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デジタル・クライシス白書2023を速報!最新の炎上分析データから見えることとは【第99回ウェビナーレポート】

公開日:2023.01.18 最終更新日:2023.06.21

2022年度下期の炎上件数は過去最多

桑江:2022年1〜11月の炎上発生件数は月平均126.5件で、11月は過去3番目に多い206件に達しました。
2022年上半期は100件を切っていたのですが、6月以降は再び100件台が続き、下半期の月平均は過去最多の159.5件を記録しています。

また、2022年の炎上主体は著名人が57.3件、法人等が49.3件、一般人が40.7件でしたが、注目すべきは法人等と一般人の伸びです。2020年は法人等が29.8%、個人は18.9%に過ぎませんでしたが、2022年はそれぞれ35.4%、29.9%を占めるまでになりました。
一般人の不適切な言動であっても、所属先の企業に飛び火するといったことが実際に起こっていますので、企業としての炎上リスクはものすごく高まっていることが分かります。

一方、特定の層を不快にさせるような内容・発言・行為が炎上理由の最多を占めている状況は例年と変わりません。ただ、2022年はジェンダー問題など一般人も含めた主張が激しく対立するケースが目立ち、それが炎上が増えた要因にもなっていると思われます。
法人等に該当する炎上事案のうち、炎上発生件数が最も多かった業界は「IT・メディア」の140件で、2022年もテレビ番組などの炎上事例が見受けられました。

2021年にトップだった「娯楽・レジャー」が138件で続きましたが、2022年に50件だった「政治」は22件に半減しています。
企業規模の観点では、上場企業の割合が初の20%台(20.1%)に達しました。従業員数別では1,000人以上の企業が47%と例年同様にトップだった半面、2022年度は100人未満の企業の割合が前年の10.3%から倍増したのが特徴です。

クローズドな場の言動も注意が必要な時代に

2022年の炎上事例を改めて振り返ると、人気女性プロゲーマーが2月の生配信で、身長170センチ以下の男性に対し「人権ない」などと発言して批判を浴びました。
「人権ない」という言い回しはゲーム好きのコミュニティーではよく使われていますが、閉ざされた世界で暗黙のうちに使われている用語が外に出たときにどんな意味で捉えられるのかを意識しなければならなくなった事案でしょう。

4月には、全国紙の全面広告に掲載された「胸の大きな女子高生」の漫画が物議を醸しました。大手牛丼チェーンA社の常務取締役が大学の社会人向け講座で不適切な発言を口にし、SNSに投稿されて大きな問題になったのも記憶に新しいところです。
先ほどの紹介した生配信の炎上事例はオープンな場での発言が招いたものですが、クローズドな場の言動であってもどれだけ影響を及ぼすのかをしっかりと認識しなければなりません。

第三者による告発動画の投稿が相次ぐ

ドライブレコーダーや携帯電話のカメラで撮影された告発動画が多かったのも、2022年の炎上事例の特徴です。2019、20年に続発したバイトテロは自分たちで自分たちを撮った動画が拡散されましたが、2022年は第三者が「これはひどい」と撮影した動画がTwitterなど告発という形で出回って問題視されています。
中古車販売大手B社がナンバーのない車両を公道で走らせていたという目撃情報がTwitter上に複数投稿され、「違法ではないか」と批判を浴びたのは、その一例です。

パワーハラスメントなどの事例も非常に多く露呈しました。パワハラ自体は以前からありますが、被害者側がインターネットなどを介して会社や上司を告発しやすくなっています。
住宅建築業のC社に勤務していた男性社員が自殺した件はSNS上でも騒動を巻き起こし、パワハラに絡む問題が大きくなることを証明しました。

飲食店の異物混入も騒動に

飲食チェーンD社のフランチャイズ店舗での異物混入も騒動になりました。店舗の従業員を名乗る人物が「大量のナメクジが発生している」とツイートし、店舗の運営体制や店長の態度への不満も表明。本部であるⅮ社の対応はスピーディーで一定の評価を得ましたが、店舗は閉店に追い込まれています。

ただ、従業員を名乗った人物はYouTubeの配信者で、異物混入がニュースになった後に自分のチャンネルで事の顛末を語って視聴者を集めていました。
今回の事例が当てはまるかどうかは別にして、何らかの意図を持って企業の不手際などが拡散されることは十分に起こり得ます。フランチャイズを運営している場合は、現場でインシデントが起きたときにどう対応するかも決めておかなければなりません。

SNSの普及で広がった炎上リスク

SNSの普及により、企業においては部署に関係なく誰もが炎上に直面するリスクがあります。例えば、ドラレコが普及したことで、企業のロゴが入った営業車のドライバーが危険な運転をしている動画がTwitter上などで告発されるようになりました。
こうした問題は2022年だけでも数件発生しており、公式サイトで謝罪文をリリースした企業も存在します。企業の炎上リスクはSNSや広報、人事の担当者、あるいは経営者などに限定されていましたが、これからは営業現場などのスタッフもリスクを免れることはできません。

店舗などの監視カメラや、誰もが簡単に証拠を押さえられるスマートフォンの動画はすぐに拡散され、発信力のある著名なインフルエンサーや週刊誌などのメディアにリークされれば大きな話題になってしまいます。
炎上の予兆となる投稿がSNSに上がって数週間が経過した後、インフルエンサーが取り上げたことで突然炎上する事例も複数発生しているので、簡単に「大丈夫だった」と判断できなくなっています。

また、そうして炎上してしまうと別のリークが多数寄せられ、過去の不祥事などが掘り起こされたり、別の炎上ネタが投稿されたりして「炎上の連続性」に見舞われてしまうことが珍しくありません。
そのタイミングで言い訳などに終始していると、さらにイメージが悪化する場合もあります。
企業が炎上に巻き込まれたときは社内のコミュニケーションをしっかり取り、どういった追加情報が出る可能性があるかを見極めた上で、対応を決めなければなりません。
また、社内向けと社外向けの情報を使い分けるとすぐにリークされてしまい、「二枚舌」と批判されるリスクが高まります。

2023年も謝罪の仕方が問われる

「ご不快にさせて申し訳ございません」といった「ご不快構文」は、具体的に自社の何が問題だったのかを明らかにしていません。不快にさせたことを詫びたたけの典型的なクレーム対応で、問題に真摯に向き合っていないと感じられてしまいます。

「誤解を招いてしまい申し訳ございません」という表現も「自分たちはそんなつもりはなかったのに、誤解したあなたが悪い」と受け取られ、火に油を注いでしまいかねません。いかに真摯に向き合い、謝罪するかが問われている昨今、この二つの表現は避けるべきでしょう。
炎上した後の事故対応で失敗してしまうと、よりネガティブに見られてしまうため、いかにしっかり謝罪するのかが2023年も引き続き問われるところです。
ただし、何が何でも謝れば良いという話ではありません。謝るべきかどうかは事案の内容や世論も踏まえて判断し、謝るべきとなればしっかり謝るのがポイントです。

企業に求められる「Brand Integrity」

2023年も1、2月は炎上件数が多めに推移すると思われます。新型コロナウイルス感染の第8波も徐々に深刻化していますが、そうした社会不安も炎上につながりますので、上半期もリーク文化などに対する注意が必要でしょう。

企業に求められるのは、ブランド(企業)に対する消費者の信頼を醸成するため、ブランド(企業)としての誠実さ、約束を果たす「Brand Integrity」です。
各ステークホルダーに対して真摯に、誠実に対応しなければなりません。もちろん社内に対しても同じで、大事なステークホルダーである従業員への対応にも十分な配慮が必要です。

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