け取っていたことが明らかになった中、「A社は陥れられたのではないか?」との見方をする人々も一定数に上っています。
さらに、有力な経済団体の代表がA社を強く批判したことを受け、「圧力だ」「職権乱用」と批判する声が多く上がったのも事実です。
A社の商品と健康被害の関連性が確定していないにも関わらず、A社を執拗に責め立てる報道をしたマスコミへの批判も見受けられました。
加えて、老舗の純日本企業であるA社を「同じ日本人として応援したい」という主張も聞かれるなど、さまざまな立場からの応援があったことがわかります。
こうした状況は、SNS上やメディアの取材などで当事者を安易に批判するような投稿・発信は避けるべきだという教訓を表していると言えるでしょう。
初動対応に遅れ 症例把握から自主回収まで2カ月
一方、A社の広報対応については、いくつかの問題点が浮き彫りになっています。
A社は2024年1月11日の時点で、自社のサプリメントを摂取した人が腎疾患の症状を訴えているという事実を医師からの問い合わせで把握しています。
しかし、健康被害の発生と商品の自主回収を発表したのは、2カ月余り後のことでした。
最初の症例把握から商品の回収発表まで大きなタイムラグが生じたことについて、A社は「原因がわからなかったため」と釈明しています。
もちろん、173社に上る「紅麹」の供給先に「原因不明だが、自社の『紅麹』を使った商品はすべて回収してほしい」と求めるのが容易ではないことは想像できます。
とは言え、死亡事例まで出た中で情報を開示しなかったことは、適切ではありませんでした。「原因がわからない」という状況も含め、速やかに現状を報告すべきだったと考えられます。
「紅麹」をめぐるデマやフェイクニュースも横行
また、「紅麹」そのものへの不安を払拭するA社の動きも、不十分だったと言わざるを得ません。
ネット上ではデマやフェイクニュースも横行し、「『紅麹』そのものが危険なのではないか?」と思わせる風評被害が拡大したものの、誤情報を是正するA社のリリースや発信はありませんでした。
その結果、小売店や食品メーカーが広報対応に追われることになったのです。
ちなみに、過去に食品関連のインシデントをめぐって消費者を安心させた広報対応の一例としては、以下のケースが挙げられます。
ある食品会社が、自社の商品を購入した人から「異物が入っている」との指摘を受けて調べたところ、虫の一部が混入していることが判明しました。
この会社は商品の自主回収を発表しましたが、初動のリリースに明記されていたのは回収対象となった商品の製造番号でした。
そのため、商品を購入した人々は「自宅にある商品を食べていいのか?」といったことを容易に判別できたのです。
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