ガイドライン策定(SNS)
弊社はこれまで蓄積した数千件の炎上事例データベースや社内の「シエンプレ デジタル・クライシス総合研究所」で解析した研究データを用いて、企業ごとにオリジナルのSNSガイドラインの策定...
今回ご紹介するのは、累計50万人以上の受験実績を持つ資格運営団体K社の事例です。インフルエンサーマーケティング施策の不手際から、SNS上で「ステルスマーケティング(ステマ)ではないか」との疑いを持たれてネット炎上。社内だけで鎮静化させるのは難しいと判断し、シエンプレに対応を依頼しました。デジタルコミュニケーションが浸透した今、あらゆる企業がネット炎上のリスクを抱えています。プロジェクトを立ち上げて炎上収束を成功させたシエンプレの担当者に、当時の対応を振り返ってもらいました。※資格運営団体の事業特性上、本文ではK社と表記させていただきます。
K社は業界全体の発展や資格に関する正しい知識を普及するため、検定資格を運用されています。今回は資格の認知度向上を目指し、試験に無料招待したSNSのインフルエンサーに当日の内容や感想に投稿してもらうキャンペーンを実施しました。
このようなインフルエンサーマーケティングを行う場合、通常はPRであることや依頼主との関係性を明示する必要があります。しかし、今回はK社の周知などが徹底されていなかったため、インフルエンサーはK社の求めで試験を受けた事実を明らかにしないままInstagramに投稿。Twitterで一気に拡散された結果、「ステルスマーケティングだろう」との指摘が相次ぎ炎上する事態に陥りました。
さらに、K社は過去に炎上を経験したことがなく、万一の場合に備えた対応フローなども策定していませんでした。このため、初期対応ではいくつかの失敗を重ねてしまうことになります。とりわけ、炎上直後に事態を収めようと配信したプレスリリースはステルスマーケティングの行為を否定するばかりの内容で、火に油を注ぐ形となってしまいました。
炎上の経験がなく、想定すらしていなかったK社は、初期対応に失敗したショックもあり完全に機能不全に陥っていました。段階的な対応手順はもちろん、そもそも何から手をつければいいのかさえ分からない状態だったのです。
資格に対する「信頼性」が損なわれれば成り立たないK社の事業運営において、炎上は非常にクリティカルな問題です。今回の炎上がすぐに鎮静化しなかったこともあり、「一刻も早くこの問題を解決してくれる専門家に対応をお願いしたい」との依頼がありました。これを受け、弊社はただちにプロジェクトを発足し、これまでの実績やノウハウを活かした具体的な対応に乗り出しました。
プロジェクトがまず着手したのは「謝りどころ」を明確にすることです。
炎上を収束させようとすると、全く関係のない過去の事案で発生した自社への不満などが蒸し返されるといったノイズが必ず表面化します。
しかし、リスク対応で求められるのは、そうしたノイズに惑わされてはならないということです。世間が何に怒っているのかを特定し、「謝りどころ」を決めることが必要になります。
このため、プロジェクトではK社の関係者に改めて事実関係を確認。関連するSNS投稿も分析し、世間が問題視している点を整理しました。今回は、意図的にステルスマーケティングを狙ったケースではありませんでした。しかし、K社がインフルエンサーマーケティングのルールを理解していなかったことと、資格の信頼性が揺らいでいるという問題が浮き彫りになったのです。
問題を特定した後はすぐに、それらを解消するためのプレスリリースを配信しました。K社の依頼を受けてから、ここまでにかかった日数は、わずか1週間足らず。この間、プロジェクトは一連の問題点をすべて特定し、世の中の理解を得るための取り組みも発信する初期対応のフェーズをほぼ終えました。
初期のフェーズでは問題を認識していることを周知すると同時に、実害を被ったと感じている顧客を救う手立てが求められます。プレスリリースで資格試験の検定料を払い戻す考えを表したところ、炎上は落ち着きを見せ始め、鎮静化フェーズに入っていきました。
一方、プレスリリースに明記したのは、返金の詳細な基準を発表する期日のみでした。つまり、具体的な対応やコスト計算を慎重に詰めるための時間を確保したということです。協議を重ねた結果、資格を取得済みの方は既に利益を享受しているという理由で返金対象としない代わりに、予定していた検定試験のキャンセルを希望される方には費用をお返しするという基準を定めました。
また、「ステルスマーケティングをするつもりは皆無だった」ということに始まり、法的な瑕疵はないという事実や返金対応などの方針・主張を明らかにしたコミュニケーションプランも策定。インフルエンサーマーケティングのルールを逸脱したことは認めた上で、今回の問題と資格の信頼性、有用性には何ら関係がないことを強調しました。
これらの手順を踏まえ、公明正大な基準に沿った返金対応を速やかに進めたところ、SNS投稿のモニタリングでも炎上が鎮静化していく様子を確認できたのです。
しかし、「一通りの対応をした」というだけで炎上を100%鎮められるわけではありません。寄せられたクレームには弊社が個別に対応しましたが、どれだけご説明しても納得していただけない方は必ずいらっしゃいます。法的な解決に委ねざるを得ないケースが出ることも考えられたため、弁護士の協力を得て慎重に対処しました。
プロジェクト発足後は、比較的早い段階で鎮静化フェーズに向かうことができました。
検定試験の解約率も通常時とほぼ変わらないレベルに抑えられ、想定していた損益分岐点を大きく上回る結果となったのは何よりです。
炎上を放置したまま鎮静化が遅れていれば、解約率はさらに高まったでしょう。K社からは「迅速かつ的確な対応で、被害を最小限に食い止めることができた」との好評価を頂いています。
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