SNS教育担当者必見!新入社員のためのSNSリスクマネジメント【第81回ウェビナーレポート】
- 公開日:2022.04.20 最終更新日:2024.03.05
目次
従業員の不適切投稿は企業を窮地に追い込む
桑江:なぜ、社内研修が必要なのか。まずはソーシャルメディアの普及に伴い、従業員の不適切投稿で企業が深刻な損害を受ける事例が後を絶たないことが挙げられます。
例えば、リリース前の情報や社員証が写った画像をSNSにアップし、情報セキュリティー体制への不信感を招いたケース。タイへの社員旅行で泥酔して全裸になった写真をSNSに投稿し、国際問題に発展しかねない事態に陥った事例もあります。
銀行を訪れた芸能人の個人情報が漏洩し、株価が大暴落して口座を解約する顧客が現れたのも現実に起こりました。
炎上した個人のアカウントの多くは勤務先の企業名などを明記していませんが、例え匿名、あるいはプライベートアカウントの個人的な言動であっても、企業側に責任や対応が求められる風潮が強まっています。
事実、個人アカウントでのヘイト発言が大問題になった投稿者の勤務先が特定されて炎上し、最終的にはその企業が謝罪に追い込まれたケースもあります。
個人の不適切投稿が企業に飛び火する事例は、少なくとも毎月数件は発生しているため、社内研修が必要だということです。
全従業員がソーシャルメディアの仕組みを理解し、不適切投稿が深刻な損害を生みかねないということを共通認識として持つことが、企業の価値や信用を守ることに直結します。
弊社、あるいは弊社が所属するグループ全体はもちろん、ご依頼をいただいたクライアント先でも研修をさせていただいていますが、そうした取り組みを通して従業員全体の意識向上や炎上リスクの低下を図ることが重要です。
SNS発信のリスクに疎いZ世代
とりわけ「新入社員のためのSNSリスクマネジメント」が必要な理由は、いわゆる「Z世代」はSNSで発信すること自体に特別な意識は皆無だということです。
昔からインターネットを使っている人たちは、自分の名前などプライバシーを晒すことに抵抗がありましたが、今の若者は普通に書き込んでしまっています。
なぜ、そんなプライベートなことまで投稿するのかを考えてみると、SNS投稿は誰もが見られる状態だということを自覚していないからだと言えます。
SNSの仕組み自体は理解していても、自分の投稿に反応する人が知り合いしかいない中で、友達や家族にLINEのメッセージを送るような感覚で投稿してしまうというわけです。
さらに、新型コロナウイルスの影響でリモートワークが中心になり、周囲からの管理も緊張感も乏しい中で、社会人としての自覚が芽生える前にリスクが増大してしまいます。
自宅だと自分の携帯電話をいつでもいじることができ、プライベートと全く変わらない緩い意識でSNSを使ってしまいがちです。
誓約書を提出させて自覚を促す
では、不適切投稿を抑止するため、企業はどういうことに気を付けなければいけないのでしょうか?
まずは、誓約書です。社内規程などとは別にSNS投稿などにおける個人情報の取り扱いを含めた誓約書を提出させる企業は増えています。
法的拘束力自体は脆弱ですが、誓約書を求めることで社員の自覚も促せるのがメリットです。
我々は年1回更新し、その都度自覚を促すことを推奨していて、3カ月ごとに更新している企業も存在します。
また、自社の従業員はどのようにSNS、ソーシャルメディアを利用するべきかというガイドラインを策定しておくと、より効果的です。
企業側にとっても、炎上のリスクシナリオをしっかりと策定することで従業員の不適切な言動からの飛び火への対応も準備もできます。
エスカレーションの徹底も不可欠
もう1つ重要なのは、リスクが発生したとき、あるいは発生しそうになったとき、1人1人の従業員が適切にエスカレーションできるかということです。
弊社の場合、サイバー攻撃を想定したダミーのウイルスメールを開封したり、バグに遭遇したりした従業員がきちんと報告するかどうかをチェックしています。
それと同様に、個人のプライベート端末からの発信が炎上したとき、あるいは炎上の気配が生じたときは、社内に設けたエスカレーション先に速やかに報告することを徹底しなければなりません。
ある飲食店は異物混入のトラブルを本部に報告せずに済ませようとした結果、対応するまでの時間をロスしてしまいました。こうした事態は、何としても防がなければなりません。
顧客に接する現場でのトラブルは、ネット上で告発される確率が一定程度あります。
セクハラやパワハラと同様、専用のメールアドレスをつくっておき、そこに通報してもらう体制を構築するのがいいかと思いますが、そのような形でエスカレーションを徹底することが大事です。
個人アカウントが炎上した場合、企業名が特定されて紐付けられるのは燃え広がった後のことなので、企業名だけでSNS投稿などをモニタリングしたとしても炎上に気付くタイミングは遅れてしまいます。
紐付けられる前に炎上の芽を社内で共有しておかなければ、迅速な対応ができないというわけです。
シエンプレが提供する社員研修サービスとは?
我々が実施している社員研修サービスは6つの項目で構成しています。
まずは、「なぜ研修が必要なのか?」という動機付けについてお話しします。プライベートでSNSを使うなというわけではなく、リスクを十分理解し、マナーを守って利用しましょうということです。
次に触れるのが「ソーシャルメディアとは?」。新しいプラットフォームが増えている中、どこまでがソーシャルメディアかを明示した上で、便利さの裏にはリスクが潜んでいることも説明します。
何気ない投稿がきっかけで炎上し、特定された勤務先が謝罪する羽目になった例や、顧客や取引先に関する情報を投稿してしまい、大クレームに発展したといった事例も紹介するのがポイントです。
「自分が炎上するはずはない」という意識を正す
続いては、「『炎上』とは?」という定義と、なぜ一般人も炎上するのか?という説明です。弊社のデジタル・クライシス総合研究所の「デジタル・クライシス白書2022」では、2021年の一般人の炎上事例は前年と比べて2倍近くに増えています。
「自分が炎上に巻き込まれるはずがない」という意識を正さなければいけないので、炎上しそうな投稿がないかどうかをチェックする「炎上仕掛け人」がいるというお話をします。
分かりやすいのはバイトテロです。Instagramのストーリーズへの投稿は24時間で消え、基本的にはフォロワーを中心に閲覧されますが、それを見つけて拡散する「炎上仕掛け人」がいます。
その結果、仲間内だけに送ったはずだと思っても炎上する可能性があることをしっかりと伝えてあげるのが重要です。
投稿者自身に下される社会的制裁を明示
続いては、「炎上したらどうなるのか?」。ここで説明するのは、過去の投稿もさかのぼって晒され、勤め先や関係先に連絡が入って投稿者自身も社会的な制裁を受けるということです。
さらに、元の投稿は完全には消えず、いわゆるデジタルタトゥーという形で半永久的に残ってしまうといったことも説明します。
ネット上で炎上被害が起こりやすいのは、情報の発信と拡散・共有が容易だから。その事実を基にした炎上の流れと、SNSユーザーの目にどんな形で触れるのかも紹介します。
一方、プライベートを含めて従業員のSNS活用を推奨する企業に対しては、炎上リスクを抑える方法も説明しなければなりません。
勤務先に関係する事象を書き込む場合は、ステルスマーケティングが疑われないように自身がそこに所属していることを明記するように促しています。
自分の発言に関して、プロフィールなどに「個人的見解であり、所属先の公式見解ではない」と注意書きをしている人も見受けられますが、明記しても免責にはなりません。
普通に炎上が飛び火しますので、好き勝手な言動は慎むべきという話をしています。
各ソーシャルメディアの特徴も整理して伝えた上で説明しているのは、すべての言動は拡声器を通したように広がってしまうという留意点です。
炎上リスクを抑えるため、投稿前のチェックシートを提供する場合もあります。
誰もが炎上に巻き込まれるリスクがある中では、自分のSNS投稿だけに注意すればいいということにはなりません。
消費者や顧客、株主、従業員などの投稿がきっかけになることもあるので、少しでも異変があれば社内の窓口に必ず報告するよう改めて伝えています。
いかに「自分事」として受け止めさせるかが重要
研修の最後は「正しい利用法で楽しいソーシャルライフを過ごしましょう」という形で締めることが多いのですが、一番大切なのはいかに「自分事」として受け止めさせるかということに他なりません。
若者は独り言をつぶやくかのように投稿するので、研修は「自分にもリスクがある」ということをしっかりと自覚してもらえる内容にすることが必要です。
弊社の研修ではエゴサーチをしてもらったり実際の事例を伝えたり、NG投稿例を自社に関連する具体的なものにするといった工夫を凝らし、自分事にしてもらっています。
定期的な研修で意識の風化を防ぐ
研修は一度やれば終わりではなく、定期的に行うことも重要です。炎上のトレンドもSNSの利用傾向も移り変わっているため、それに合わせた解説が必要です。
研修をしても数年経てば風化してしまうのは繰り返されるバイトテロでも実証済みなので、少なくとも年1回は行うのが望ましいでしょう。
誓約書を年数回提出させることで、リスクを思い出させる方法もあると思います。
弊社の社内研修サービスはeラーニングという形でも提供していますし、目的や部署に応じたカスタマイズも可能です。
新入社員向けなのか一般社員向けなのか、接客現場の店長向けなのか店員向けなのかといったターゲットによって内容が変わってくるので、メッセージも変えて研修をする必要があるでしょう。