2020.12.29
「バズりたい」が引き起こす弊害!なぜ人気企業SNSの“中の人”は暴走してしまうのか?
2020年4月30日
最終更新日:2024年2月21日
ミクロ経済学で使われる言葉のひとつに、「シグナリング」があります。
一般社会では、あまり聞き慣れないかもしれません。
シグナリングとは、情報の非対称を解決するため、情報を多く持っている側が持っていない側に多くの情報を提供し、安心してもらおうとする行動を指します。
例えば、ある商品やサービスを売買する際、それらの情報を多く持っているのは売り手(企業)です。情報が少ない買い手(消費者)の信用を得るため、売り手が買い手に多くの情報を提供するのがシグナリングというわけです。
米国の哲学者、マイケル・サンデル氏は、ベストセラーとなった2012年の自著「それをお金で買いますか 市場主義の限界」(早川書房)で、シグナリングの形態について次のように説明しました。
「すぐれた製品を持つ企業が高額な広告を打つのは、顧客に購入を直接勧めるためだけでなく、大金のかかる広告キャンペーンを展開するほど品質に自信があるという『シグナル』を送るため」
商品やサービスを購入してもらうために高額な広告キャンペーンが不可欠かどうかは別としても、「品質に自信がある」というシグナルを発信できない商品やサービスは市場の信頼を得ることができないでしょう。
もちろん、「自信」に満ちたシグナルの裏付けが虚偽だったり曖昧だったりすれば、信頼どころか怒りや反発を招くことになりかねません。
売り手が買い手に送るシグナル、つまり宣伝の中身は、常に明確かつ正しいものであるべきなのです。
1.消費者の「知る権利」を侵害
2. 2023年10月より消費者庁がステマの規制を開始
3.映画やアニメ会社も…後を絶たないステマ騒動
4.「認識がなかった」は消費者に通用しない
5.広告活動の「炎上」リスクチェックを
目次
こうした中、インターネットの普及で問題視されるようになった宣伝手法があります。
消費者に宣伝と悟られないように宣伝するステルス・マーケティング、いわゆる「ステマ」です。
なぜ、ネットの普及でステマが問題視されるようになったのでしょうか。
それは、冒頭で述べたシグナリングとも関係があります。
情報の多い側が少ない側にアプローチするのがシグナリングであるのに対し、情報の少ない側が多い側から引き出そうとするのが「スクリーニング」と呼ばれる行動です。
ネットの普及は、レビューや口コミのサイトへの投稿を容易にしました。
消費者は企業のシグナリングを待つだけでなく、その商品やサービスを実際に体験した人の感想も入手しやすくなったのです。
企業の一方的な発信ではなく、自分たちと同じ消費者目線の情報を知りたいというスクリーニング欲求に忍び寄り、営利目的を伏せたままプロモーションをするのがステマです。
発信者の立場を偽った情報で信頼を得ようとする行為は、「正しい情報を知る」という消費者の権利を侵害していることにほかなりません。
広告であることを隠して、事業者が商品やサービスを宣伝することをステルスマーケティング(ステマ)と言います。これまで明確な基準による規制は行われていませんでしたが、2023年10月より、消費者庁はステマを景品表示法の「不当表示」に指定し、規制を開始しました。
消費者庁の調査により違反が認められた場合は、事業者に対して措置命令が出されます。措置命令が出されると、その内容が消費者庁のサイトで公表され、場合によってはメディアで報道されることがありますので、これまで以上に企業は自社の広告について気を配る必要があります。
また、消費者庁の規制対象とならなかった場合でも、一般消費者から見てステマだと疑われてしまえば、ステマとして扱われ、企業が炎上に巻き込まれる可能性も考えられます。したがって、企業の広報・宣伝等を担当する社員は、消費者庁が定めるステマ規制のガイドラインに違反しないことはもちろん、一般消費者からもステマと疑われないような広告運用を心掛けることが重要となります。
2019年12月には、世界的にヒットした米アニメーション映画「A」の続編をめぐるステマ疑惑が発覚しました。
問題となったのは、クリエイター(漫画家)7人が同じ日に投稿したツイートでした。それらは漫画形式で続編の出来栄えを絶賛しただけではなく、投稿時間まで共通していたのです。
Twitter上では「映画製作会社が主導した『広告』ではないのか」という指摘が広がり、瞬く間に「炎上」に至りました。
猛批判を浴び、そろって謝罪に追い込まれた映画製作会社とクリエイターたち。
続編をPRするどころか、イメージを傷付けることになってしまいました。
そして、2020年2月。漫画アプリ「R」の運営会社がTwitter上に一般人を装ったアカウントを複数開設し、おすすめ漫画を紹介していたことが発覚しました。
アカウントを不審に思ったネットニュースの編集部が問い合わせたところ、この運営会社は前年の春から夏にかけ、該当アカウントでプロモーションのツイートを繰り返していたことが分かったのです。
運営会社は謝罪した上で該当アカウントを停止しましたが、Twitterは「炎上」。
「本当にお詫びする気があるのか」「利用する気がなくなる」などの猛批判を浴びました。
参照: https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/guideline/assets/representation_cms216_230328_03.pdf
これらの事例に共通するのは、いずれの企業・団体も「ステマの認識はなかった」と釈明した点です。
しかし、2023年10月以降のステマ規制により、これらの事例のように、実際には広告であるにもかかわらず、一般消費者から見て広告であるとわかりにくいものについては「広告」「PR」等の表示が必要になります。
近年は、世の中に大きな影響を与える著名人を宣伝に起用するインフルエンサー・マーケティングも盛んです。 しかし、運用に失敗して「炎上」した例は枚挙にいとまがありません。
「ステマの認識はなかった」という企業側の釈明も、そうした行為に敏感な消費者の心理を軽視していたことの表れと言わざるを得ないでしょう。
WOMマーケティング協議会のインフルエンサーマーケティング実態調査(2018年11月)では、回答した消費者の51.9%が「不快に感じる」と反応。「裏切られた感じがする」(28.6%)、「商品やブランドが嫌いになる」(24.7%)、「わざとらしさを感じる」(23.7%)と、ネガティブな感想が続きました。
ステマのような不誠実な広告は、企業もインフルエンサーも、消費者も幸せにしません。 それどころか、企業にとって一度失墜したブランドイメージの回復は、多大な時間と労力を費やしても叶わないことが多いのです。
シエンプレは広告の画像やテキストなどの「炎上」リスクを洗い出し、消費者に批判されかねない要素を含んでいないか綿密にチェックします。
クリエイティブ・リスク、インフルエンサー・リスクの診断と対策に関するご相談なら、「炎上ストッパー」として豊富な実績とノウハウを誇る弊社にお寄せください。
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