差別発言によるSNS上の炎上は予期できた。企業に欠かせないWEB人物調査の重要性
- 公開日:2020.02.17 最終更新日:2023.06.21
イタリアのセリエAにスペインのリーガ・エスパニョーラ、ドイツのブンデスリーガ、イングランドのプレミアムリーグ―。
言わずと知れた、欧州プロサッカーの4大リーグです。
世界の一流選手が躍動する華やかな舞台ですが、近年、そんなイメージと程遠い深刻な問題が持ち上がっています。
それは、頻発する人種差別行為です。
各国のスタジアムでは、観客に心ない言葉を浴びせられるプレイヤーが後を絶ちません。
さらに、選手たちを悩ませているのはスタジアムだけではありません。
プレミアリーグの名門チーム、マンチェスター・ユナイテッドFCで活躍するギニア系のポール・ポグバ選手は、SNS上で被害を受けました。
独自の抗議活動に出る決断を下したポグバ選手。イギリスのPA通信のインタビューで人種差別問題について、こう答えました。
「無知だ。物事に無知とか、そういうことだ」
目次
「知的な人物」が問題発言をしないとは限らない
多くの人は「人種差別が良いことか悪いことか、それが分からないほど『無知』な人はいないだろう」と思うかもしれません。
しかし、差別発言をする人は、2つの意味で「無知」であると言えます。
1つは、国籍や肌の色で人を差別することが、いかにナンセンスであるかを理解していないという無知。
もう1つは、その無知を堂々と世の中に晒すことがどれほど恥ずべきことかを知らないという無知です。
つまり、無知の上に無知を重ねた結果が、差別だと言えます。
これから紹介するのは、人並み以上の知性を備えているはずの学者がSNS上で差別発言を連発し、勤務先の大学や関係企業も巻き込んでの「炎上」に至ったという事例です。
世間的に見て「知的な人物」が問題発言をしないとは限らないという点に加え、自社事業と関わりのある人物に隠されたリスクを把握することがいかに重要であるかを痛感させられます。
早速、事の顛末を振り返ってみましょう。
「中国人は採用しません」発言に非難が殺到
「炎上」の引き金となったのは、2019年11月20日に書き込まれたTwitter投稿でした。
T大大学院特任准教授で、AI開発などを手掛けるD社代表取締役CEOも務める工学博士のO氏が「弊社Dでは中国人は採用しません」「そもそも中国人って時点で面接に呼びません。書類で落とします」などとツイートしたのです。
ネット上にはたちまち「人種差別」「国籍差別」といった非難があふれ、翌11月21日には中国メディアも報道する事態となりました。
騒動を受け、ツイートから3日後の11月24日には、大学院側が差別発言について「遺憾である」という内容の公式コメントを発表。
差別発言はあくまでもO氏の個人的見解で「われわれとは一切無関係」という姿勢を明確にしました。
O氏が講師を担当する大学院講座に寄付をしていた3社も同様の見解を示し、今後の寄付を中止する方針も表しました。
D社への出資企業も、いかなる差別にも断固反対する姿勢を表明し、O氏の発言を謝罪。
D社にデータ提供などを行っていたスイス企業は、業務提携の解消に踏み切りました。
※自社調べ
11月28日には、大学院側が学府長名義で学生向けの声明を発表し、差別発言について「到底容認できるものではない」と、改めて厳しく非難します。
また、O氏の不適切な書き込みなどに関する調査委員会を設置したことも明らかにし、今後の対応について検討を始めました。
驚くことに、O氏は自身の発言で「炎上」を招いた後も、Twitter上で「資本主義の文脈において、パフォーマンスの低い労働者は差別されてしかるべきです」などと独自の主張を重ねました。
しかし、O氏の発言への非難は収まらず、12月1日、ついに謝罪することに至りました。
※自社調べ
勤務先の大学院、関係企業は迅速対応で「炎上」を沈静化
今回の「炎上」を受けて、大学院も企業側もスピーディーな謝罪、寄付中止の措置に加えて、O氏の差別発言には自分たちも憤っている、つまり「われわれは世間の側についている」という意味のメッセージを発信しました。
この結果「炎上」の責任はO氏個人が負う形となり、企業に対する本格的な「飛び火」を避けることができたのです。
「炎上」が企業に「飛び火」してしまえば、億単位の損失を招く恐れもあります。
例えば、ある事件への関与が疑われてバッシングを受けていた女性タレントを、自社の洋服モデルに起用したA社の場合。
消費者の反感を受けてプロモーション用のコンテンツ削除を余儀なくされたばかりでなく、時価総額にして24億円もの大損害を被りました。
そうした事態と比べれば、O氏の発言に対する大学院と企業側の初動の早さ、公式見解で示した断固たる姿勢は、善後策としては極めて模範的だったと言えます
スピーディーで断固としたこれらの対応は、予期せぬバイトテロに見舞われた企業が「炎上」被害から身を守る手段としても応用できるでしょう。
O氏の「炎上」リスクは事前に把握できなかったか?
謝罪に追い込まれたO氏はその後、どんな動きを見せたのでしょうか?
実は、いったん頭を下げたにも関わらず、再び自らの発言を正当化するツイートを続けていたのです。
次々と投稿されたのは「T大は『多様性』の名目でAI研究者をキャンパスから追放しようとしている」など、反省の色が見えない内容の書き込みでした。
こうした行動を知ると、1つの疑問が浮かんできます。
それは、大学院や企業側はO氏の性格や言動に潜んでいたリスクを事前に察知できなかったのだろうか?ということです。
事実、O氏の過激発言は今回に限ったことではありません。
Twitter上では2012年から、乱暴な言葉遣いで他人を見下すともとれるツイートを繰り返していました。
感情的で攻撃的としか言いようのない書き込みの数々を見れば、O氏が挑発的な言動を好む性格の持ち主であることは明らかだったと言えます。
差別発言に対し、断固とした対応を貫いた大学院側。年が明けた2020年1月15日には、O氏に懲戒解雇処分を下しました。
案の定、O氏はTwitter上で「処分は不当だ」と反発しましたが、自らの非を認めない態度に改めて批判が浴びせられました。
ただし、O氏への厳格な対応で世の中の理解を得たとはいえ、大学院や企業側がしっかりと顧みておくべき点があります。
それは、AI開発の第一人者という側面だけに目を奪われてO氏の「本質」を看過していた、あるいは見て見ぬふりをしていたと疑われても仕方がないということです。
社会の公器として、再び世の中の誤解を招かないための教訓とするべきでしょう。
シエンプレなら60項目以上を調査! SNS投稿履歴などで「炎上」の火種を早期発見
SNS投稿に「炎上」の火種となるリスクが存在するのは分かったとしても、一体どう備えたらいいのだろうか?
そう首をかしげる企業担当者も多くいらっしゃることでしょう。
WEB人物調査は、そうしたリスクを早期に発見・回避する上で最適なソリューションです。
例えば、シエンプレの調査は60以上ものリスクチェック項目を設定しています。
O氏について試してみると「悪口」「不快感」「モラルの欠如」「ヘイトスピーチ」など多数の項目が該当しました。
O氏が「炎上」したのは今回が初めてでした。
しかし、本人アカウントのSNS投稿を洗い出していれば、以前からの過激な書き込み履歴を把握できたはずです。
その上で、WEBリスクを誘発しかねない人物との取引は避けるといった対応を取っていれば、「炎上」に巻き込まれることも防げたと言えます。
ただし、投稿履歴を洗い出すプロセスを自社内で実施するとなると、相当な時間と人手が必要となるでしょう。
不慣れな作業のため、過去の問題投稿を見逃す恐れもあります。
しかし、デジタル・クライシス対策のトップカンパニーである弊社にお任せいただければ、自社スタッフは本業に専念でき、調査漏れも防ぐことができます。
さらに、WEB人物調査でカバーできるのは、SNS投稿の履歴だけではありません。
就職内定者などの学歴や職歴詐称、反社会勢力とのつながりの有無、過去に起こした事件の把握、そして将来的な犯罪リスクの分析も可能です。
企業の「炎上」リスク対策を検討されるなら、ぜひ弊社にご相談ください。