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アフターコロナを支えるIT技術~テクノロジーの進化と炎上リスク~【第9回ウェビナーレポート】

公開日:2020.07.15 最終更新日:2023.06.20

炎上件数が増加、デマによる風評被害も発生

桑江:まずは、新型コロナウイルスの影響で増えている炎上件数を見ていきましょう。
2020年3月以降に急増した要因は、コロナ禍で在宅時間が延びてインターネットを利用する時間が多くなったことや、「自粛警察」のように些細な事象を批判する人が増えたことなどが考えられます。
5月の炎上件数は159件で、1日平均5.1件でした。4月の246件に比べると減りましたが、前年同月比では約2.6倍に達しました。
緊急事態宣言が解除されて1カ月余り経過しましたが、コロナ禍は未だに収束していません。地方と東京の往来や夜の繁華街に繰り出すといった軽率な行動に対しては、厳しい批判が続く可能性がありますね。

村上:新型コロナの全貌は未だに解明されておらず、専門家の間でも意見が分かれている状況です。炎上を防ぐ観点で言えば、正解が見えない中、不注意なコメントはしないよう十分に注意するべきだと思います。
1人1人がさまざまな意見をお持ちかと思いますが、自分と違う考えの人が間違っている、自分の考えが絶対に正しいという根拠はありません。そこを心得た上で、いろいろなことに対応するという基本姿勢を忘れるべきではないでしょう。

桑江:海外でもコロナ禍はまだまだ収束しておらず、世界各国で風評被害も発生しています。例えば、「新型コロナの感染は5Gが広めている」というデマが流れ、欧州や南米で電波塔の破壊が相次ぎました。世界保健機関(WHO)や各国政府はわざわざ、それはデマであるという声明を発表し、騒動を抑え込む必要に迫られています。
新型コロナのように未曽有の出来事が起こるとデマによる風評被害が発生しますが、そうした情報に惑わされずに正しく行動することが重要ですね。

村上:長引く自粛生活などでフラストレーションがたまっている中、人々の心理状態が正常ではなくなっていることが影響しているように思います。電波塔の破壊は極端なケースでしょうが、ウイルスの正体が解明されていない状況下で不用意な発言はなさらない方がいいですね。

リモートワークやECなどデジタル化が加速

桑江:新型コロナの影響で、企業のITセキュリティ面でも被害やリスクが発生しています。
イスラエルに本社を置くセキュリティ・ソフトウェアメーカーのA社の調査によると、ITセキュリティ専門家の71%が「コロナ禍でセキュリティ脅威、攻撃が増した」と答えました。
増加した脅威は「フィッシング攻撃」が55%で最も多く、「不正Webサイト」32%、「マルウェア」28%、「ランサムウェア」19%。回答者の95%が「コロナ感染拡大によって対処すべきITセキュリティ課題が増えた」としているので、今まで以上に対策が必要になると思います。
リモートワークを推進する中、社内の機密情報やサーバーへのアクセス権限を緩める企業が多いのですが、甘くなったセキュリティを突破されて情報を抜き取られ、身代金を要求される事件が世界的に起きています。
そうなった場合は広報が対応せざるを得なくなる場合もあるでしょう。ぜひ、ご注意いただければと思います。

村上:リモートワークを急激に始めた中で、セキュリティが緩んだという側面はあるでしょうね。あえて言えば、残念ながらいろいろな形でメールアドレスなどが流出しているので、自分のメールアドレスと携帯電話番号は誰かが入手済みであると覚悟した上で対応した方がいいかと思います。

桑江:コロナ禍の中で、リモートワークも含めて加速したのがデジタル化です。アイルランドに本拠を置く総合コンサルティングのB社が世界15か国の約3,000人に実施した調査では、より多くの消費者が食料や雑貨をオンラインで購入するようになったことが分かりました。
直近で食料や雑貨をオンラインで初めて購入した消費者は5人に1人で、56歳以上に限れば3人に1人です。すべての商品をオンラインで購入している消費者の割合は32%に上り、コロナ禍の収束後もオンライン購入を継続する考えの人は37%を占めました。

村上:「こんなに良い物がeコマースで手に入るのか」という状況になりましたし、生産者も消費者に直接商品を売れるということを実感したでしょう。
「ひょうたんから駒」「災い転じて福となす」ではありませんが、日本でもアフターコロナに向けてeコマースのレベルが上がってくると思います。

桑江:クラウド人材管理システムの製造・販売などを手掛けるC社の調査では、リモートワークの実施率は全業種で35.5%でした。
一方で、IT・インターネット関連業種は約2倍に上っています。特に、関東圏のIT・ネット関連業種はコロナ禍を機にリモートワークの普及が大きく進んだと言えるのではないでしょうか。

村上:リモートワークを経験し、「満員電車に揺られて定時に出社する必要はない」ということに気付いた人は多いと思います。
すべての会社がそのようにできるわけではないと思いますが、オフィススペースを縮小し、全員が出社することは滅多にないという新しい時代がすぐそこまで来ていると思います。

「5Gがマーケティングの在り方を一変させる」

桑江:ご自身は2019年秋のWebメディアのインタビュー記事で、「5Gの本格運用開始をきっかけに、マーケティングの在り方が大きく変わることが予想される」とお話しされていました。具体的に、どのような影響を及ぼすと考えてらっしゃいますか。

村上:IoT(モノのインターネット)です。いよいよモノがネットにつながり始めているわけですが、それを一気に加速するのが5G。ネットでカバーできる端末数が飛躍的に増大するので、携帯電話がつながっているものを目指しているのではないということが明らかになってきます。
モノがネットにつながってくると、売り方や消費者動向などの把握方法が根本的に変わってくるでしょう。これまでは「ネット上で何がささやかれているか」というように、言語化されたものを手掛かりに次の一手を考えてきたわけですが、今は言葉にならない行動から情報をくみ取れます。
例えば、さまざまな国がGPSを使って新型コロナ感染者の立ち回り先を把握していますが、それと同じようなことがマーケティングの分野でも十分できるということです。

桑江:なるほど。

村上:マスの人たちがどういう行動をしているかを把握することで、「この商品のターゲットアカウントはどのあたりか」「この層に好まれそうなのはこういうデザインだ」という形で、一気に変わってくると思います。

桑江:そうした情報をどう収集して、どう活かすかというところで、業種を超えた連携も加速する気がしますね。

村上:政府も予算を付けているのがオンライン授業ですね。小・中・高校生に端末を配ろうということですから、学校の在り方も大きく変わってくると思います。

フェイクニュースにどう備えるかが重要

桑江:アフターコロナを迎える中で、GAFA/GAFMAの動きや戦略で推測されることはありますか。また、日本の一般企業はどのような準備をすべきでしょうか。

村上:先ほどデマの話がありましたが、Googleの場合は「真実かどうか」「善か悪か」「美しいかどうか」の3つに関しては判断を停止するという立場で、検索結果は関連度の高い順に表示してきました。
しかし、2016年の米大統領選を踏まえ、フェイクニュースかどうかを判断する責任はあるだろうということになり、2020年の大統領選ではそういうことがあってはならないと頑張っています。
そうした情報についてはGAFAに代表されるIT企業が抑えにかかっていますが、発信者はそこをすり抜けて仕掛けてくるでしょうから、どう備えるかが一番重要でしょう。
正しくない情報で風評被害を受けたりブランドイメージが傷ついたりするのを防ぐ上では、APIの公開方法なども変わってくると考えられるので、そうなれば一気に改善されると思います。

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