大手牛丼チェーンの不適切発言から学ぶ炎上の連続性と対応法
- 公開日:2022.08.01 最終更新日:2023.06.21
※この記事は雑誌『美楽』2022年8月号の掲載内容を転載しております。
2022年4月、全国展開する牛丼チェーンA社の常務取締役企画本部長B氏(当時)が早稲田大学の社会人向け講座において不適切発言をし、炎上する事態が発生しました。
問題の発言は、若い女性をターゲットにしたマーケティング施策についての講座でのものでした。「田舎から出てきた右も左も分からない若い女の子を無垢・生娘のうちに牛丼中毒にする。男に高い飯を奢って貰えるようになれば、絶対に食べない」と話し、「生娘をシャブ漬け戦略」と表現したのです。これらの発言に憤りを感じた女性受講者がフェイスブックに抗議の声を投稿。その投稿がツイッターで拡散され、世間から激しいバッシングを受けたのです。炎上を受け、同社は公式サイトに謝罪文を掲載し、B氏の取締役解任を発表。新商品の発売延期や株価の下落にまで発展する事態となりました。
本事案が炎上した要因は、人種・ジェンダー問題という非常に炎上しやすい話題の発言であったことや「シャブ漬け」というワードが犯罪を連想させるものであったことが推測できます。そして、B氏は、常務取締役という責任あるポジションであるだけでなく、敏腕マーケターとしても有名な人物でした。「実績あるマーケターによる問題発言」というインパクトも炎上要因の一つといえるでしょう。また、A社では前月にも別の炎上事案が発生しており、今回の不適切発言と紐付けたネガティブなツイートが多数確認されています。さらに翌月には、新たな炎上事案が発生。この事案に関しても、これまでの事案と紐付けたネガティブな投稿がされています。このように、炎上は過去の失態も掘り起こされながら加速していくのです。
弊社の調査(※1)では、炎上事案発生後、メディアによって記事化・放送されるスピードは約半数が24時間以内であることが明らかになっています。そのため、炎上を回避するには、的確かつ迅速な対応が重要といえます。今回、炎上した吉野家は、不適切発言から3日以内に、セミナー主催者への謝罪、新商品の発売延期、謝罪文の公開、取締役解任と、迅速な対応を行っています。スピーディーな対応により、炎上はしたものの、比較的早く沈静化したと推測できます。
本事案に限らず、有名企業の重役の失言によって炎上した事案は多数発生しています。いずれも取締役の不適切発言が批判を浴び、企業のイメージダウンなどに繋がっています。セミナーや入社式など、人数が限定されたクローズドな場だったとしても、SNSで拡散され、炎上するケースがほとんどのため、発言者は受け手側の思考を意識することを忘れてはいけません。また、前述した通り、過去の不祥事が掘り起こされて、炎上が加速してしまうこともあります。一度炎上してしまうと、連続して炎上する可能性が高まるのです。こうした炎上を繰り返さないためにも、早期にトラブルを検知し、適切な対応を取るためのモニタリング体制の構築や経営幹部向け研修の実施も必須といえるでしょう。
※1 弊社刊行資料「デジタル・クライシス白書2022」より